39日目:武器強化へGO!
まあ、結局ゴーラの街のことなので、領主さんにうまいことお任せすることにして。
ピザはチーズがめっちゃ美味しかったです。
「総合点でいうとサンガのピザのほうが上なんだけど、チーズの味だけはゴーラの勝ちだったねえ」
「鮮度の違いじゃねえかな。すげー伸びて面白かった」
イオくんの言葉に、テトも「びよーんってなってたのー」と相槌を打つ。3種類のピザはどれも美味しかったけど、マルゲリータとペスカトーレのチーズは歯切れよくて、ベーコンのピザに使われてたチーズはすっごい伸びるやつだったんだよ。あまりにも伸びるのが楽しすぎて、後から追加注文しちゃった。味もすごく美味しかったのだ。
「ヨンドから乳製品が入ってくるから、クリーム系もサンガより質が高いですよね。テトのパンケーキも生クリームもりもりでしたし」
しろいのおいしかったのー。くりーむー♪
「美味しかったなら良かったねえ」
パンケーキ、お店の人が気を利かせてくれたのか、お魚くわえた猫の絵柄のお皿で出てきたので、テトのテンションは上がりっぱなしだったよ。「ねーこ♪ ねーこー♪」ってしばらく歌ってたくらいだからね。
ちなみにリゲルさんの食べるスピードはゆっくり目だったから、多分リゲルさんにはあんまり刺さってなかったと思われます。
さて、そんなことを話しながら店から出てきた僕達は、2時間後にギルド前集合と決めて一度解散する。遅れる場合は別途連絡、報・連・相は大事なのだ。
僕とリゲルさんとテトはこのまま、「杖工房・アリシャ」へ。えーと、夕凪通り19番地……ダナルさんのお店「シェルライト」の近くから、西方面に入る通りのようだ。
イオくんと如月くんは北門近くの朝焼け通り4番地、ラドン工房へ。素材については、剣用の素材杖用の素材が違うので、共有インベントリにある素材は好きに使ってって感じ。
ラメラさんの鱗は、剣に使えるんだけどねー。イオくんの剣は品質★8までの素材を2つまでなので、★10の鱗は使えないのである。それで、イオくんが強化に使う予定なのが、★4のナイフリーフって素材と透水石っていう、グランさんの聖域の近くでひろったという透明な石の2つ。ナイフリーフはキャノンフラワーという固定砲台のドロップ素材だったはず。
むむむ。★8のなんかいい素材なかったのかなあ……。
「ナツ。言っとくけど、品質★5より上の素材って、入手困難なんだからな?」
「くっ、どうあがいても心読まれる! わかってるけど、何か僕品質高い素材結構もらうからさあ……」
「謎人脈に感謝しとけ」
はい。ありがとう神獣と聖獣のみなさん……! 後リゲルさんも! たくさんもらっちゃったあの白い板、品質いくつなんだろうな……。<鑑定>レベル早く上げなきゃ。後1レベル上がったら<心眼>とれるんだよ、もう少しだと思うんだよね。
途中まで一緒に南北通りを北上して、途中でイオくんたちと分かれる。僕達が向かう杖工房は、えーと、丁度あそこの角のところかな?
「ホワイトオパールを持っていると聞いたが、他に杖用の素材はあるのか?」
とリゲルさんに聞かれたので、一応インベントリを確認してみる。
「うーん、友達のフェアリーさんからもらった羽とかあるんですけど、品質が高くて。★7のホワイトオパールと一緒には使えないんですよ」
「ナツの杖は品質★10まで、素材3つまでだったか。そう言えば、最初の強化だったな。確かにその段階で、品質の高い素材をいくつも持っているというのは幸運だ」
ですよねー。僕もうっかり忘れがちだけど、普通に店売りの素材系は、★3~4のものが多いんだったよ。だから多分、最初の強化は★3素材を2つと★4素材を1つ、くらいのバランスを求められているんだと思うんだけど……。
逆に僕、そのくらいの品質の素材、全部売っちゃってて持ってないんだよね……。
結構初期の頃から品質の良い素材ぽろぽろ入手できちゃってるから、すっかり感覚がマヒしてるんだよなあ。反省しよう。
ナツー、ユーグせんぱい、テトのおめめのいし、つかってくれるかなー?
