後悔先に立たず
――私刑とは、自分が絶対正義になれる行為であるが、
相手を間違えれば手痛い反撃を受けるだけでなく、
その相手がお礼参りに来た時は、誰も助けてくれないものである。
ルーシー=アルマロス――
古い時代に偉人が遺した一節に見えるが、何のことはない。現在進行形で堕天使・ルーシーが現状を嘆いた本音である。
こんな自業自得という言葉が出来た成り立ちのようなことを考えてしまうほど、彼女の頭は混乱していた。
本日、10年の謹慎を経て、審判を待つ死者の魂の素行調査という仕事に復帰した堕天使に、同僚から謹慎直前に面談を行っていた魂が、審判の場に現れなかったと聞かされた。
高山超新星。その名前に心当たりがあった堕天使は、当時の事に想いを馳せながら、腹を抱えつつ念話でコンタクトを取ると、予想外なことに念話が繋がった。いや、繋がってしまったという方が正しいだろう。
何せその男を転生させたのは堕天使自身だ。そしてその転生先が、地球の、少なくとも平和な日本と比べたら余りにも過酷な環境であることも知っているし、嫌がらせで最低のステータスで転生させる私刑をつけたのも覚えている。
だから高山超新星は死んだはずなのだ。
そのはずなのに! なぜか! この珍妙な名前に生前苦しんだ男は平然と目の前に立っている!!
しかも、アラフィフニート、体重>身長のわがまま過ぎるボディだった男が、執事服の上からでも分かる圧倒的な筋肉と、カイゼル髭と顎ひげを蓄えたナイスミドルとしてだ!!
何よりもだ! 生前の自分がキラキラネームだったことで、それを理由に周囲から蔑まれたことに失望したこの男。世界を相手に復讐をしかねないほどの闇を抱いていた男が、こうして平然と立っていられるのも訳が分からない。
なぜか? 堕天使は男が現れたときに、抜け目なく『測定の天眼』というスキルを使い、高山超新星本人なのか探りを入れている。その結果が堕天使には意味不明過ぎたのだ。
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名 前:つよつよにくだんご
ジョブ:超超究極宇宙闘士 Lv:3
生命力:1336081 攻撃力:1055162 防御力:1073906 速 度:1036987
魔力量:1000006 魔攻力:1000001 魔防力:1042609 技 巧:1042166
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(いやマジで、名前『つよつよにくだんご』って何よ!? やっぱり高山超新星じゃない? それでも念話は直接本人に繋ぐものだから、間違えるはずがないし、転生先でまたキラキラネームを付けられたってこと!? あれだけ名前のせいで苦しんでたヤツが、より珍妙な名前になってるのも、それに落ち着いていられるのも、訳が分からないんですけど!?)
まずは名前にツッコまざるを得なかったが、一番直視したくないのはステータスだった。男に恨みを持たれている自信はある。そして軽く小突かれただけで死ぬ自信もある。
ならばなぜ男はこんなステータスをしているのか。それは最低ステータスでの転生という嫌がらせをしても、周りから怒られない必勝スキームが破られたことに他ならない。だからこそ、その証拠となる部分にだけは、悲痛な叫びでツッコミを入れた。
「何よこの『ぼくのかんがえるさいきょうのじょぶ』は!? 小学生か!!」
今思い直してみれば、こうなる可能性は十分あった。それでもそんな大きな穴があっても、普通は気が付かない。
絶望的な状況に思考を停止した堕天使は、楽しかった少し前の時間の思い出に耽りながら、これからどうするか考えることにしたのだった。




