検査にもいろいろある
薮の所には検査をしに来る人は多い。本来患者さんの希望で行う検査は健康診断扱いとなり、保険適応にはならないからだ。その点考えなしの薮は患者さんの言うままに検査を行うので便利なのだ。
今日来た患者さんは、父親が前立腺癌で手術をした人で毎年この時期になるとPSAの検査を行いに来るようだった。もちろん、この検査は健康診断扱いとなることは薮に伝えたが、むっつりとした顔で聞こえないかのように無視してカルテを書き検査の指示を出したのだ。
問題は採血が終わり、薮がカルテを事務に回したあとである。
「先生、検査が入力出来ません」
と事務にカルテを返されたのである。
どうやらPSA検査は保険では3回しか行えないらしく、4回目となる今回はコンピュータに入力しようとして弾かれたとのことだった。
困った薮はあわてて患者さんに
「ごめんね〜。今回からは検査は自費でしなきゃいけないみたい」
と採血が終わり待合室で支払いを待つ患者さんに事後承諾を求めたのであった。
それを聞いて事務に今回の検査の金額を聞いた患者さんは
「すみません……持ち合わせがないので次回にしてもらっていいですか?」
と聞いてきたのである。
もちろん今回の検査は中止ということで患者さんには帰ってもらったが、そもそも薮がどういったものが保険に通るのかもう少し考え、知識を持っていたらおこらなかったことである。
そうすれば患者さんも恥ずかしい思いをすることもなかっただろう。
今回以外のケースでも、検査を行うために毎回薮は〜の疑いという病名をつけるのでコンピュータには禁忌の警告が並ぶことも多いのである。事務は毎回コメントをつけて保険請求するために余計な手間がかかって仕方がないのである。
そもそも、厚生局はセット検査はしないように指導しているのだが……
まぁ、こんな小さなショボい病院に監査が入ることはないので今はまだ調査されることもなく日々過ごしており、そのため薮もこれくらいなら大丈夫とたかをくくり好き放題しているのである。
毎年保険診療を取り消されている病院や医者は存在するのだが、残念ながら薮にその手が伸びたことはない。監査が入る条件は平均の保険点数が高い病院であったり、患者さんなどからの通報が厚生局にあった場合なのでまだ安全なのかもしれない。
どうせだったら税務署のように一定数はランダムに調査が入るようにすれば薮のような病院の体制も改善するのでは?と思うことがある。
皆さんも、納得がいかなかったら厚生局に病院を名指しで質問してみるといいかもしれない。