第一話「羽の下」
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最初に知ったのは、温かさだった。
暗かった。
何も見えなかった。
しかし温かかった。
その温かさが、世界のすべてだった。
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温かさには、重さがあった。
上から来る重さだった。
押しつけてくる重さではなかった。
包んでいる重さだった。
その重さの中に、音があった。
規則正しい音だった。
どくん、どくん、という音だった。
雛はその音を聞いていた。
聞き続けていた。
その音が止まると思わなかった。
止まるものだとは、知らなかった。
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揺れることがあった。
温かさが揺れた。
外から何かが来た時だった。
風が来た時。
雨が来た時。
別の音が来た時。
揺れるたびに、温かさは離れなかった。
包んだまま、揺れた。
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雛は、温かさの中で眠った。
眠って、また目を覚ました。
目を覚ましても、温かさはあった。
それでまた眠った。
それだけだった。
それだけが、最初の世界だった。
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ある時、温かさが少し動いた。
離れた。
ほんの少しだけ、離れた。
冷たさが来た。
小さな冷たさだった。
雛は声を出した。
どんな声を出したか、雛には分からなかった。
ただ、何かが出た。
すると、温かさが戻ってきた。
また包まれた。
雛は声を出すことをやめた。
温かさが戻ってきたから。
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それで分かった。
声を出せば、温かさが戻る。
声を出せば、離れたものが戻る。
雛はその法則を、言葉なく知った。
体で知った。
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外の音が変わる時があった。
明るさが変わる時があった。
暗くなる時と、少し明るくなる時があった。
しかし温かさは変わらなかった。
暗くても明るくても、温かさはあった。
それが世界のすべてだった。
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(第一話 了)




