来訪
全ての物を、穿つほどに、尖鋭化されたピンクの部屋で、少女趣味全開の、パジャマを着た妙齢な女性が、枕に、顔を、うずめて、泣いていた。
「みこちゃん。何で、私を、置いて、どっかに、行っちゃったのぉー」
「社長は、まだ、泣いてるのか」
「ああ、あれから、暇が出来ると、泣いている」
「困ったものだ。しかし、あの子も、只者じゃない。某国の、某某某某とすら、渡り合った俺たちから、完全に、逃げ果せるなど、とんでもない奴だ」
「普通じゃ無いのは、解っていたが、そっち方面まで、完璧なんて、どうかしてる」
「まったくだ。俺たち、完全に、舐められてる」
「いや、彼女には、俺たちなんて、見えちゃいないんだよ」
「何か、悔しい」
「小学生みたいな、反応は、止めろ。格上を、相手してるんだ、気を引き締めろ」
「わ・か・っ・て・る・よ」
スマートフォンの、ベルが鳴る。
社長は、それを、0.5秒で、取り、着信名を、見ると、0.5秒で、電話に出た。
「あら、みこちゃん、お久しぶり、元気してた」
ご機嫌で、脳天気そうな声音で、答える。
彼女の、頭脳は、最大回転で、最適解を、叩き出していた。
ここで、もし、叱責などしようものなら、即、電話を、切られる事は、直ぐに、はじき出せた。
垂れてきた蜘蛛の糸を、手放す気など、毛頭ないのだ。
「なになに、今日の御用を、教えてくれるぅの」
最高に、ハッピーな、彼女の、アクセルが、ふみこまれる。
「ええーーっ。ダンスの好きな、可愛い子が、見つかったの、すごーい」
キーボードで、指令を、書き込む航空券、または、新幹線の、チケットの、手配を、指示する物だった。
「何々、その子の、撮影とか、プロデュースを、頼みたいて。もちろんOKよ。いつ、いつ来てくれるの」
部下からの情報と、進捗が、画面に伝えられてくる。
「ええーーっ。明日なの、今日来てほしいな。ああ、もうホテルの予約、取っちゃった」
スタッフに、抜かりは無い。
「お願い、お願い、お願い。チケット代も出すから、どこに居るのか教えて」
大詰めである。
地域が判れば、追跡は、容易に成る。
ここを、突破できれば、全て上手く行くのだ。
「うん、うん。うわー!。何だ、結構近いじゃない」
実際けっこう遠い。
「九時半と、十時と、十時半と、十一時の、便があるから、直ぐに来て」
すべてのチケットは、予約済みである。
「うんうん、九時半ので良いのね。待ってるから。もーう、最高に、楽しみにしてるから」
勝利である。
完全なる完勝だ。
彼女が来る。
みこちゃんが、来る。
最高だぜ。
出口で待ち構える社長。
みこの、姿が、見えた。
ぶんぶんと、大振りに、手を振る。
みこも、手を振って答える。
出口を、出た瞬間、みこを、抱きしめる社長。
「みこちゃん、みこちゃん。久しぶりね。もう、今日は、最高の日だわ」
「お久しぶりです。社長。お元気そうで何よりです」
「そうよ、私は、最高に、元気よ。来てくれて、ありがとう」
「ええ、そんなに、喜んでいただいて、光栄です」
引き気味の、みこが、ぎこちなく答える。
一緒に連れてこられた後輩も、ドン引きしている。
ついてきた二人の部下も、ドン引きしている。
あれだけ苦労した対象者が、向こうから来たのである。
彼らの努力は、何だったのだろうか。




