第79話 美明の告白
美明が入ってきた。
しかしうつむいていて、目を合わせてくれない。
僕は美明が話し出すのを黙って待った。
しばらくして美明が話し始める。
「私ね、最初はちょっとだけ顔がいいなと思っただけなの」
これに僕はショックを受けた。
美明は僕がファルコンというのを知っているはず。
SNSでやり取りしていた頃の僕は、好きじゃなかったのかと思った。
「でも少しずつ、隼人君のことを知って好きになっていったの」
美明がようやく僕の目を見る。
「隼人君はもう私のこと知っているんだよね?」
僕は「うん」と答えた。
「私、疑問に思っていたの。隼人君は昔の私を好きで、今の私たちに興味ないんじゃないかってね」
僕は何も言えなかった。
「だから私は名乗り出なかった。隼人君には昔を追って欲しくなかった。でもね、好きになっちゃったの」
そういって美明は僕を見つめる。
「そしたらね。私が名乗り出れば、私に振り向いてくれるんじゃないかって思ったの。ひどい女でしょ」
僕は首を振った。
人を好きになったら、なんとしても振り向いて欲しいという気持ちが分かるからだ。
「そして長崎で最後あんな行動も取っちゃったし。あれで嫌われちゃったかなって。帰りの飛行機では後悔していたんだ」
僕は何も言えなかった。
「でもね。好きだから抑えられなかったの。ごめんなさい」
その言葉を聞いた瞬間、僕は胸の奥にあった迷いが、静かにほどけていった。
「こんな女です。隼人君を愛せる資格あるのかな」
美明が泣きだしそうになった。
「たしかに僕はアネモネが好きだった。でも今、目の前にいる美明のことが好きなんだ」
僕の言葉に美明が顔を上げる。
「明るくて、無邪気で……そしてかわいい。それに、旅行が好きなのにすぐバテて、道にも迷うところとか。危なっかしくてしょうがない。僕が近くで見ていないとね」
美明は恥ずかしそうにした。
「また旅行へ行こう。美味しいものをいっぱい食べよう。でもたまには僕が甘えてもいいかな。だって美明が好きだから」
美明は信じられないって顔をした。
「私も好きです。隼人く……隼人!」
美明が僕に抱き着いた。
僕も美明を抱きしめる。
細い華奢な体。
僕が守りたい。
そしてお互い顔を見つめ合って照れてしまった。
「ねえ隼人。私だけを見てね」
「もちろん」
「静羽や遊理香に浮気しない?」
僕は一瞬だけためらって「もちろん」と答えた。
「本当に?」
「当たり前だろ」
「もし浮気をしたら……」
「したら?」
美明が僕にキスをした。
この前みたいに震えたキスではなかった。
「こうして、何度でも奪い返すから」
「じゃあ僕も」
今度は僕からキスをした。
僕たちは2人で部室を出た。
外では静羽と遊理香がいる。
僕たち2人を見て
「あ~あ。美明にやられたか」と言い少し涙ぐむ遊理香。
「おめでとう……もしもの話ですけど、何かあったら私が黙っていませんからね」と言う静羽。
僕と美明がお互いを見た。
お互い照れながらも「大丈夫」としっかりと言った。
(完)
これにて、過去に好きだった少女が実は身近にいた件〜そして3人から告白されたので選ぶことにした〜は終わりです。お読みくださりありがとうございました。ラブコメで長編を書こうから始まり、自分なりにバランスを考えて書きました。とても楽しく、かつ悩みながらでよい思い出です。お読みいただいた皆様には、とにかく感謝です。ありがとうございました。




