5話 アラハバキの戦い 外交編(6)
アテルイは父のアクトと共に岩手県内の蝦夷を中心に軍備を揃える会議をここ数日行っていた。
私はと言うと、モレと共にアザマロの伊治の柵へと戻る事となった。
これからアザマロと共に按察使暗殺計画と多賀城襲撃計画の準備をしなければならない。
「馬を使うから乗れるな」
「乗れませんが…」
私が馬に乗れないので鐙の様な足かけを用意してくれて鞍のようなものまで作ってもらってようやく跨る事が出来た。バイクと違ってニーグリップは弱めでOK。
あとはモレの後ろをトコトコとついていくだけ。なんとなく簡単に乗れてしまった。
この時代本来は馬具のようなものは無い様である。天神乗りというのか競馬でジョッキーの鐙が外れたときに的場文男とかがよくやる乗り方が主流のようだ。
モレちゃんと二人、これは何か発展するかもしれませんな。ふふふ。
なぞと考えている間に一日で伊治までついてしまった。
アザマロの屋敷に行くとえらく歓迎された
「おお、よく来てくれた。報告は聞いておるぞ。どうやら首尾よく意見もまとまっているようじゃの」
「ですがまだ兵が足りませぬ。朝廷が本軍を率いて征東に乗り出せばどうなるか…」
「今多賀城や亘理にいる朝廷群は多く見ても五千程度。そのうち蝦夷の動員兵もいることだから現存兵力は反乱と同時に一旦ちりじりとなるだろ」
「その後が問題ですね」
「左様、いかに朝廷が内紛状態にあろうとも面子もある。数万の軍勢を派遣するつもりで心しておいたほうが良い」
うーん数万は確かに多いな。ただ都(そういえばこの時代は奈良?京都?)からここまで遠征で来るんだからバルチック艦隊並みに疲れているだろうし、数万と言え半数は兵站の為の輸送部隊。実際戦いに投入できる本体は1万程度なんじゃないかと思った。
「アザマロ殿、牡鹿の情勢はどのように?」
「道嶋大盾を殺すことによりわれらに加勢をしてくれる約束を取り付けた」
道嶋大盾とは今の牡鹿の大領である。
「桃生は既にウクハウが水面下で工作して軍勢を出せる状態にしている」
あまり目立つことはしたくないので今できる事はこのくらいか。
「して、陸奥の按察使紀広純を誘い出すことはできそうですか?」
「実は今覚鰲の柵というここからひたかみ川に真北に行ったあたりに蝦夷討伐の新たな本拠地を作るよう按察使から命令が来ているのだ」
此処から真北というと一関あたりだろうか、かなり胆沢に近い前線基地である。
宮城県内をすべて朝廷軍の支配下に収めたいという魂胆なのだろう。
「まだ造営が進んではいないが一応準備はしている。その下見として按察使一行を呼ぶことにしておる」
なんという策士。伊治で一泊した隙に暗殺と言うことですね。
毛利元就も尼子経久も脱帽の策士ぶり。
「カクベツの地はかなり奥地、蝦夷の勢力範囲にかなり近い。それでも来ますかね」
モレが不安げにいう。
「私は按察使から信頼されているからな。コレハルからカクベツまでならそう時間もかからん。手勢も私の兵を総動員するといったら安心なされた」
「ましてまだ雪の残っている季節。胆沢の兵とて簡単にはこちらまで来れまい」
たしかに、三月とはいえ東北の冬は寒い。まだ山には雪が残っており峠越えは難しいか。
視察するには今が一番の好機ということか。




