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41日目:お手伝いをしましょう

 ゴーラ流、結婚の作法

 

 思い合う二人がスペルシア教会で結婚を報告し、司祭がその結婚を承認することで成立する。基本的な流れは、新郎が正装で花嫁を家まで迎えに行き、親族や親しい人たちと列を作って教会へ向かう。

 報告が終わったら、お披露目のパーティーを開くのが通例。


 花婿の条件

 ・襟のある服を着ること。(スーツが望ましいが、天候・コンディション・個人の事情による)

 ・親しい誰かから借りたものを身につけること。


 花嫁の条件

 ・白いヴェールを身につけること。

 ・親しい誰かが作った花束を持つこと。


 司祭の条件(ゴーラ特有)

 ・新郎新婦よりも年上であること。

 ・新郎新婦の身内ではないこと。

 ・新郎新婦のどちらとも髪色が異なること。

 ・新郎新婦と何らかの関係性があること。

 ・新郎新婦の結婚を祝える立場であること。

 ・ゴーラの住人であること。

 ・海に関わる仕事をしていること。

 ・病気や怪我をしておらず、健康であること。

 ・自分の名前を文字で書くことができること。

 ・過去一年以内に、スペルシア教会で祈った経歴があること。


***


「……こうしてみるとそんなに難しくない気がするけど……?」

「髪色で鬼人とヒューマンの半数くらいがアウトになるな」

「スミカさんもこれでだめだったんだねえ」

 うーん、微妙に難しいのか。

 ちなみにこれってどうしてこういう決まりになったの? とスミカさんに問いかけてみる。あ、ルーアさんはプリンさんにドレスを見せてほしいとねだられて、2人でルーアさんの部屋へ向かっているところです。

 僕達は女性のお部屋にお邪魔するのはちょっとね。あと、プリンさんは編み物を嗜んでいるわけだけど、今の師匠に弟子入したときに<裁縫>をゲットして、発展スキルの<刺繍>と<レース編み>のスキルも取得しているそうなので、ドレスにアドバイスができるかも、とのことだった。


 聞いた相手はスミカさんだったけど、ずっと結婚式の話を楽しそうに聞いていた小さな女の子が、「はいっ」と元気に手をあげて教えてくれた。

「えっとね、まず年上にお願いするのは、人生経験? が豊富だからだって」

「先人を敬うのは良いことだねえ」

「身内からお願いしないのはね、えっと、昔は身内にばっかり頼んでいたせいで、犯罪? があっても、なあなあですまされることが多かったんだって。だから、そういうのゆるしません! ってなったの」

「犯罪行為はダメ絶対!」

「髪の毛のお話はね、伝説なの。むかーしは、花嫁さんと花婿さんと同じ髪色の人が司祭さんでも大丈夫だったんだけど、なんかね、りこんりつ? が高いんだって。それで、だんだん避けるようになっていって、最後には取り決めになったの」

「なるほど、ジンクス的なやつかあ」

 それにしてもこの子詳しいな。時々首をかしげて意味わかってなさそうなのもかわいい。栗毛の三つ編みの、お人形さんみたいなドワーフのお子さんだね。


「関係性? っていうのはね、知り合いじゃないとだめよーってこと。これもね、昔は司祭をやるよって騙して謝礼をもらって、逃げちゃう人がいたんだって」

「昔は結構犯罪もあったんだねえ」

「お祝いできる立場っていうのはね、えーっと。すごく昔に事件があったんだよ。花嫁さんと花婿さんと仲良しだった人が司祭になったんだけど、この人が本当は花嫁さんのことが好きだったの。だから、意地悪して許可を出さなかったんだって。それで、花嫁さんも花婿さんもすごーく困ったの」

「三角関係のもつれかあ……」

 意外と、昔の失敗談から設定された決まり事が多いのかな? 髪色については完全に迷信だと思うけれども。

「ゴーラの住人であること、は。えーと、旅人さんとかに頼んじゃうと、予定が変わって急に司祭できなくなったりするんだよ。だからだめなの」

「確かに、旅人には頼みづらいね」

「海に関わる仕事はね、ゴーラの人たちは海に対する信仰? があるから。海竜ラメラ様とか、神獣メリカ様とか、そう云うすごい存在にあやかるためだって」

「確かに、ご利益ありそうだよね」

 ところで僕が一生懸命相槌を打っているというのに、イオくんと如月くんは完全に聞いてるだけなの何なんですかね。僕を子供担当だと思ってませんか。別にそんな決まりないんだよ、本当だよ!


「あとは、病気とか怪我はね。無理しちゃだめ! って」

「それは大事。元気が一番だよ」

「お名前を書けるっていうのはね、お認めの書を発行するからだよ。二人は結婚しました、って証書? を作るの。その時に、署名するんだよ」

「証明書かあ、記念になるねえ」

 せっかくだからそれは欲しいね。お家に飾ってるご夫婦とかもいそうだ。

「それで最後の教会で祈った事ある人っていうのはね、結婚式は教会でやるからね。教会に来たことない人とか、最近全然来てなかった人とかは、信用? っていうのが落ちるんだって」

「なるほどー。よく知ってるね! えらい! とっても助かったよ!」

「えへへー」

 良い子! と褒めて撫でると、女の子は嬉しそうに微笑んでくれました。でも本当によく知ってたね、こんなに小さいのに。教えてくれてありがとうね。


「すごくわかりやすいお話だったけど、やっぱりなんかいける気がしない? 厳しいように見えてそこそこ緩いよ、この条件」

「んー、カパルはどうだ? 港なら縁はあるだろ」

「カパルさんは焦げ茶色の髪だから、多分ロイドさんと被るかも。金髪の人とかいないかな……」

「まあ、あと一週間あるならなんとかなるだろう。探してみようぜ」

「がんばろ!」

 だって結婚式だよ、結婚式。心置きなく楽しんでほしいよね。如月くんもなんか心当たりあったら教えてね! と気合を入れる僕である。

 あ、ルーアさんとプリンさんが戻ってきた。なんだろう、プリンさんがなんか力説してる……? あ、なるほどドレスは上品で素敵だったけど、ちょっと地味だと。刺繍を入れさせてほしいという話ですか。

