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オンリープラネッツ  作者: 星塚もぐら
第2章 学園
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25/38

25 夢


目の前で何かが散る。火花だろうか?いや、これは雷だろうか。それとも水?いや、ちがう!人だ!人?そんなわけがない。あってはいけない。あるはずがない。誰かがこちらに向かってくる。誰だ?人?女?まだ若い、抱きしめられた。なぜ?泣いている。なぜ?女が散る。どういうことだ。怖い。いやだ!女の顔が見える。あれは・・・。お母様!なぜ散っている!やめて!お父様!お母様を助けて!お父様?お父様?なぜぼおっとしているの?お母様がいなくなっちゃう!


「何を言っている。お母様がいなくなるのはお前のせいだ。お前が悪い。私はもう行く。」


なんで?お父様!なんで私が悪いの!ねえ!お父様ってば!もう行くってどこに?


「うるさい。私はもう行くと言っている。お母様の命を犠牲にして生きたんだ。せいぜい長生きしろ。」


ねえ!お父様!お父様ってば!


お父様の背が遠ざかっていく。待ってよ!お父様!全然追いつけないよ!今の私の足は短いんだよ!・・・短い?今?私は何を言っている?お母様・・・はもういないし、お父様はこんなこと言わない・・・・。


目を覚ます。ベットの上で体を起こす。汗で気持ちが悪かった。


「ははっ、夢か・・・夢、夢。」


ライオネルトは汗だくのままあたりを見渡す。狭い部屋には1つのベッド、2つのドア、机、簡易的なキッチンがついていた。ライオネルトが立ち上がり、キッチンについている蛇口を回す。水が出る。思わず持っていたコップを落とした。


「あ・・・、割れていない。良かった・・・。水・・・。」


コップに水を入れて少し飲む。ライオネルトはそんな自分を自嘲気味に笑った。かつての自分を思い出す。広い部屋、豪華な調度品、優しい母に父、使用人、自分でコップに水を注ぐなどしたことがなかった。それらを全て失ったのも自分のせいだろうか・・・。暗い考えを打ち消すようにコップの水を一気に飲むと部屋にあるドアを開けると部屋に備え付けられているシャワーがある。タオルをドアノブにかけ、シャワーを浴びる。冷たいがそれが逆に心地よかった。


「ヒュー・アぺイロン子爵・・・。」


ライオネルトは穏やかな少年の顔を思い出す。自身の悲願であるチェリアントル伯爵家を取り戻すための一歩である爵位を授かるという大きな出来事を軽々と達成した。冷たいシャワーを浴びると、普段は言わない泣き言を1つくらい言いたくなった。


「運・・・、か。お父様・・・。どこにいらっしゃるのですか・・・。すでに亡くなっていたとしても顔だけでも見せてください・・・。」


ライオネルトの母は事故で命を落とし、父は行方不明であった。今はチェリアントル伯爵家は取りつぶしに会い、ライオネルト自身も今はゴルーチェ公爵預かりの身である。ここ最近の出来事はライオネルトのの心を動かす出来事が多すぎた。新しい子爵の誕生、アナスタシアの告白。アナスタシアはかつて母も父もいたころ、よくともに遊んだ仲で合った。もちろん、アナスタシアが恋やら愛やらで告白したわけではないことをライオネルトははっきりとわかっていた。アナスタシアはゴルーチェ公爵とは違い、どこか甘いところがある娘である。おそらく、アぺイロン子爵の登場に動揺しているのを悟られたのであろう。甘くても鈍いわけではない。


シャワーを浴びて部屋に戻る。窓の外を見るともう日が少しだけ覗いていた。今から寝るのも馬鹿らしいと思い、机に置いていた紙をペラペラとめくる。


「調査結果」


対象:アラン・キー・ホークス 

鳥の一族。現在の一族のボスの1人息子。今までも数々の商談をまとめ上げた実績があり、親しみやすい雰囲気とは別にやり手である。ヒューとの接触は意図的であるかどうかわからず。他は調査中。


対象:エマ・イーグル

鳥の一族。アラン・キー・ホークスとは従弟で実の兄弟のように育った。父と母は権力に興味がなく、商会の1部門の長として手腕を振るっている。歴史が好きで文明レベル0の惑星から学園に入学したククルカニャンとよく歴史の話をしている姿を見かける。他は調査中。



動かない頭でその文字をゆるゆると読むが、どれも大した情報ではない。


「さすが、鳥の一族といったところか・・・。本人がどうであれ情報が出てこない・・・。はあ、貴重な紙を無駄にした。」


紙束を再度机に置いてもう一度ベッドに横になる。少し湿っているのが気持ちが悪かった。思い出す。自身は母に抱きしめられた温かさしか覚えていない事故。行方不明になる直前の父のうつろな目。あの時、その後、己ができることはあったのだろうか。・・・今考えても答えはでてこない。おそらく一生考え続けるのだろう。もし爵位を取り戻したとしても、母と父は戻らない。何をすれば爵位を取り戻せるのだろうか。そんな前例は今の今までにない。しいて言うならララ侯爵家だろうか・・・。平民であったララが当時の王を助けたか何かで受け取った子爵の位をそのまま王の愛人となり、伯爵家に押し上げ、その後ララの孫が軍功によって侯爵家となった。そういえば、あそこには少し年下の男の子がいたな・・・。優しさがわかりにくいが強がりもかわいくていい子だった。軍功か・・・。このままアナスタシアの従者兼護衛として生涯を終えるのともらえるかもわからない爵位のために軍へ尽くすのはどちらがいいのだろうか・・・。こんなことを考えているとアぺイロン子爵が誕生した時を思い出す。その時の子爵は爵位が何ともないように見えた。その瞬間自身の固執しているものが途端にくだらなく見えた。


