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世界の音を、君はまだ知らない  作者: 此崎 りつ
二章 実技試験編
12/17

2-0 それぞれの手紙

「──元気にしてる? こっちはだいぶ涼しくなってきたよ。お母さんは相変わらす掛け持ちで働いているけれど、

職場の人は良い人たちみたいでよく笑うようになったっんだ。

私は今、友達と魔術の勉強をしているの。ひとつだけ詠唱が使えるようになったんだよ。今度見せてあげる。

そっちはどう?友達と上手くやってる?お兄ちゃんのことだからどうせ女の子を前にすると固まっちゃって何も話せないんでしょ?

人見知り、なんとかしたほうがいいよ?


大事なお知らせ!

実は、今うちに小鳥がいるの!薄いブルーの小鳥でチルっていうの。

うちの前で怪我をしてて、お母さんが助けてあげたんだ。少し元気がなかったからご飯をあげてしばらくお世話をしてたの。

それで、元気になったから森へ帰そうってお母さんと一緒に森に行って放してあげたんだけど、その日のうちに家に戻ってきちゃったの。

だから、お母さんと相談してお家で一緒に暮らそうって決めたんだ。

呼ぶと飛んできてわたしの肩にとまってお話するんだよ。かわいいでしょー。

お兄ちゃんが帰ってきた時にチルが困らないようにたくさんお兄ちゃんのこと話しているから安心してね。

チルだからね。忘れないでね。

あ、話は変わるけど、この間お父さんの研究室にいたって人がうちに来て、お母さんと話してたんだ。

その人が帰った後、どうしたのって聞いたんだけど、何でもないって言って、それ以上教えてくれないの。

でも、お母さんよく夜中に泣いているんだよね。何でもないわけないじゃない。

お兄ちゃんは何か知ってる?もしお父さんのことで何か知っていたら教えて欲しいな。

それと、たまには手紙書いてよね。お母さんも喜ぶからさ。

チルの羽根で作った栞を入れておくので、よかったら使ってね。

それじゃ、またね。    ロザリー」



「ルシエル元気ですか?きちんと食事をとっていますか?睡眠は十分に取れていますか?

ロザリーは最近、学校に行かない日が増えていますが、小鳥(チルという名です)と一緒にいるからよく笑っています。

とても可愛く人懐っこい小鳥です。

それと、学費の事などは気にしなくて大丈夫です。

あなたは色々なことを学んでたくさん吸収して誇れる自分を見つけてください。

離れていてもいつも応援しています。


さて、今回、ルシエルに伝えなくてはならない事がありペンを取りました。

とても大事な事なのでしっかりと、そして落ち着いて読んでください。

先日、お父さんの研究所で働いていたアーサーがやってきました。

実は、お父さんがお役人に連れて行かれてから何度も面会の交渉に行ってくれていたのです。

けれども、それは叶わず、さらに手紙すら通してもらませんでした。

なので、お父さんがどのような状況下に置かれていたのか、誰も知りません。

ルシエル、どうか落ち着いてください。


お父さんが亡くなったとのことです。

罪の意識に耐えられず自ら命を絶ったと言われました。


このことはロザリーには伝えていません。

今、ロザリーは今も心が不安定な状態です。いずれ伝えますが今は伏せておきます。

本当はルシエルにもこの事は伏せておくつもりでした。

しかし、あなたは研究所の人たちと連絡を取っているから、いずれ耳に入ることでしょう。

ならばこの事は私から伝えなくてはいけないと思い、アーサーにも話をつけてあります。


今でも、お母さんは、お父さんがあんなことをする人ではないと信じています。

しかし、役所から公にされたことによりそれが真とされています。

ましてはお父さんが自ら命を絶つなんてありえないことです。それはあなたもそう思うことでしょう。

なにより、亡くなったという事実をこの目で見ていないので信じられません。

と言うよりも受け入れられないのでしょうね。


久しぶりだったので少々長く書いてしまいました。

だいぶ気が早いですが、冬休みに帰ってくる時にはあなたの好きな食べ物を用意しておきます。

これからも無理のないように健やかに過ごしてください。     母」



「 ルシエル様 

ほがらかに晴れ渡る空の元、清々しい学園生活をお送りしていることでしょう。

うわむきに歩くあなたの姿にきっとお母様もお喜びでしょう。

こちらは、研究所を離れ皆、保護観察の元で新しい生活を送っていますが、

くやむことは何もございません。

しずかな森で暮らす生活もいいものですね。

ただ、買い物などは街まで遠いのがやや難点ですが、贅沢は言えませんね。

しっかり者のルシエル様、実りある日々をお過ごしください。  クリストフ」

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