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覚醒のオーバーロード  作者: Haru
第二章 時の支配者(クロック・ルーラー)編
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CHAPTERⅡ.見えざる悪意-10

10.

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


暗い影に沈む狭い路地を俺は駆け抜ける。

学校を出て広い道からややそれた古びた建物が立ち並ぶ路地は、学校から商店街通りに出る近道になっていた。

人気の無い道は、夕日の落とす影でより不気味さを感じさせた。

相川昊の事件の時、彼女のもとへと急ぐ道中にヤツ───アリエスは空間を割いて現れた。

その時の空間の歪みは、思い返せばたしかに奇妙な踊りのようにも見えただろう。

古畑矢翔が見たものはきっとそれだったのだ。

なぜもっと早く気が付かなかったのか。自分の愚鈍さに目眩がするようだった。

「・・・・・・しまった」

商店街へはあまり来たことがない。故にその構造さえ認識から外れてしまっていた。

・・・・・・つまり、迷った、ということか。

我ながら呆れる。そもどこに行けばその空間の歪みがあるのかさえろくに聞き出せてはいないでは無いか。何もかも空回り。

「・・・・・・焦っているのか、俺は」

何故かじっとしてはいられなかった。なにかの確証があった訳でもない。ただ、漠然とした予感だけが、プラネット・チルドレンである自分だけが感じるとれる予感だけが胸をざわつかせた。

「無駄足だったな」

そう自嘲して踵をかえす。

「何を嗅ぎまわっている?」

「!」

背後にいつの間にか立っていたのは、まさに自分が探していたアリエスだった。

「アリエス••••••。っは、つけられていたのは俺も、か」

「ほう、私を追い回していたことを認めるわけか」

内心の焦りを気取られてはいけない。だが、アリエスには確かな余裕を感じた。このままペースを掴ませまいと、口早に言葉を並べる。

「ひとつ聞きたい、お前たちは何者だ。何故オーバーロードを生み出し続ける?消えた生徒はどこに行った?」

「••••••ひとつ、ではなかったか?随分と焦っているようだな。お前らしくもない」

「答えろ。俺の気もそう長くはないぞ」

冷や汗が頬を伝う。拳を握りしめ、虚勢を張る。

「••••••ふ、まあお前のそういう姿もそう見れるものじゃないだろうな。その虚勢も今は脅しと受け取っておこう」

バレている。気づいているのか?俺の秘密に。まさかそんなはずは無い。だが••••••。

「さて、お前の質問の答えだが。一つ目は答える必要もない。お前はそれを知っているからな」

「!••••••やはりラボか」

その言葉にやつは笑みを浮かべる。

「二つ目、私の任務だから。以上」

「おい、ふざけているのか」

「ひとつ以上の質問に答えてやっているんだ。感謝して欲しいくらいなんだがな。••••••だが、まぁそうだな。今お前達が相手しているものについては、私は知らん。あれは私が関与しているものでは無い」

関与していない、やつはそう言ったのか?これまでのどのオーバーロードもやつが関わっていたはずだ。ラボも一枚岩じゃないってことか?

「さて、最後の質問だが。消えた生徒とやらは我らに必要な人材だったのでな。頂いたんだ。所在は言わない。これで全部かな」

「おい、待て!それはつまりさらったってことか」

アリエスは次第にその体を歪ませていく。空間の裂け目にその体を沈ませようとしている。

「ここに、空間の裂け目を用意してやる。明日の夕刻にでも訪れるといい。いいものが見れるぞ。••••••例えば、星を読む魔術師、とかな」

そう言い残すとアリエスは体を大きく歪ませながら消えていった。さながらおかしな踊りを踊るように。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕らは、月のない真っ暗闇の中をただゆっくりと歩いた。

隣を歩くのはもちろん、白彌くんだ。その綺麗な白金の髪は闇夜の中ではその輝きを失い、くすんだ灰のようだった。それは、白彌くんを覆う影のせいだろうか。彼はずっと目線を下げ、難しい表情をしている。

静寂に耐えられず僕は声を出す。

「何か、収穫はあった?」

白彌くんは答えなかった。しかし視線だけは僕を真っ直ぐ見据えていた。

「••••••ずっと、考えてたんだ。今回のことも、今までのことだってそうだった」

「何の話だ」

「オーバーロードのことさ。あれは人の願いを元に生まれている。そうだったよね?」

「あぁ」

「それなのに、どうしてオーバーロードは、あんなにも歪な力を持ってしまうのかなって。••••••だっておかしいじゃないか。人の願いを元に生まれたのなら、もっと正しい在り方だってあったはずなのに!••••••どうして、誰かを傷つけるために使われちゃうんだ。みんなの願いは、もっと違うところにあった。誰一人だって、誰かを傷つけたくて力を望んだわけじゃなかった。••••••これじゃあまるで、人のために願うことが、悪みたいじゃないか」

ずっと胸の内にあった思いを口にした。きっと白彌くんも感じていたはずだ。

「そうなんじゃないか」

「••••••え?」

白彌くんは表情を変えずに淡々と言葉を続ける。

「願いは、誰かのためにあるものじゃない。自分のためにあるものだ。誰かなんて、そんなことを考えているから歪んでしまう。半端なんだ。そうだ、半端なんだよ。だから俺はあの時••••••っ!」

「白彌くんっ!」

徐々に血相を変え汗で額を濡らし狼狽し出す彼を初めて見た。焦点の合わない瞳が、次第に僕を捉えるのがわかった。

「••••••すまない、すこし••••••取り乱した」

「うん、いいんだ。あそこの自販機で何か買う?奢るよ」

そう言って僕は数メートル先で淡い光を灯す見慣れた自動販売機を指さす。

「••••••あぁ、ありがとう」

僕は項垂れる彼を連れ、闇夜の中か細い光が照らす方へと歩き出した。


CHAPTERⅡ.END

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