外で鳥が鳴いている。ずいぶんとうるさい。再度窓を見ると宇宙スズメが2匹争っていた。


「宇宙スズメがこんな地上付近まで?珍しい・・・。」


そのまま宇宙スズメは戦い続ける。片方が飛び立った。どうやら縄張り争いだったようでもう片方は優雅に鳴き始めた。


「こんな広い宇宙でこんなちっぽけな場所を争うのか?ははっ・・・。」


しかし、ライオネルトの目にはそのスズメが輝いて見えた。実際、宇宙スズメは形をとらず不思議にきらきらと輝いており、唯一宇宙においてわかっていないものだといわれている。


「ちっぽけでも、己のために闘う・・・。か。」


そのまま物思いにふけっているとすぐにアナスタシアを迎えに行く時間になった。歩いてアナスタシアの部屋の前へ行く。ドアをノックする。


「アナスタシア様。おはようございます。個人的に伝えたいことがあるのですがよろしいでしょうか。」

「おはよう。ライオネルト。勝手に入ってきていいわ。中で話を聞きます。」


くぐもった声と手を動かす音が聞こえた。ライオネルトは言われたとおりに部屋に入る。部屋はライオネルトの部屋よりはるかに広く、かつてライオネルトが暮らしていた部屋によく似ていた。


「なにかあったかしら?」


アナスタシアは紙にペンを走らせていた。おそらくヒューとの文通の1つ目を書いているものだと思われる。それを横目でのぞき見しながらライオネルトは口を開いた。


「護衛をやめさせていただきたく。」


思わず、といったようにアナスタシアは手を止めた。ペンの先から紙にインクがぽたりと落ちる。


「ど、どういうことかしら。」

「アナスタシア様、ゴルーチェ公爵の駒となって動くことはこれからも続けさせていただきます。ですが、アぺイロン子爵を見ていると自分も行動せねば、と思うようになりました。よって、軍人を目指そうと思いまして、自身も研鑽を積みたいと思います。今までのように常時護衛として着くのは難しいかと。なるべくおそばに控える所存ではございます。」


今から軍人を目指すのは茨の道である。軍人になるのが、ではなく、今から、が難しいのだ。少年部までに軍人としての教育を受けるのが基本である。今から目指すのならば、3年次からの専門で入らなければならないが、これが軍人の教育を受けていないものには狭き門である。


「本気なの?」

「はい、それが己の道だと。」


アナスタシアはライオネルトの顔を見る。その顔色は少し悪いが表情は晴れやかであった。


「わかりました。お父様に連絡いたします。今週までは私に付きなさい。」

「ありがとうございます。護衛として任は解かれようとも従者であることは変わりありません。アナスタシア様の力となれることならいつでも。」

「じゃあ・・・。」


アナスタシアがすごし恥じらいの顔でもじもじと口を開く。


「危ない橋を渡らせることになるから断ってもいいのだけれど、ヒュー様へ私の文を届けてくれないかしら。」

「・・・なるほど。お父様には秘密で、ということですね。分かりました。今後も承ります。アぺイロン子爵からの手紙も私が届けます。」

「・・・ありがとう。お父様の手のものにかかれば文を全て盗み見てしまうから。それは文通じゃないでしょう?」

「それはわかりかねます。」


アナスタシアはそのライオネルトの返答が気に入らない様子だったがふっと柔らかく微笑みかけた。


「あなたのことを応援しているから。軍人になって、軍功を立てて、昔のようにまた隣に並んで頂戴。それまでに命を落としてはだめよ。」

「もちろんでございます。アナスタシア様、いや、アナスタシア。約束する。」


2人は微笑みあった。しかし、すぐに令嬢と従者の関係に戻った。


「行くわよ。ライオネルト。」

「かしこまりました。今日は授業を?」

「いいえ、今日も控え室にいるわ。行きましょう。」


ライオネルトがアナスタシアのためにドアを開けるとすでにアナスタシア専用の学園列車が着いていた。ライオネルトがアナスタシアに手を差し出す。そのまま2人は朝日を背に部屋を出て行った。その温かな光はどこか2人の背中を後押ししているようであった。


お久しぶりです。話数が減っていますが、切る部分を変えただけで内容は基本的に変わっていません。

まだ、1章の途中までしか切れ目の変更や誤字脱字チェックを行えていませんので、今後もときどき話数が変わると思います。ご容赦ください。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

また2日に1回投稿に戻します。今後もよろしくお願いいたします。

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