【1−1】 「よくある異世界転生(?)」
新連載始めました。
ではどうぞ。
この世で最低な人間の特徴ってなんだと思う?
「コミュ障」「無一文」「引きこもり」、これらをコンプリートしているやつだと思う。私的に。
そんな最低野郎、この世にいるわけないじゃんって、そう思うでしょ?
いるんだなぁ、それが。どこの誰かって?
そう、この私だ。
なんでこうなったのだろう。ああ、でもコミュ障はもともとの人格だけどね。
いくら馬鹿な私でもそのぐらいの自覚はあるさ。
現役JK。そして、不登校。それは果たしてJKと言えるだろうか。
私が思うにJKというのは、学校で青春を謳歌して、キャハハ、ウフフ、毎日がハッピーという生活を送っているやつのことだ。まあ、そんなことは置いといて。
アニメにハマってしまったことが、最大の原因だ。
決してアニメに罪があるわけじゃない。
むしろ私はアニメに救われた人間だ。
アニメというのは、全部がフィクション、虚構。
現実じゃあありえないことが、アニメではできる。
学校で上手く人付き合いが出来ないおかげで、不満ばかり垂れていた私を救ってくれたのがアニメだった。
そこからどんどんハマっていき、いつのまにか足の先から頭のてっぺんまで浸かってしまった挙句、現実との乖離が困難になってしまった。
これが、不登校の原因。
さて、「無一文」とは?
ズバリ、親が出してくれる小遣いをグッズに全部使ってしまったこと。
それには親も呆れ、ついに今は毎月の小遣いもストップしてしまった。
ここまで言えばわかるだろう? そう、全部自業自得なのだ。
あーあ、人生どん底、社会不適合者の私がこれからどう生きていけというのさ。
アニメならこのまま異世界転生するんだけどなぁ。
現在、一生に一度のお願いと親の前で土下座して、ようやく手に入れた千円札一枚を握りしめ、行きつけのグッズ店まで足を運んでいた。
これで、多くとも缶バッチ二個は買える。
もう空も暗いな。今の私の心を映し出しているみたい。
そこに、けたたましいクラクションの音がこの夜の静寂を切り裂いた。
いつもイヤフォンで爆音を流してはいるが、急な音にはびっくりするもんだ。
クラクションの方に目をやると、走ってくる車の前に横断歩道を渡っている老人がいた。
足が悪いのかヨボヨボと歩き、走る気配は一切ない。
まずい……!
万年体力測定最下位な私でも、走れば走れる。
唸れ、私の足!! なんて、今どきの厨二病でも言わない台詞を心の中で叫ぶ。
だって、そうだろう?
誰しも自分の目の前で事故が起きれば、後味が悪すぎる。
これを優しさというならば、親孝行という呈で今も学校に行けているだろうに。
その後はよく覚えていない。
老人は多分突き飛ばしたんだろう。
体にとてつもない衝撃が走って、後は真っ暗になった。
私、絶対に死んだな。
ろくな人生送ってこなかった私にとって、この終わりはなんというか……でも最後に人助けができたのなら悪くない。
あ……お金、せめてルイ様(推し)に貢ぐんだった……。
❀ ❀ ❀
真っ暗でも音は聞こえる。
目覚めの時もこんな感じだしね。
ドンッ!! と何かが何かにぶつかった音がした。
それがそこらにある物であればどんだけ楽か。
その音を発したのが自分の身体と床だなんて、誰が思う?
「痛っ!!」
起きて開口一番こんな言葉が出てくるのは、寝違えたときぐらいだ。
それでも、やっとこさ起き上がり、辺りを見回す。
「……は?」
真っ先に感じた違和感は、周りにた人間の服装だった。
なんとも高級そうなシルクでできた光沢のあるドレス、照明の光を帯びて靭やかに際立つタキシード。
絶対に日本じゃない……そう、これは私がよく見ていたアニメに出てきた展開。
私、もしかして異世界転生した!?
心のなかでガッツポーズを決める。
いやでもさ、異世界転生なら、起きたら令嬢だったとか、街を平和したチート級の能力を持った英雄とか、そんなんだと思ってたのに。
さっきの音から察するに私は、上から落ちてきたみたいだし、令嬢とか英雄ならこんな周りに痛い視線を向けられない。
ヤバい。
人の目を向けられたのっていつぶりだっけ?
私を見る人なんて、家族を除けばコンビニの店員とグッズ店のスタッフぐらい。
本当、走った後に出てくる汗より汗(冷や汗)出てるって。
これ、マジで詰んだ? 理想の異世界転生だというのに?
「あ、あのー……」
「おい、見ろ!! 魔法使いだぞ!!」
……??
まほう……つかい?
まあ、確かに? 異世界転生ならお決まり設定だけどさ?
それの何に驚くというのだろう。
「まさか、本当に魔法使いだというの?」
「とっくの昔に絶滅したと言われているはずなんだが」
「人間でもわかる魔力量……本物だ!!」
あっれー……この世界って魔法使いいない感じ?
そんなのアリ??
「これで、王子の病も治ることだろう! おい、急いで国王陛下に……!!」
「よい、もうわかっている」
奥、人混みの中から異様な尊厳を放った男性が歩いてきた。
その途端、周りの人たちが一斉に頭を下げる。
わあ、この人本当にすごい人なんだー。
出てきた感想はそれだけ。
しっかりと生えている茶髪、少し顎髭を伸ばし、顔にも皺が刻み込まれているが、背筋はピンとしている。
「そなたの魔力、実に見事だ。よって、そなたを第一王子の側近に任命する」
……いや、なんて?
頭が追いつかなさ過ぎる。
私を置いて話を進めないでいただきたい。
「わかったか?」
いや、なんというか全部がわからないから、とりあえずトリセツをくれないかな??
え、オタクなら誰もが憧れるお姫様待遇は? 勇者一行のお祭りは?
ボケーッとしている私の手は、多分このおじさん(国王)の使いの人たちによって引かれていく。
折角何億回と妄想していた出来事のはずなのに。
何もかもが違いすぎて、何の役にもたってない!!
私、これからどうなるのー!?
最後まで目を通していただき、ありがとうございます。
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