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それから数日後の事だった。
授業を終えたテレサは、ポンを抱えて迎えの馬車のもとへと向かっていた。
その道中、空中から一人の妖精が降りてきた。
美しい青年の姿のその妖精は、テレサの目の前に降り立った。そしてその場にひざまずき、言った。
「テレサ、僕と結婚してください」
「…………え?」
テレサはポカンと、頬を染めてこちらを見上げる美男妖精を見た。
周りにいた生徒達がざわざわとざわめく。
「けっこん……? 私が、あなたと……?」
「はいっ」
キラキラと輝く笑顔を向けられるが、テレサは戸惑うばかりだ。
「急に、そう言われましても……」
貴族の娘が家の都合で顔も知らない相手と婚約させられる事は少なくない。けれど、さすがにはじめて出会った妖精に求婚されてもどう対処すればいいのかわからない。
困惑するテレサに、青年妖精はニコニコと微笑む。
「遠慮しないでください、テレサ。あなたが結婚相手を望むなら、僕があなたと結婚しますから」
「…………」
テレサはまじまじと求婚してきた妖精を見る。
それからまさか……と声を上げた。
「あなた、セアなの……!?」
「はい、そうです。テレサと結婚するために、妖精王に頼んで大きな体を手に入れたんです」
「なんですってぇ……!?」
思わず声が裏返った。
そうくるとは思わなかった。
結婚相手を用意するなんて無理だと思ったから、結婚相手がほしいと言ったのに。ヘルンセアラ本人が結婚相手として名乗り出てくるなんて。
しかも妖精王も関わってくるとなると、この求婚を断るのはよろしくない。受け入れるしかない状況になっている。
「あの、その……とても嬉しいのだけど、セアはそれでいいのかしら……? こんな形で結婚相手を決めてしまうなんて……」
それでもどうにか、やんわりと断れないかとテレサは言葉を選んで言い募る。
「セアが私に恩を感じてくれているのはわかっているけど、結婚相手となると話は別でしょう? 好きな人と結婚した方がいいのじゃないかしら……。あなたに後悔してほしくないのよ……」
ヘルンセアラは頬を紅潮させ、瞳を柔らかく細めた。
「後悔なんてしませんよ。だって僕は、テレサを心から愛しているんですから」
何でぇ!? いつ!? どうして!? とテレサは心の中で彼の愛の告白に突っ込んだ。
「何度も助けてくれたテレサに、僕は深い感謝と敬愛の念を抱いています。親切にしてくれたあなたには一生かけても返せない恩がありますが、それだけの理由で結婚を申し込んだわけではありません。テレサを愛しく思うから、結婚したいと僕が願ったのです」
「そ、そうなの……」
テレサはもう絶対に断れない状況に追い込まれていた。
別にそういうつもりで結婚相手がほしいと言ったわけではないのだが、今さら取り下げる事はできない。
「テレサ、僕と結婚してください」
「は、はい……」
改めて言われた言葉に、テレサは頷くしかなかった。
周りから歓声が湧き上がる。
妖精と人間との結婚はないわけではないが、非常に珍しい。
テレサは尊敬と羨望の眼差しを向けられる。
そうして偶然縁を結んだ一人の妖精と結婚したテレサは、何だかんだ幸せな結婚生活を送る事となった。




