第11部:分析⑨——マクロ経済の逆風
ここまで、角川の内部構造の問題を中心に分析してきた。しかし、外部環境——マクロ経済の影響も無視できない。
円安と物価上昇
2024年から2026年にかけて、円安は進行し、日本国内の物価は上昇を続けている。輸入原材料やエネルギー価格の高騰は、生活必需品の価格を押し上げ、家計の負担を増大させた。
実質賃金が上昇しない中で、生活費が増えれば、消費者は「支出の優先順位」を厳しく見直す。
削られる「娯楽費」
消費者が最初に削るのは、「なくても生きていける支出」——すなわち、娯楽費である。
そして、その中でも特に影響を受けやすいのが、「無料で代替可能な娯楽」だ。
· 映画館で映画を観る → Youtubeなど動画共有サービスで代用可能
· 音楽CDを買う → サブスクリプションで代用可能
· 本を買う → 図書館や無料公開で代用可能
角川の主力商品であるライトノベルは、カクヨムで無料公開されているという、まさに「無料で代替可能な娯楽」の最前線に位置している。
経済状況が「悪い」時に、角川の構造的欠陥が露呈する
円安や物価上昇は、一時的な現象ではない。少なくとも中期的には続くと見られている。
つまり、消費者の「節約志向」は、今後も続く。
この状況下で、角川がこれまで通りのビジネスモデル——すなわち「無料で公開し、後から有料で売る」という構造——を続けるならば、売上の回復は見込めない。
経済が良い時には「無料公開」がプロモーションとして機能したかもしれない。しかし、経済が悪い時には、その「無料」がそのまま「競合」になり、有料販売を食い潰す。
「外部要因」のせいにする前に
もちろん、円安や物価上昇といったマクロ経済の影響は、角川だけに及ぶものではない。すべての出版社が同じ環境にある。
しかし、他の出版社がそれでも売上を維持している(あるいは角川ほどの落ち込みを経験していない)とすれば、それは角川の構造的問題が、経済環境の悪化によって「増幅」されたと見るべきだろう。
外部環境は確かに逆風である。しかし、その逆風に最も脆弱な構造を持っていたことこそが、角川の責任である。





