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橋の彼方  作者: 千里空
神の子供たちはみな踊る
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一樹①

「向こうに何かあるのか、僕は知りたい」

少年は沖合にぽつりと聳え立つ島に視線を向き、そうぼやいていた。

空と海の境界線で、夕日が沈む頃だった。彼の前髪がオレンジ色に染まり、風に揺らされる様子は海面に揺らぐ夕日の残影を彷彿させた。

僕も彼に倣って島を見てみたが、途中で夕日の残影に気を取られた。

無言が続く僕達である。彼は僕より年上で、本を沢山読んでいるせいで、僕の理解できないことをよく聞かせてくれた。その場合、僕は黙って聞くことにする。彼も、多分僕からの返事を期待するわけではなく、僕が黙々と聞いているだけで満足したように微笑んでいる。

さて、島の方だが、人より何倍も高い木が沢山ある。目を凝らせば何やら島から海へ突き出す物があるようだ。橋、あるいは桟橋というべきだろうか。こちらも同じような所に立っている。海に突き出す、橋ならぬ橋。かつて島と陸地を繋ぐ橋があったんだろうか、いつしか破壊され、その名残がこのような不完全な形になった。

妙な話だが、この橋についての記録はなかった。誰によって建築されたか、そもそも橋その物は存在したかも不明瞭だった。とにかく謎だらけの物件だった。

「君はどうなんだ?橋の彼方に何かあるのかを気にならいのか」

「さあ、べつに」

目に見える物自体は面白みとかがなく、ただ木々の生い茂った島と寂しげに海に突き出す橋の断片しかないのであった。僕にとって、そこに実在する以外の物は想像できないし興味も持たなかった。

「そうか。君には早かったかもしれないな」

僕の頭を撫で撫でしながら彼は言った。

「でもいつか君にも知りたくなるような日がくるだろう」

「その前にヒカリが答えを見つけ出しそうだね。僕より頭いいもん」

「そうなったらあそこまで連れてやるさあ。検証の時に」

彼は機嫌やさそうに笑って、向こうの島に指さして僕に言った。

「楽しみだね」

僕は別にどっちでもいい。ただ滅多に部屋から出ない彼と一緒にいれば満足だった。彼は生まれてから躰が弱くて、ほとんどの時間は部屋に篭もり、読書に耽ていた。例えあの島へ向かおうとしても、自力では困難でしょうし、ましてや子供である僕達は保護者がいなければそんなことすら許されていないはずだ。その約束は遠い未来、あるいは来ない未来かも知れない。

ふと見上げれば、空はより一層暗くなった気がする。夜は静かに訪れていた。

「帰っろか」

彼は名残惜しそうに島から目線を離し、ここから去ろうとした。

僕は慌ててヒカリを追いついて、彼の歩調に合わせて隣で歩いていった。

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