「きっと大丈夫だよ、テトはユーグくんと仲良しだもんね……!」
ユーグせんぱいきらきらきれいだからすてきー。
まあユーグくんは杖なんだけどね。なんかテトは僕がユーグくんを取り出す度に尊敬の眼差しを向けているのである。あのきらきらの眼差しを向けられたらそりゃあ、ユーグくんも後輩を可愛いと思っているはず。
「名付け済みか……」
リゲルさんが何か考えるようにそんなことを呟いた。名付けてあるとなにかまずい? と思った僕に、リゲルさんが説明してくれる。
普通だと、2回目くらいの強化のときに、工房の職人さんから「名前をつけたらどうですか」って勧められるらしいよ!
「1回目の強化でしっくり来ないこともあるからな、だいたい2回目の強化のときに使い続けられそうなら名付けをするという魔法士が多い」
「わ、わあ。僕はただ、名前つけたらかっこいいかなと思って名前決めたら、表示が変わったので、わーいって……」
「ナツらしいな。まあ、長く使うつもりなら良いと思うが。最近の魔法士は名付けをしない者も多いらしいが、名付けはしたほうが良い。今後杖を買い足すことがあれば、そちらも名付けすることを忘れるな」
「それは今のところ予定ないです……!」
ユーグくんがいれば不自由ないからね、別の杖なんて今は考えてないよ。
さて、夕凪通りは普通の住宅街という感じで、普通の住人さんたちの居宅が並んでいる。トスカさんの杖工房も、こういう通りの中にしれっとまざってたし、やはり工房というものは自分の家を兼ねるものなのだろう。
その夕凪通りは、まっすぐ西に伸びる道から、北方面にギルド前通りに向けていくつかの小道が派生している。その中の1つ、細い路地の角にあったのが「杖工房・アリシャ」である。
看板ちっちゃくて、知らなかったら絶対に見逃しちゃうやつだ。僕がここで間違ってないかなってショップカードを確認している間に、リゲルさんがさくっとチャイムを押してくれた。
「はーい、どちらさまー?」
すぐさま、そんな声とともに顔を出したのは30センチくらいの大きさのフェアリーさん。おお、髪がめちゃめちゃキューティクルに輝いている……。男性のフェアリーさんだね。
「こんにちは。こちら「杖工房・アリシャ」さんで間違いないですか?」
「はいはい。お客様ですか? 紹介状とかお持ちだったら見せてください」
「はい、こちらです」
しゅぱっとマレイさんからもらった紹介状を差し出すと、その封筒の透かしマークを見ただけで、どうやら差出人がわかったらしい。フェアリーさんはなんとなく背筋を伸ばした。
「はい、こちらをお持ちなら間違いないですね。どうぞ中へ。杖工房・アリシャへようこそ!」
案内されながら自己紹介をすると、フェアリーさんも名前を教えてくれた。この杖工房で経理事務をしているトゥルゥさんというらしい。
「こう見えてそこそこおじさんだから、子供扱いしないでくださいね!」
とのこと。うーん、フェアリーさんの年齢、ドワーフさんと同じくらいわからない……! と思っていたらなんか心読まれて、「羽が大きいほど年上」と教えてもらえました。そうだったんだ、確かにリィフィさんよりトゥルゥさんのほうが羽が大きいね。
「この工房はアリシャって杖作成師が一人でやってるところなんだけど、まあ結構な売れっ子なんですよ。だけど本人、本当に生活力がなくて。スケジュール管理してあげないといけないんです」
「あー、居ますねそういう人」
「職人に多いんですよねー」
こちらにどうぞーと案内されたのは応接室。トゥルゥさんが呼んで来てくれるというので、僕達はしばらくそこで待機となる。トゥルゥさんは妖精類なので、すごくテトを気にしている感じだったけど、何か葛藤しながら部屋を出ていった。
撫でたかったんだろうなあ……。撫でてもいいですよって言えば良かったかも。
「ナツ、あれを見ろ」
リゲルさんに促されて、指さされた方向を見ると、そこには額縁に入れられたなんか立派そうなレリーフが飾られている。ローブを着た魔法士さんが杖を構えている感じの絵柄だ。縦長の長方形で、背景が金色である。
「あれが杖工房の認可証だ。杖作成師の実力は3段階で評価され、独立したばかりの工房は銅、工房を構えて10年経つか、良い杖を作ると認定された者は銀になる。具体的には、定期的に店と取引をして、粗悪品を作らないと確認された工房などが銀に上がりやすいな」
「あれは金色ですよね?」
「金は品評会で良い評価を得たとか、名のある魔法師の目にとまって推薦されると審査の上、昇格できる。今のナルバン王国だと、すべての街をあわせて30名ほどだ」
「じゃあ、すごい工房なんですね!」
へー、やっぱりそういう制度ってあるんだなあ。格付けっていうか、ランク付けだよね。トスカさんの工房に行ったときは全然気にしてなかったから、認可証があったかどうか覚えてないけど……きっと銀か金の認可証があったんだろう。
「もし他の街で杖の強化をするなら、銀か金の認可証がある杖工房に行ったほうがいい、ってことですよね」
「ああ。よほどのことがない限り銅はやめておけ」
了解、覚えておきます!