「でも、そんな依頼するほどの予算は……」

「もう! 友達からお金なんか取らないわよ。それに、私だって半人前だもの、よくなるとは限らないわ。でも、私も師匠に習ってもっと腕を磨くから、少しでも手を入れさせてもらえたら嬉しいわ!」

「プリンさん……!」

 あれ、なんかこの短期間でめっちゃ仲良くなってるな? プリンさんなら良いものを作ってくれそうだけど、あと1週間でどこまでできるかの問題になってきそう。


「とにかく、私は一度図案を考えてくるわ! 気に入ったら是非やらせて頂戴」

「は、はい。すごく嬉しいです!」

 ルーアさんを押し切ったプリンさんであった。強い。

「みんな、お待たせ。やる気が出てきたわ、そっちの話は終わったかしら?」

「おかえりプリンさん。条件は把握したよ、とにかく心当たりを当たってみる予定」

「良い結婚式にしたいわね!」

 プリンさん、自分のことのように気合が入っている。でもそのくらい親身になってくれる人がいると、ちょっとありがたいよね。

「ルーアさん、僕達も頑張るから」

「ありがとうございます! その、今更ですが、こちらを」

 ルーアさんは笑顔で封筒を僕達に手渡した。真っ白の封筒の中身はポストカード大の……招待状。もちろん、ルーアさんとロイドさんの結婚式への招待状だ。

「時間もありませんが、私たちもできるだけ頑張ります。是非……是非、いらして下さい」

 僕、イオくん、如月くん、最後にプリンさんに順番に封筒を手渡すルーアさん。この笑顔のために、できることをしなきゃだ。


「当日、楽しみにしてるね!」

「祝いの品を用意しておく」

「俺も心当たりを探しますから、頑張りましょう!」

「ルーアさん、一緒にがんばりましょうね!」

 うむ。楽しみが増えました!


 ところで、アナウンスに「イベントスケジュールを設定できます」って出たんだけど、これ何?


 教会を出てからイオくんに問いかけると、「そういや俺達は初めてだな」と当然のように説明してくれました。なんでも知っててイオくんはえらい!

「こういう、何かの会合とかパーティーとかに複数パーティーで誘われたときに調整できる機能でな。今、この結婚式は俺達と如月とプリンの2パーティーで誘われた事になってんだよ。でも、それだとパーティーごとにログイン時間とか違うだろ?」

「そうだね。アナトラは加速も早いし、予定合わせるの大変なゲームかも」

「そういうときにこのイベントスケジュールって機能を使うんだ。全員で相談してリアルのいつ、って時間設定して、その設定時間でイベントを起こせる機能だな」

「おお、そんなのあるんだ、手厚い!」

 確かに、せっかくイベント起こしたのに参加できないと悲しいもんね。リアルで時間を合わせるなら合わせやすいし、ちゃんと全員同じ時間に設定すれば、その時間になったら自動的にイベントに突入してくれるらしい。しかもリアル30分前に休憩を促すアラートまで出してくれる。

「超便利機能では……!」

「そうよね! これ他のゲームでも標準になってほしいわ」


 全員で話し合って、イベントを起こすのはリアル2日後の午後1時からと決めた。

 この先行体験会、今日が7日目だから、明後日だと9日目。10日目になると午後からメンテナンスに入ってしまう。かといって明日はイオくんが夜までログイン出来ない日だから、全員の時間を合わせるには明後日しか無いのだ。

 けっこんしきなあにー?

「結婚式は、ルーアさんとロイドさんがずっと一緒に歩いて行きます、って誓う日だよ。家族になるんだって」

 テトさんはずっと子どもたちと遊んでいたので、不思議そう。テトもおめかしして出席しようねーと撫でると、にゃふふーと満足そうにしている。

 いっぱいブラッシングしてねー♪

「気合を入れましょうとも!」

 なんならリボンとかお花とかも飾っちゃう? あ、待ってそれよりも!


「イオくん! 僕達服装どうすればいいの!?」

「参加者のドレスコード、襟付きの服、長ズボン、革靴」

「えっ、どこに書いてある情報それ!?」

「クエスト一覧見ろ」

 あ、そこにありましたか。全然見てないよクエスト一覧……。だって大量にありすぎるんだよ、見てて気が遠くなるからもう封印してたよ。

「女性はワンピースかスーツ、あるいは簡素なドレスですって」

「プリンさんは服持ってそう!」

「当然ね!」

 おしゃれだもんなあプリンさん。今着てる服もほとんどワンピースみたいな感じだし、サンガで着てた服とも違う。それに、被服系の職人さんたちに弟子入りしてるわけだから、当然衣装持ちだろうね。

「如月くんは?」

「長ズボンは……あります……」

 目をそらされた。イオくんと如月くんの服はいかにも冒険者用って感じで、ちょっと結婚式にはそぐわないかもしれない。靴もブーツだしなあ。


「ナツはそのままケープ外せばいけるだろ。靴だけか」

「それはそれで解せぬのだけれども、もらったばっかりのこのシャツがめちゃくちゃキレイなのでありです」

「ちょうどいいわね、みんな、このまま私の師匠の店まで行きましょう」

 プリンさんが仕切るようにぽん、と手を叩いた。


「これから向かう黄昏通りは、衣料品の通りよ。欲しいものは何でも見つかるんだから!」

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