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40日目:港倉庫街リターン!

 早朝五時、ゴーラはとっくに起きている。

 サンガの朝市もそうだったけど、ゴーラも港町なだけあって朝が早い! もうとっくに出港してる船もあるらしくて、朝5時から7時までの3時間が一番港倉庫街が賑わう時間帯なのだとか。

「というわけで今日は朝ごはんを倉庫街で食べよう!」

「朝から元気だなナツ……」

 おいしいのあるかなー♪

「絶対美味しいものたくさんあるよ!」


 というわけで、向かうは港倉庫街。

 まだあたりは暗いけど、人通りは結構多い。もちろん、みんな目的地は一緒だ。人の流れに沿って、僕達もスムーズに倉庫街へと到着した。

 まだ結構暗いから、ライトが眩しいね。活気のある港から次々と木箱が運び込まれ、海の男達が大声でやり取りしている。店も呼び込みが活発で、あちこちで良い匂いが……お腹すいた!

「イオくん! 串焼き食べよ!」

「エビは初めて見るな、うまそう」

 おさかなー?

 倉庫街入ってすぐの屋台で、でっかいエビを串焼きにしていたので即座にそれを購入。早速いただきます。

「んー! 塩がちょうどよくて美味しい! やっぱり新鮮なのは最高だよねー!」

「シンプルに美味い」

 素材の味がいきててめっちゃ美味しい。これぞ新鮮! って感じ。「テトもー」ってご所望のテトさんに、【適温】してから一口上げると、んにゃあっとご機嫌な声が上がった。

 おーいしー♪

 尻尾もぴーんでご機嫌である。猫だもん魚が好きなのは当然だよね。


 エビを噛み締めていたら隣の屋台から「兄ちゃんたちうまそうに食うなあ! こっちもどうだい、生牡蠣だよ!」と声をかけられたので、当然そのままスライドして購入。牡蠣! 牡蠣! ちょろっとレモンを絞って渡してくれたのを、つるっといただきます。

「んんんー! 最高……!」

 思わず言葉を噛み締める僕である。このぷりぷりした食感がたまらんのだ……! レモンの酸味がまたベストマッチ……!

「美味い」

 イオくんも流石に噛み締めている。テトもちょっと気になったみたいだけど、屋台のおじさんがレモンを絞るのを見ていたので、食べたいとは言わなかった。レモンが酸っぱいと学んだテトさん、とても賢い。後で甘い物見つけたら買ってあげよう。港町だから難しいかもだけど……!

「海鮮焼き! 海鮮焼きならこっちだよ!」

「スルメ焼くよー! ほらほら、一皿700Gだよ!」

「魚介の煮込み! 今なら一皿800G! 出来たてだよー!」

 くっ、誘惑が、誘惑が多い……! イオくんここは危険だ! 早く抜けなきゃ!


「とか言いながら目が釘付けなんだよなあ」

「不可抗力です!」

「はいはい、ほら行くぞ。まずは乾屋ジゼルだ、鰹節が待ってるんだよ」

 イオくんに引きずってもらってようやく屋台スペースを抜ける僕なのだった。スルメの香りが強い、強すぎるよ、僕はあれに勝てそうにないですイオくん。

「スルメは買ってあるだろ」

「そうだった。マヨネーズと食べたい」

「おう、あとでな」

 まよまよー♪

 白いものが好きなテトさんはマヨネーズも好き。ポテトサラダも好きだし、マヨチーズ焼きとかも気に入ってる感じ。僕も好きだしね!

 とりあえずイオくんに誘われるまま、乾屋ジゼルに到着。ちょっとレトロな懐かしい雰囲気の乾き物屋さんは、燻製の良い匂いが……くっ、ここも誘惑が強い……!


「ジゼルいるか? 取り置きを頼んだ者だが」

「はいよ」

 店内に呼びかけるイオくんが、すぐに出てきたジゼルさんと鰹節の商談に入ったので、僕とテトは邪魔しないように店内をうろうろ。あ、煮干し発見! これはイオくんが欲しがってたので2袋くらいキープしとこうかな。

 こざかなー?