10分くらい待っていると、足音がして応接室のドアが開いた。入ってきたのは僕と同じくらいの身長の女性……だけど、髪がなんか、ガラスみたいに硬質な感じ? 目もガラス玉か宝石かって感じで、なんか不思議な雰囲気。これは今まで会ったことない種族の方かな。
「おまたせ、マレイの紹介なんだって? 早速だけど、杖を見せてもらえる?」
ハキハキとした快活な声がその女性から発せられて、僕の向かいのソファに座る。この人がアリシャさん、かな?
「はじめまして、僕はナツ、こっちはお世話になってるリゲルさん、このかわいい猫さんは僕の契約獣のテトです。そして今回強化をお願いしたい杖はこちらのユーグくんです」
「ご丁寧にどうも。私はアリシャ、輝石人を見るのは初めてかな? 地底人類といえば、ドワーフか輝石人が代表格なんだ。ロクトやハチヤにたくさんいるよ」
おお、そうなんだ。輝石人……ってことはあの髪は石素材……? 触り心地が気になるな。
アリシャさんは僕からユーグくんを受け取って、目を輝かせながら詳しく見ている。<鑑定>もしたかな? それから魔力を流してみたりとか、アメジストの状態を確認したりとか、てきぱきと点検してくれている感じだ。
なんかちょっと緊張するなあ。
「うん、良い杖だね。さぞかし腕の良い杖職人の作品だ、これは腕がなるね!」
やがてアリシャさんはそう言ってぱっと顔を上げた。ふふん、そうでしょうそうでしょう。うちの自慢のユーグくんですからね! と自慢に思う僕の横で、テトも一緒にドヤアっとしている。身内が褒められると嬉しいんだよねー。
「強化お願いできますか? お値段とか知りたいんですが……」
「んー、そうだね……。宝石は何か用意があるかな?」
「あ、これを使いたいんです」
テトが僕のために交換してくれた、ホワイトオパール。キラキラに優しく輝く宝石をインベントリから取り出すと、アリシャさんはそれもじっくりと確認する。
「……うん。アメジストはデバフに強い石だけど、このホワイトオパールはどちらかと言うと味方へのバフが得意だ。反発はしないけど、もう少し枠があるよ。品質★3までの素材で、植物系か鉱石系、透明度の高いものがあったら追加したほうが良いね」
う、うーん、やっぱりそうなるよね……! でも★3素材は今持ってないかも。えーと、一応探してみるけど……。
「……ないのか?」
「ぐ、ぐぬぬ」
「ふむ。透明なものという条件なら、私の方でいくつか用意があるが」
「リゲルさんさすが! 良ければ売ってください!」
「いや、別に金を取るようなものでもない」
リゲルさんはそんなことを言いつつ、多分、マジックバッグから素材を取り出してくれたのかな? 見せてくれたのは透明なフィルム……みたいな、薄いシート。えーっと、<鑑定>。……リゲルさん、鑑定結果が「透過膜」と品質★3しか表示されないんだけど、これももしやリゲルさんのお手製ですか……?
「これでちょうどいいだろう。拙い品質だが、一応とっておいて良かった」
「うん、これはいいね! 丁度あわせて品質★10、どれも相性の良い素材だし、これなら良い強化ができそうだよ」
アリシャさんも嬉しそうだし、くれるというのならもらうけど、ちょっと詳細は聞かないことにしようかな……!




