五章1
エリア9のステージは、ゾンビものでは王道中の王道のショッピングモールだ。
この『サイコパス・ゾンビーズ』のゾンビ設定は、電脳に使われているナノマシンがとあるウイルスに汚染されて人食いに成り、そして噛まれた者も電脳汚染という感染を引き起こし人食いに成り果てるという感染大爆発が起こったというものだ――この設定が当時に同時期ではあるが先に発売された『アルティメット・パンデミック』と設定が似ており、泥沼の裁判にもつれ込んだ挙げ句に、経営難だったホノカ社が潰れて相手方のトパーズ・シールド社に吸収合併されるというオチになった。一般的な見方では、それを狙った裁判だったのでは? あるいは結託してのもの? と、囁かれる程度には、ホノカ社が傾いたときの吸収合併が迅速だった。
そんな曰く付きであり、懐かしの解析度のステージだ。
結論からいって都市伝説の『エリア9』は、あっさりとその姿を現した――謎の依頼人〈中野〉からのリンク先のアドレスは、エリア9であろうと思われるステージへと繋がっていた。
依頼人〈中野〉とは何者なのか、あるいはこの依頼に何か作為があるのか?
そんな謎を孕んだまま――僕らは征く。
僕らはショッピングモールの東西南北に分かれて侵入することにした――僕はその北口からの侵入となる。解析度の低いゾンビたちが、こちらの存在に気づいて唸り声を上げた。
来る――ッ!
武器を持ちそれを操ることができる程度に知能の残ったゾンビ――そのゾンビたちが映画では立て籠もるためにあるショッピングモールの商品を手に襲い来る。僕はこのゲームの武器データである八発(+初弾のみ薬室に一発)の拳銃を片手に、草刈り機の回転する刃先を振り回してくるゾンビに狙いをつける――狙うは当然、汚染されている電脳がある頭だ。
ダンッ!
ヘッドショットを決めると、草刈り機ゾンビはそのまま後ろに倒れ/1斃、回転する草刈り機の刃が他のゾンビの体を切り刻む――包丁を握っていたゾンビの腕が跳ねられ飛んでくるのをしゃがんで回避し、しゃがんだ姿勢のまま腕が飛んだ包丁ゾンビの頭を撃ち抜く/2斃――奇声を上げながらゴルフクラブを振り上げたゾンビの頭に一発/3斃、金属バットを振り回してきたゾンビの頭に一発/4斃、その後ろからチェーンソーを薙いで襲ってくるゾンビには、まずチェーンソーの刃を逸らすために腕に一発、そして頭に一発撃ち込む/5斃、一歩ずつ確実に踏み込みつつ、眼前のフライパンゾンビに一発/6斃、鉄アレイゾンビに一発/7斃、ハンマーゾンビに一発/8斃――弾切れ/スライドが下がりホールドオープン状態/素早く弾倉を落とし、新しい弾倉を装填する。いくら無限弾倉になっていようとも、このゲームではここがロスとなる。気をつけないと攻撃を食らうことになりかねない――スライドが戻り、次のゾンビに向けて構える/その銃が中華包丁を振り上げた状態のゾンビの額に密着――ダンッ――頭が吹き飛び、その反動で体が倒れてゆく/9斃――侵入できるだけの道はできた。
北入口に歩を進める。
右横――鍬ゾンビに一発/10斃。
左横――カッターゾンビに一発/11斃。
右斜め前――割れた蛍光灯ゾンビに一発/12斃。
左斜め前――ガラス片ゾンビに一発/13斃。
振り返って後ろ――鉄パイプゾンビたちに一発、二発/14斃、15斃。
ガラス扉の鍵に一発撃ち込み/弾切れ――弾倉を落とし、新しい弾倉を装填しつつ、ガラスが割れた状態の扉を蹴破り中へと侵入する――すると、北入口外のゾンビたちが騒がしく奇声を上げ始めた。振り返ると、そこには巨大な大剣を持った慶児が立っていた――即座に、足元に地雷を気づかれないように(自分の視野にも入らないように)設置しつつ、僕は驚いた表情を作る――「おいおい、慶児は西口からだろうが」と。
すると、慶児が高らかに宣言した。
「せっかくのバトロアだ。なら、序盤から盛り上げないとなッ!」
そういって剣先を向けて突っ込んでくる慶児に、なるほどと思いつつ手榴弾を投げてそれを撃ち抜く/慶児は不可避な状態でそれに突っ込んだ――爆発――だが、その煙幕を突き抜けて、大剣が姿を現す/咄嗟に構築した魔卦刀を抜き、鍔迫り合いとなる。
「抜いたな――そうこなくっちゃなッ!」
後ろからゾンビ――前衛の強力な電子防壁により、体の表面が少し切れるだけで済んだようだ。慶児は頬から垂れた血を舐めながら、大剣をブンッと振り回して回りのゾンビを薙ぐ。
こちらからの攻撃の前に、一歩後退してニヤリとする。
「やっぱり、同期の力は知っておきたいからな」
「そうだな――なら、本気でいくぞ」
「おうとも。掛かってきやがれ!」
「それはこっちの台詞だ。遊んでやる」
地雷を踏まないように後退――すると、追ってきた慶児がそのまま地雷を踏み抜き、北入口が吹き飛ぶ――僕は北入口すぐの洋服店に飛び込み、難を逃れる。
「猪突猛進だな。あんな手に引っ掛かるとは」
すると、僕の視覚動画の方に、『やッべwww』とか『卑怯すぎだろwww』とか、あるいは『おい、ちゃんとガチで戦えよ!』とか、コメントが増え始めた。
だが、こんな程度でやられる同期ではなかった。
「てェーめェーえェエエッ!」
さながらゾンビのように起き上がってきて、大剣をこちらに構える。
/
「そのババ色の根性――叩き斬ってやるッ!」




