四章2
ゲームセンター――その名の通り、ゲームへの回線に特化した専用ターミナルであり、友達などの仲間を集めてゲームをする場合、自宅回線よりここまで来て直通にした方が、容量が重たいゲームなどもスムーズにプレイすることができる。
その一四号室に入り、ゲームを選択中――。
「えと、二人はどんなゲームが得意よ?」
「狩ゲーでいいじゃない。最低限みんなできるだろうし」
「姉貴、ちょっとは相手の意見も聞こうぜ」
「幻竜でよくない? ね?」
そう尋ねられたので、僕らは二人してまあいいかという感じで頷く。
すると、弟さんの慶児がやれやれという感じに、「んじゃ、始めますよー」とゲーム『幻竜討伐伝』を選択し、ターミナルルームからアバターがゲーム内に送られる――ログイン</login>――次の瞬間、瞬くとそこは既に幻竜の街〈アガア〉だった。
僕らはそれぞれ、幻竜の装備を身に纏っていた。
僕は蒼龍装備一式の蒼い武者鎧にスナイパーライフル、燐は白麒麟装備一式の純白の滑らかな西洋甲冑に巨大なハンマー、蓮歌は影竜装備一式の漆黒の騎士のような露出がゼロの完全防具に覆われた甲冑に巨大なガトリングガン、慶児は赤竜装備一式の赤い武者鎧に大太刀だった。
「さて、どのクエストに行きましょうか?」
「話しながらできる程度のところがいいから、とろい砲台竜とか重竜辺りはどうです?」
「そだな。砲台竜とかそれなりの難易度だし、ちょうどよくね? なあ、姉貴?」
「あ! 今、ちょうどイベントで砲台竜のがありますよ」
「そうね、じゃあ、そいつにしましょうか」
蓮歌が受付を済ませると、僕らはそのクエスト〈闘技場を占拠した砲台竜を狩れ〉に参加した――特にクエストの内容を見ていなかったのだが、そのクエストのステージに入った瞬間、イヤな予感がした。闘技場って――大抵が大量に襲ってくるじゃんか!
最低限の動作確認をすると、即座に入っていく二人。
僕と燐も二人を追って入っていく――と、その場には、闘技場の観客席に大量に占拠した砲台竜――戦車を思わせる大砲を甲羅のような背中に背負った、全長七から八メートルの竜種――が、ざっと四体いて、一斉にこちらにロックオンし撃ってきた。
ダァンッ、ダァンッ、ダァンッ、ダァンッ――と。
蓮歌はガトリングガンで掃射し空中で砲弾を砕く、慶児は大太刀で砲弾を両断、燐はハンマーで砲弾を打ち返す、僕はゆっくりと冷静に狙い定めて一発撃ち砲弾を撃ち砕いた。
「ちょっと忙しそうですが、作戦会議とかできますかね?」
僕の言葉に、慶児が「へーきへーき」というと、蓮歌が思い出したようにいう。
「そうね、本題に入りましょう。倍速音声でお願いしますね」蓮歌の言葉に、僕は倍速音声に対応するアプリを起動させた。「さて――新人研修の内容なんだけど、どう思う?」
+
事務所を通さすに、ギルドから電戯士として依頼を受けて完遂せよ。
+
ゲーム会社連盟が取り仕切っている通称〈ギルド〉と呼ばれるところは、通称通りゲームでもお馴染みの依頼を受けるところだ。そこに事務所というそれぞれの信用があり、初めてギルドは依頼を委託する――個人であっても個人事務所という形態を取っており、いまや、事務所がなければ、ギルドは相手にはしてくれないのが一般常識だ。
つまり、
「僕らでいったん、事務所を立ち上げるしかないかと」
僕は襲いくる砲弾を避けながら、岩陰に隠れつつライフルを構え――砲台竜の砲台がある甲羅から出た部分、亀のようになっている足の部分に炸裂弾を一発――撃つ。
撃たれた足を引っ込めた瞬間、ライフルにあるスイッチを押す。
炸裂。
甲羅内部で炸裂した砲台竜が、咆吼とともにこちらに向かって迫ってくる――のを、燐が力溜めした渾身の一撃を真正面から、砲台竜の顔面に振り下ろす。砲台竜が前のめりに跳ね、半回転して砲台のついた甲羅部分から地面に激突する。
「でも、新興事務所なんて、相手にされるのでしょうか?」
「電戯士の仕事は、ゲームと違って通信料や武器弾薬などの経費も掛かります。それを鑑みると、格安で仕事を請け合うこともできません――つまり、大手事務所に入るのが得策」
「んな中、今回の無茶振りときたもんだ」
「てことは、だ――」僕は油断していた慶児の後ろに放たれた砲弾を撃ち落とす。慶児は「さんきゅー」といって砲弾を放った砲台竜に斬り込んでいく。僕は続きを口にする。「つまり、ギルドに認められるだけの実績を、まず他で得なければならないということだ」
慶児の後ろから援護で掃射していた蓮歌が気づく。
「つまり、依頼自体を自ら得る必要がある、と?」
燐が二体目の砲台竜の砲弾を走りながら、回転回避しそのまま巨大なハンマーを持って疾走――僕が次は撃たせないと、こちらを向いている砲台の大砲口に向けて狙い澄ます。炸裂弾を一発――発砲――着弾、スイッチを押す、炸裂。砲台は内側から炸裂した。
そこへ燐の一撃が砲台ごと甲羅ごと、砲台竜を穿つ。
「なるほどですね。だから、期限が二週間もあるんですね」
「だと思うよ。事務所の威光に頼るのではなく、まずは個人としてギルドに信頼されるだけの電戯士に成って来いってのが、この新人研修の目的なんじゃないかな? 僕はそう思うよ」
慶児が二体目の砲台竜を一刀両断して頷く。
「よし――なら、手始めに事務所を立ち上げよーぜ」
「簡単に言うな、愚弟」クエストをクリアの音楽が流れる中、ガトリングガンを担ぎながら蓮歌が溜息をはく。「三級電戯士四人の事務所に、いったい、誰が依頼すると言うんだ?」
そこで燐が頭の上に電球を、ぴこーんと光らせるリアクションをする。
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「先輩方にアドバイスを貰いに行くのは、どうでしょうか?」




