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ファウスト〜子育て交霊会の幻視〜ホームズ  作者: ヨハン•G•ファウスト


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5/8

第五幕:恐怖の交霊会

やあ、君。何か説明できない事が自分に起こった時、人は可能性の高いものを信じてしまう。

それに固執し、その後は考えないようにする。そうしないと、自分の正気を信じられなくなるからだーー。


第四幕では、屋敷の周りを探索するために門を二人でこえたホームズたちを見た。


ワトソンの四つん這いの尻に足を乗せてホームズは門をこえたんだ。

彼らは一言も口を出さなかった。

広大な庭の中にも霧はあった。

誰もいないように思えた。


でも、ホームズたちの耳に屋敷から男の声が聞こえてきた。話し声がした。

交霊会が始まるのかもしれない。

ホームズたちは足元に気をつけて、屋敷の窓の下へとしずかに走った。

窓から、二人は顔を覗かせた。


その部屋の中央で、男が両手を広げていた。中年男性だ。茶色い短髪には白髪が多く混じり、灰色の髭が口元を隠していて、体はがっしりしていた。真っ黒な紳士服を着てた。


すぐそこには、円卓の台と椅子が複数置かれてあった。囲むようにして、来客たちを座らせるつもりだった。


「お集まりの皆さん。お待たせしました。交霊会パーティへようこそ。

我が友、ハリー・フーディニの舞台のように、奇術を披露はしませんが、皆さんをこれから、不思議な経験、神秘の旅へお連れしましょう。」と男は前口上を始めた。


彼の妻らしいヴェールを頭から被った女が来客たちに会釈して、席につく。彼女は、どこか遠いところを見ていた。

来客たちは、困惑してた。

舌打ちを響かせたものもいた。


「さあ、皆さん。特に、エリク。ジーンのとなりに。君がトリックを見られるようにーー」と男はエリクと呼ばれた男を手で招いてみせた。

「ーーその女の隣はイヤだ。ーー俺は君が謝るものだと思ってたーー俺も謝るつもりだったーー」

エリクは顔を伏せた。

男に言われるがまま、少し離れた席につく。

「君のために、ジーンが準備してくれた。きっと喜ぶーー」それから男は来客たちに握手をしてまわった。

「やあ、ようこそ!君たちは目撃者になる!」

部屋のカーテンが下ろされた。

あたりが一気に薄暗くなる。

円卓の上にはごちゃごちゃした物が置かれて、香が焚かれた。

女は頭からヴェールを被ってて、ブツブツ呟く。皆は両隣りにいる人たちと手を握り合った。

ワトソンはーー早く帰りたかった。

何が起こっているのか、わからない。

ホームズは、とうとうガマンができなくなって、ワトソンの耳元で囁いた。

なぜかって?

あまりにもバカらしいから、笑い出したかったからだーー。

「おい、見たか、ワトソン先生。

アレが交霊会らしいぜ。

バカらしい!

死んだ人間に、

何を聞こうって言うんだろう?

気を紛らわせる程度さ。

ーーなんの役にも立たない。

だいたい死んだ人間は、生きた社会で生活してない。そんな奴らの助言なんて聞くに値しない。ーーバカらしい。頭が飾りの連中をだます方便さ。見てろ、ワトソン。全員でおてて繋いで、ブツブツ言い始めるぜ。

アイツら、少しは考えてるのか。おい、あの丸顔の灰色ヒゲ、太ってるぜ。いいもの食ってるんだろうな。おい、トーストとコーヒーを奢らせようーー」

ワトソンは、ホームズの方を見て、うなづいた。

男が天に祈るように女の肩を抱く。

「ああ、天使たちの声がーー聞こえるーー」と男は喚く。

「霊界のメッセージが、我々の暗い時代を照らしてくれるーー」

男は最後まで言えなかった。

突然、女の目が見開かれた。

そして、彼女の口から予想外の言葉がもれた。

「あるーーは、なんでも。ーー僕の鋭い知性がーー役立つならね。ーーただし占いや降霊術、ーー妖精に関する相談は受け付けない。

あれは知性のない遊びだ。ーー夢中になるヤツのーー気が知れない」

その知性あふれる声を聞いて、卓を囲む皆が目を見開いた。

ーーホームズの目もだった。


女の言葉はだんだんと激しくなった。

「だいたい死んだ人間は、生きた社会で生活してない。そんな奴らの助言なんて聞くに値しない。ーーバカらしい。頭が飾りの連中をだます方便さ。見てろ、ワトソン。全員でおてて繋いで、ブツブツ言い始めるぜ。

アイツら、少しは考えてるのか。おい、あの丸顔の灰色ヒゲ、太ってるぜ。いいもの食ってるんだろうな。おい、トーストとコーヒーを奢らせようーー」それから彼女は静かに語り終えた。


ホームズは、顔色を変えたまま、そこから下がった。

そして周囲を見まわした。

ーーきっと何かがあるはずだったーー。

「あれは、僕の声だったのかーー」


霧はまだ漂っていた。

屋敷は、そこにあったーー。


(こうして、第五幕は交霊会で幕を閉じる。)

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