5話 アラハバキの戦い 外交編(4)
江刺(現奥州市)の伊佐西古
和賀(現北上市)の諸絞
気仙(現気仙沼市)の八十嶋
稗貫(現花巻市)の乙代
志和(現紫波郡)の阿奴志己
これらの族長達を説得するのが今回のミッションだ
大事な交渉事だというのに二日酔いで頭が痛い。
昨日アテルイの屋敷でみんなで飲んだのが嬉しくて、ついでに女性がこんなに多かったのも初めてなので舞い上がって飲みすぎてしまった。
モレちゃん、カナちゃんかわいかったなー。
さて、今日は諸々の族長達が集まって重大な話をするとの事で招集してある。
三流策士で二日酔いの私じゃ果たして外交役が務まるかどうか。
ここはちょっと頭の切れるモレ殿にお願いしてちょっと進行してもらおう。
アテルイもいるしまぁ大丈夫だろう。
「我々が戦う理由など一切ない!そもそも伊治は真っ先に朝廷に寝返った族。信用できぬ」
おっと、いきなり交渉決裂ムードににってる…。
この人が諸絞か、ウクハウタイプの脳筋タイプだな。苦手である。
「モロシマ殿、ちょっと待って下され、今は一時の平和が訪れているだけ、それもこれも朝廷の後継者争いでこの遠い地まで遠征が叶わぬからです。しかし後任の天皇が決まれば話は全く変わります。」
二日酔いでまったくだめそうなオレに変わってモレが話す
「今都は仏教という大陸の宗教からの影響が強大になりつつあります。仏教に大仏や寺院は必須。そのための金を朝廷はこの地から採ってこようと考えるのは明白」
「今は涌谷の地と桃生、気仙の一部までしか朝廷の力は及んでいませんが、最早胆沢は目と鼻の先、胆沢に朝廷の手が伸びれば和賀も志和もあっという間に支配下にされてしまいます」
さすがモレ、私の見込んだ参謀
二日酔いで気持ち悪いが何か発言しないと…
「アザマロ様は自分の命を賭してでも伊治で按察使を暗殺するおつもりです。ウクハウ様もその勢いのまま多賀城まで攻め入るつもり。南の地では蝦夷達が必死に抗おうとしています」
「わしは別に平和に胡坐をかいているつもりも朝廷を恐れている訳でもない」
「勝機はあるのだな」
「あります」
アテルイが言った。
気仙の八十嶋はちょっと高齢。三国志でいう黄忠的な感じだ。
その八十嶋が口を開いた。
「いずれ朝廷の勢力がこの地に及ぶのも時間の問題。その前に朝廷と対等の立場として認めてもらうというのは悪くは無い策じゃわい」
「しかし、やるからにはただの反乱だけじゃ終わらぬぞ、必ずや征東の遠征軍がやってくる。それにも勝算はあるのじゃな」
「あります」
今度はおれが言った。
「こちらには先鋭の騎兵がたくさんおります。かの中国も北国の北狄に長年悩まされて結局決着はつかないまま。」(まぁ後にチンギスハンが中国を倒しちゃうけど)
「この有利な地へ朝廷軍を導き出して挟撃と騎兵による攻撃で勝てまする」
「それじゃあおれは帰って剣を大量に作らなければならないな」
伊佐西古が言った
場の雰囲気は朝廷と戦うという方向で決着しそうだ。
「本当に朝廷軍がこんな奥地まで来るだろうか」
最北の地に住む阿奴志己だけが若干怪訝そうな感じである。
「何を今更、奴らが山(一関あたり)を越えれば胆沢も和賀も志和も一緒よ。遮る物など何もない」
諸絞もどうやら戦う決心をしてくれたようだ。
「それでは族長達は異存はないという事でこれより戦の準備に入りますぞ」
「あいわかった」
「うむ」
「忙しくなるな」
皆がそれぞれ決心の言葉を述べその場は収まった。
やった、これで蝦夷は一つだ。伊達領と南部領が合わさったようなものだから強いぞ。
「よし、酒を持ってまいれ」
げ、またあの謎酒だ、おれはトイレに行くふりをしてそそくさと退散したのだった。