「煮干しは料理に使うんだよテト。イオくんが美味しくしてくれるんだ」

 イオはなんでもおいしくできてえらいのー♪

「えらいよねー」

 あ、魚の骨せんべいあるじゃん、これたまに無性に噛み締めたくなるんだよねー。これも買いたい。昨日作った肩こりと眼精疲労軽減のお守りが結構高く売れたから、今お財布潤ってるんだ。

 ナツー。

「何ー? あ、テトも欲しいものある?」

 ナムーノいるのー。

「え、ナムーノさん?」


 ぱっと顔を上げると、テトを発見して一直線に人混みをかき分けてくるおじいちゃんの姿がそこに。お、おお……。すごいにっこにこだナムーノさん。

「テトさん! と、ナツさん! おはようございます!」

「おはようございますナムーノさん。早いですね」

「良い食材が欲しければ、朝の港がベストですので。ついでに美味しいスープも飲めます」

「あ、今日何スープでした?」

「今日は香辛料たっぷりの薬膳風でしたね、いやあ、体がぽかぽかします」

「おおー」

 香辛料たっぷりだったらテトは無理かな? 優しいお味が好きだもんね。今日のナムーノさんは白衣を着てないので、休日なのかな? とか考えている僕の隣で、ナムーノさんは目を輝かせながらテトを撫ではじめる。

「今日は良い日です、朝からテトさんと巡り会えるとは!」

 とかテトを褒め殺しながら、ひたすらに撫でる。撫でる。撫でる! テトも「うにゃあん」と大変ご機嫌な鳴き声である。

「えーと、ナムーノさんはスープを飲みに?」

「ははは、実は私、年寄ですので。朝早く目覚めてしまうんです」

「なるほど」

 そう言えばうちのおじいちゃんも、朝すごく早起きだったなあ。もっとゆっくり寝たらいいのにって言ったら、年寄だから目が覚めるんだ! って言ってたっけ。


「ナツさんたちはお買い物ですか。そう言えば、以前ボーンパールを探していると聞いたような」

「あ、探してます! 友達へのお土産にしたくて」

 リィフィさんへのお土産! できれば自力で探したいなと思ってたところだった。でも、シースライムってどこに居るのかわからないんだよね。研究所で飼育されてるっては聞いた事あるけど、流石にそれをくださいとは言えないし。

「シースライムって、どこで会えますか?」

「会えてもボーンパール持ちかどうかはわかりませんよ。とは言え、実はナツさんに教えていただきたいことがあります。もしそれを教えてくださるならば、お返しに私もシースライムの生息地を教えましょう」

「おお……! 何が知りたいんですか?」

「大いなる海原の王について、ですね」

 メリカさん? と思ったけど、そういえばナムーノさんと一緒のときにアクアさんに会ってるんだっけ。あの水族館で話したから、僕達がアクアさんの主であるメリカさんに会う予定ってことは、ナムーノさんも知っているわけだ。

「会いに行かれましたか? どんな方でしたか? お元気そうでしたか!?」

 わくわくそわそわって感じのナムーノさん、もしやメリカさんファンの方かな……? そりゃあんなにかっこいい神獣さんだもんね、ファンも居るか。


 僕は張り切ってメリカさんのことを話して、ついでに遭難者たちを救出したこともしゃべっちゃったので、流れでラメラさんに協力してもらったんだよとか、ナナミからすごい魔法士さんが来てくれて、とか……まあめっちゃ色々語ってしまった。だっていい感じにみんな助けられたし、メリカさんかっこよかったし。だから喋りたくなっちゃうのは仕方ないのである。

 ナムーノさんは実に良い聞き役だったので、僕が何か言うたびに「ほうほう」とか「へえ!」とか、的確な相槌を打ってくれちゃってですね。つい気持ちよく喋りすぎちゃったよね。

「それで、今エリアゼロを神獣さんが守ってくれてるんですよー」

「なるほど。実に壮大な話でしたねえ、いやあ、知らないあいだにゴーラ大ピンチではないですか。まあ神獣様の手にかかれば敵など一網打尽でしょうけれども」

 区切りの良いところまで話をしたら、ナムーノさんも満足そうである。なぜか一緒にいたはずなのに、途中から僕の話に聞き入っていたテトさんまで、「すぺくたくるなのー」とか言ってる。テトさん、君もメリカさんに会いに行ったでしょ、何初めて聞いたみたいな顔してるの?

