表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/28

第二十八話 火を絶やさないために


 翌朝。


 ルナは、少しだけ機嫌が悪かった。


「……頭が重い」


 加工小屋の前で、真顔のままそう言う。


 カインが吹き出した。


「二杯で潰れたやつの台詞じゃねぇな」


「潰れていない」


「寝てたろ」


「覚えていない」


「それ潰れてんだよ!」


 朝から笑いが起きる。


 ルナは少し眉を寄せたが、反論はしなかった。


 クロノはその様子を見ながら、小さく苦笑する。


(完全に酔ってたんだよね……)


 しかも、あの不味い酒で。


 思い出すと少し面白い。


 だが、ルナは本気で納得していない顔をしていた。



 朝の見張り交代が終わる頃には、村も動き始めていた。


 建築班は炉予定地へ石を運び、加工班は干し肉の確認をしている。


 見張り班は槍の点検。


 役割が固定され始めたことで、朝の動きがかなり早くなっていた。


 クロノは広場を見回し、小さく息を吐く。


(ちゃんと回ってる)


 以前なら、朝だけで混乱していた。


 誰が何をやるか分からず、同じ場所へ人が集まり、逆に足りない場所が出る。


 今は違う。


 完璧ではない。


 だが、“崩れにくく”なっていた。



 炉予定地では、ガルムが石組みを確認していた。


「そこ、隙間空けるな」


 建築班の若者が慌てて石を動かす。


「熱逃げる」


「これくらいじゃ駄目なのか?」


「駄目だ」


 即答だった。


 クロノは近くへ歩いていく。


「順調?」


「まだ土台だ」


 ガルムは腕を組む。


「炉は火入れてからが本番だからな」


 ドグも近くで頷く。


「木も足りねぇ。炭もまだ安定してねぇし」


「問題多いね」


「当たり前だ」


 ガルムが鼻を鳴らした。


「炉なんざ、そんな簡単に回るか」


 クロノは少し笑う。


(でも、前なら“無理だ”で終わってたんだよね)


 今は違う。


 足りないなら、揃える。失敗するなら、直す。


 そういう流れができ始めていた。



 少し離れた場所では、ルナがまた大量の石を運んでいた。


 建築班の男が困った顔をしている。


「いや、助かるんだけどよ……」


「なんだ」


「置く時だけ優しく頼む」


 ルナが石を下ろす。


 今回は地面が沈まなかった。


 男が驚く。


「お、おお……上手くなってる」


「練習した」


 真顔だった。


 クロノは思わず吹き出しそうになる。


(そこ努力するんだ……)



 昼頃になると、炭焼き班の方から煙が上がり始めた。


 ドグが煙を見上げる。


「昨日よりマシだな」


「分かるの?」


 クロノが聞く。


「色でな」


 ドグは腕を組む。


「白すぎると駄目だ。火が暴れてる」


 クロノも煙を見る。


 まだ違いは分からないが、ドグ達には見えている。


(専門って、こういうことか)


 全部を自分で理解する必要はない。


 任せられる人間がいる。


 それが、今の村の強さだった。



 その時だった。


 見張り台から声が飛ぶ。


「北側、三人!」


 空気が変わる。


 カインが即座に振り返る。


「武器は!?」


「見えねぇ! 歩きだ!」


 クロノは少し目を細めた。


 盗賊。


 その可能性が頭を過る。


 だが、前回と違うのは――村が慌てていないことだった。


「見張り班、入口」


 カインが声を飛ばす。


「建築班は工具下げろ! 加工班は中へ!」


 村人達が動き始める。以前より、ずっと早い。


 クロノはその様子を見ながら、小さく頷いた。


(ちゃんと機能してる)


 ルナが、いつの間にかクロノの隣へ立っていた。


「行くか?」


「まず確認だね」


 クロノは前を見る。


 村の入口。


 そこへ現れたのは――疲れ切った三人の男達だった。


 服は汚れ、足取りも重い。武器らしい武器も持っていない。


 中央の男が、掠れた声を出す。


「……水を、くれ」


 村の空気が、少しだけ変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