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scene19 -守るものと守れなかったもの-


外は番長グループと生徒会

それぞれの親衛隊どもの一触即発ではあるが

まだ本格的な構想には至っていない。

お互いに相手の出方をうかがってのにらみ合いという状態の様子だ。


とは言えあの2人は慎重に歩を進める。

時に時に楽し気に、時に真剣になにかを話ながら

手を取り合い、本校舎の中を進んでいる。

その様子を、ぼくは離れて追行し、見ていた。


・・たしかに。

あいつは陰依さんを気遣い、

守りながら事を運んでいるように思える。


だとすれば。

ぼくはなんのために彼らを監視しているのだろう。

ぼくがここにいる理由はなんだったのか。

ぼくが、彼女の身を案じて

転校生どもの集会に参加していたあの日々はなんだったのか。


そんな不穏な思いが次々と頭に靄をかけようとするが

ぼくは何も考えないよう努め

彼女からつかず離れず見守り続ける。


こんな時は…いつもあの日の事を思い出す。


この学園への編入前。

ぼくには幼い頃からの幼馴染の少女がいた。


子供のころは

あの子が誰かにいじめられれば駆けつけてあの子を守った。

友達とケンカをしたと聞けば仲裁のために

あの事友達の元を何度も訪ね、仲直りさせたあげた事もあったけ。

泣いていることがあれば何時間でも一緒にいて話相手になってあげた。


ぼくは・・あの子を守り助ける事が

ぼくの生きる理由なんだと。そう思っていた。


中学生の頃。

その子が近所の高校の学生と交際を始めたというウワサを耳にした。

暴力的で卑劣な男だとウワサに聞く不良高校生と。

ぼくは何度も。何度も何度も彼女に

そんな男と付き合うのはやめろと忠告してきた。


・・彼女はそのたびに、ぼくに対して怒りをあらわにして

ひどいののしり合いになってしまった事もあったっけ…。

悪い男にだまされて、彼女の傷つく未来が

ぼくの目にははっきりと浮かんでいた。


そんな未来。

あの子が男に泣かされている顔なんて

そんなものを見るならぼくは死んだ方がましだ。

あの子を守るのが、ぼくの生きる理由なんだから。

そう。思っていたんだ。


その日ぼくはあの子の知らないところで

その男にはっきりと。彼女から身を引くよう警告をした。

激昂したやつはぼくを殴りかかってきて。

ぼくは。

やつに惨敗し…

ぼくは、ただみじめにやつを見送る事しかできなかった。


・・それからしばらくして。

ぼくはあの子が涙をする顔を見る事となる。

彼女が不良高校生との交際の末、

身を尽くし、体を許し、そして捨てられたというウワサが学校内に広がる。


女友達に囲まれて泣く彼女を

ぼくは、遠くで見守る事しかできなかった。

ぼくが死んでも見たくなかった光景だ。

ぼくが生きる目的だと思っていた彼女を、ぼくは守れなかった。


ぼくは…無力だ。


その後魔人に覚醒したぼくは

あの学校を逃げるように去り、この慈正心学園に編入してきた。


ぼくはあの陰依さんに。

あの子の寂しそうな背中に。

あの幼馴染を重ねているだけなのかもしれない。


でも、今度はあの子を

陰依さんを守れば、あの頃の無力な自分を

自分で許すことができる。

そんな気がするんだ。


ただそれだけ。

それだけのはずなのに。


何故だろう。彼女が架神と楽しそうに笑い合う姿を見かけるようになって

ぼくは。彼女の幸せを心から願っていたはずのぼくは、

今、すごく悲しい気持ちになっている。

ぼくは醜い男だ…。



そんな過去の感傷にひたっているうちに。

やつらは生徒会室の前に到着する。

生徒会室の前に立つ男と、架神が何か話をしている。

どうやら・・生徒会室に先客がいると話しているようだ。

あの坂井とかいう少年だろうか。


架神のやつが陰依さんに、ここで待つようにと手で合図をしながら

やつは生徒会の男の一人とどこかへ離れていく。


その時。

ぼくは気付いてしまった。

奴が男に何かを言ったその時

生徒会の男。ぼくたちの敵であるあの男が

わずかに陰依さんの方へ目線を送った。


陰依さんの事が見えている。

なぜ?架神のやつはあの男に何かを話した後に

やつが陰依さんを認識した。


「架神…」

「てめぇ…!!…」

ぼくは。

感情のままに奴らのあとを追った。

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