 ナツのおはなしすてきー。

「あ、僕が絵本とか読み聞かせしてるからかなこれ。今の話はお話じゃないよ……!」

 しってるのー。でもナツおはなしじょうずだからよいのー。

 満足そうなテトである。まあ、楽しそうだからいいか。


「素晴らしいお話でした。神獣メリカ様、聖獣ラメラ様、ともにゴーラでは大変な人気を誇りますからねえ、なんとも羨ましい」

「お二人とも気さくで優しいですよ! ナムーノさんもファンなんですか?」

「私は、ファンと言うより、なんでしょうねえ。もっと重たいのですよ」

 苦笑のようなものを浮かべて、ナムーノさんは静かに告げた。

「昔々、この海の海底火山の研究をしていた学者というのはね、私の父です」

「え」

「私も結構長寿ではあるんですよ、実はエンシェントエルフの血がうすーく入っていますので。でも、父は私よりその血が濃かったので、そりゃあ長生きでして」

 予想外のことを言い出したナムーノさんは、昔を懐かしむような顔をして目を細めた。

「そんな長生きの父が若い頃、この海の海底火山を研究し、その爆発が近いことを突き止めました。しかし、誰も本気にしてくれなかった。父が感じた絶望がどれほどのものだったか、私にも想像出来ません。しかし、信じてくれた方がただ一人、いらっしゃる」

「……メリカさん」

「はい。神海鯨のメリカ様。その方だけが、必死で訴える父の言葉に耳を傾け、詳細を知りたがり、動いてくださった。もう逃げるしかないという状況を、ひっくり返してくださった。その上で、父の研究は正しかったと皆に伝えてくださいました。ゴーラを危機から救った英雄を称えよと、そう言ってくださったのです」


 父は、とナムーノさんは囁く。秘密の話をするように。

「父は、最後の最後まで、そのことに感謝していました。墓標に鯨を刻んでほしいとまで。朝起きては海に向かって深々と頭を下げる父の姿が、今でも目に焼き付いていますよ」

 ふふふと笑うナムーノさんの表情は、柔らかい。メリカさんの話を最初に聞いた時は、火山の危険を訴えた研究者さんがどうなったかなんて全然気にしてなかったけど、こうして改めて聞いてみると、つくづくメリカさんの行いは偉大なんだなあ。

「ナムーノさんのお父さんにとっては、恩人なんですね」

「ええ、まさに。ですのでそんな話を毎日聞いて育った私も、メリカ様には並々ならぬ思いがあります。信仰のようなものですねえ。こう見えて私、信心深いのです。外を見てこいとヨンドへ追い出されて、そこでなかなかの地位にまで上り詰めたのですけど……どうしてもメリカ様のお役に立ちたくて、まんまと舞い戻ってきました。なので、今ここで海洋研究などをしております」

「そんな経緯だったんですね。あ、でも所長さんというからには、もしや星の民だったりします?」

「いえいえ! 学術機関の長は、星の民に限らないのですよ。私も父も、ヨンドから流れてきたただのエルフです、はい」

 あ、そうなんだ。学校とかの校長先生は、星の民に限らない……って、ヨンドとか学校すごくたくさんあるらしいし、限っちゃったら星の民が足りなくなりそうだもんね。


「では、約束通りシースライムの住処を教えましょうかね。ついでに、安全なボーンパールの採取の仕方がありますので、そちらも」

「わー、是非お願いします!」

 ふんふん、港の南側の砂浜の南端から、更に南東方面の海に小島が。その小島の入江に、シースライムパラダイスってくらいシースライムがぎっしり詰まっていると。え、ナムーノさんたちは月に一回船で向かって、投網漁してシースライムを乱獲してるんですか!? それでもまたすぐ増える? 海の神秘だなあ。

「それで、安全なボーンパールの取り方ですが、とても簡単です」

「どうすればいいんですか?」

「ナツさん、水魔法の【ミスト】を使えますよね」

「あ、はい」

 たしか【ミスト】は敵の視界を遮って命中率を下げる技だったかな。僕はあんまり使わないからそんなに有用な魔法だとは思ってなかったけど……。

「とにかく【ミスト】をシースライムのいる辺りに撃って下さい。そうすると、シースライムたちは何故か【ミスト】を吸収します。それで、たくさん【ミスト】を吸収したら、ボーンパールを落っことして行くんです」

「お、おお……?」

「【ウォーター】でもいいんですけど、【ミスト】のほうが広範囲に撒けるので効率が良いです。そんな研究もしてます、こう見えて私、研究者ですので」

 えへん、と胸をはるナムーノさん。「ナムーノものしりなのー!」と擦り寄るテトさん。すごい、物知り、助かる! ありがとうございます! 


「あ、でも氷魔法はダメですよ。フリーズでも撒こうものならあたり一面のシースライムたちが、一瞬で凍りついて砕けて割れます」

「怖いこと聞いちゃった!?」

 その情報はいらなかったよナムーノさん!


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― 新着の感想 ―
VRゲームならカロリーも無視して好き勝手食べれる……。牡蠣もあたるのなんか気にせず生でいっちゃえる……。うぅぅぅぅ、現実に何故まだ無いのですか……。 しかし意外な繋がりですね。 メリカさんいなければ…
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