6 付き合いたい人
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浴槽に使っていると、リビングから母親と父親の話し声が、響いてきた。
「この辺りの公立高校だと第一高校かしら」
「第二高校もあるね。でも、凪の行きたい高校に行かせてやるのが一番なんじゃないかい」
「ちゃんと考えているのかしら」
母親のため息。
凪はシャワーを捻ると、頭にお湯を浴びせた。寝巻きに着替えて部屋に戻る。
すると、数件の通知が表示されていた。彩葉が、グループラインを作ったらしい。
それぞれスタンプを送っていたため、お辞儀をしているクマのスタンプを送信。
個別の連絡先にも通知が来ていた。中身を開くと、指先が止まる。
水菜『勝手に追加しちゃってごめんね』
水菜『水筒届けてくれてありがとう』
水菜からメッセージが届いていた。慌てて文字を打ち込む。完成した文章を見返し、息を吐いた。
凪『無事に渡せてよかったよ』
凪『毎日水筒持ってきているんだ』
ノートを広げる気にはなれず、数分携帯を弄っていた。すると、水菜から返信が。
水菜『この時期は特に走ると喉乾いちゃうの。だから学校に忘れて次の日困っちゃうことがよくある』
メッセージとともに、涙のスタンプが送られている。
「学校でもこんな風に話せたらな……」
凪『それは大変だね。走るの苦手だから陸上部尊敬しちゃうよ』
水菜『書道部だって大変だと思うよ。私は走ることが好きなだけだから!』
水菜『今日はありがとう。そろそろ寝るからおやすみ』
凪『うん。おやすみなさい』
携帯を机の上に置くと、ふーと息を吐いた。
「メッセージでなら話せるのに……」
カレンダーアプリを起動する。テストまで、残り二週間。試験の一週間前は、テスト期間のため、全ての部活動が活動禁止となる。また、試験の三日前からは、下校時刻が早くなる。昼前には解放されるのだ。
期末テストから視線を下に向けていくと、夏祭りと表示された。例年、期末テスト辺りに夏祭りが重なっているのだ。
存分に遊びたい生徒たちだが、試験があっては遊ぶに遊べない。だが、カレンダーを見るに今年は被っていなさそうだ。
「水菜さんの浴衣姿か……」
頰をぱんち、と叩く。ノートを開くと、シャープペンシルを握る。
窓の外から響く鈴虫の鳴き声が、心地よい。自然と、ペンを握る手に力がこもっていた。
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日向と話しながらも、目の前に視線を向ける。白いワイシャツの生地とともに、水菜と彩葉の背中が見える。
褐色肌の彩葉に対して、水菜は色白肌であり、透明感が浮き出ている。
試験三日前。昼間に解放された一向は、下校する足取りのまま、店内に足を運んでいた。マックに入ると、昼前だからかレジ前に列が並んでいる。
「こうやって放課後に店寄るの陸部以外で初めてかも。水菜は?」
「私も。何頼もうかな」
女子と男子で会計を別にすることに。彩葉と水菜が先に注文を済ませると、席に向かっていった。
レジ前に辿り着く。日向の注文を聞いた後、凪が注文を口にしていく。
「飲み物は……カフェオレで」
「凪ってカフェオレ飲めるんだ」
指摘されて、頰を掻く。トレーを持って女子二人が座る席に向かう。すると、何やら二人が別の席に手を振っていた。
視線を動かすと、凪の学校の指定ジャージ服を着た集団がいた。
「一回ご飯食べてから自主練行くんだって。後輩はみんな偉いよね」
「鈴川君はカフェオレにしたんだ。苦いの得意な口なの?」
「あ……う、うん」
目を丸めた水菜が質問してきたので、凪はたどたどしく返した。
ソファー席に女子二人、椅子に男子二人の形で、テーブルを確保した一向。
先に食事を済ませるため、凪は出来立てのポテトを摘む。カフェオレに口をつける。
「……にがっ」
口を離しながら、小さく呟いてしまう。
咄嗟に水菜へと視線を向ける。水菜は一本ポテトを掴むと、子リスのように短く上品に口へと運んでいた。
ふっ、と凪は安堵の息を吐く。
すると、彩葉が話題提供するような口ぶりで呟いた。
「最近カップル多くない? 周りの後輩が告白してるって情報耳にするんだけど」
「夏祭りも近いし、みんな異性と思い出が作りたいんじゃないのかな」
ストローに唇をつけた水菜が呟く。すると、日向が不思議そうに首を傾げた。
「なら三人は付き合いたい人とかいるの?」
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