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剣崎薫
剣崎薫(つるぎざきかおる)は一応小学生だ。
別に某見た目は子供に始まる高校生探偵のように特殊なのではなく、ただ単に初等の課程6年を終了し、小学校を卒業して春休みだから・・・。というごくごく普通の理由である。
家族は父方の祖父、剣崎源司(つるぎざきげんじ)ただひとり。そのほかの肉親は薫が生まれるまえ、もしくは生まれた後に死んでしまったらしい。今は商店街の一角にある古本屋と自宅が一つになっている家で慎ましく暮らしている。
「薫~私は買い物に行ってくるが、足りないものはないかい?」
「あ、じゃあドラッグストアでティッシュ買ってきてよ。あと、今日の晩ご飯に魚かな。」
「わかった。店番頼んだよ。」
薫は自分の祖父が背筋をのばしてスタスタと買い物に出かけるのを見届けると、店に入ってパタパタとはたきで埃を落とした。店はそこまで広くないため、10分程度で事も終わった。
「ふう・・・。」
薫は源司愛用の安楽椅子に腰掛けて手頃な本を読み始めた。