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15日目:空間魔法との遭遇!

「せい!」

「ハッ!」

「てやあっ!」

 ドカ! バキ! グシャ!

 筋力自慢のシスイさん、イオくん、美月さんの3人がそれぞれ拳やらかかとやらを小屋の床に振り下ろす。なんかすごい音がして、べっきりと床板が割れた。

「お、ありましたよナツさん! これ、床扉です!」

 そして目的のものは、つつがなく如月くんが発見。そう、地下へと続く隠し扉だ。10センチくらいの金属製金具がついていて、その細長い金具の端っこを押すとくるんと回って、裏側から取っ手が現れる仕組み。これって古い家によくある収納扉用の金具なんだよね。田舎のおばあちゃんの家で見たことがあるよ。


 くーかんまほう、このしただよー。

 テトが隠し扉の前におすわりして、うにゃんと一声鳴いた。てしてしとその扉を軽く叩いている。お、イオくんが扉を開けてくれるみたいだね、任せよう。どうせ僕じゃ開けられないし。

「よっ、と。おお、地下室あるな」

「空気大丈夫かな? ……【換気】」

 この下にある部屋の空気をごっそりと森の空気と入れ替える、換気扇のイメージで呪文を唱え……あ、秘密にしてた<原初の呪文>使っちゃった……!

 そっと周囲を伺うと、シスイさんと美月さんはなにか筋力のことで話をしていたので、多分聞かれてない。セーフ!

「おい気をつけろよ、秘密にするんだろ」

「ごめん!」

 イオくんとも話し合って信頼できる人にしか見せない方向でって言ってたのになあ。いやうっかり。まあでもおかげで周囲から風が穴の中へさーっと吹き込んでいき、なんとなく濁った空気が外にさーっと押し出されるのがわかった。それをじっと見てから、イオくんが一言。

「許す」

「許された!」

 やっぱり空気はきれいな方がいいよね!


「如月くん<光魔法>か<闇魔法>取れたー?」

「くっ、俺は剣スキルも取らないとなのでSP不足してまして……! まだ<光魔法>だけですしレベルは3です!」

「OK。じゃあ、一緒に【ライト】出そうか」

「はい!」

 地下室っていうのは暗いものなので、明かりは大事だ。僕が先に下へ続く階段の途中あたりに一つ【ライト】を浮かべると、如月くんは「じゃあ俺が先陣切りますね」と言って最初に降りていった。

「テトはお留守番してる? 一緒に行く?」

 いっしょー!

「じゃあ、僕たちは最後に行こうか。<識別感知>にも反応がないから、敵はいないと思うし」

 わーい。

 テトは今日、朝からずっと僕を乗せているのでとってもごきげんなのだ。今も喜びを全面に押し出して僕の周辺をぐるぐる回っている。こういうの見ると申し訳ない気持ちになるので、今後はもっとテトに乗ろう……って思うんだけど、戦闘があるとそうも行かないので難しいねえ。テトは賢いから説明すればわかってくれるけどさ。


「中広いんで全員来られますよー!」

 と、先に降りた如月くんの声がする。美月さん、シスイさん、イオくんと順番に降りていって、僕とテトが最後だ。にゃっにゃーんとご機嫌に歌っている歌は、今日は「イーオーはつっよーい♪」だった。テトさん僕の歌は無いんですかね……? 

 階段はそこまで長くなくて、地下へ入るときはわずかに抵抗を感じた。なにか、魔物が入らないように守りの魔法でもあったのかな? 中はやっぱり暗いから、僕もいくつか【ライト】を追加して明るくして、っと。

「倉庫かな? イオくん、その箱何が入ってる?」

「古いカーテンとか衣類だ。もとから砦にあったものを押し込んだのかもしれない」

 地下にあったのは、大きな木箱がいくつかと、壊れている大きな置き時計。それから細々とした日用品のようなものが積み上げられている。足踏みミシンのようなものまであるな……。

 ナツー、こっちー。

「ちょ、待って待って」

 テトは意気揚々と僕のケープを噛んで引っ張った。ついて行くからちょっと離してねー。とテトをなだめてから案内に従うと、地下室の一番奥の壁の前まで誘導される。そして、うにゃうにゃと何事かつぶやいたあとで、テトはてしっと石壁に前足をついた。ざざざーっと砂が崩れるように石壁が崩れ落ちて……お、おう、空間がありますね……。

「テトすごい! よく見つけたね! えらい!」

 とりあえずテトを褒めて撫でまくっておく。


「うわー、ナツさんやっぱりすごいっすね……」

「僕じゃないし! これは名探偵テトのお手柄なので!」

 きさらぎもほめてー。

「ほら如月くんもどうぞ褒めて! 撫でて!」

 にゃにゃっと如月くんの前に頭を差し出すテト。撫でてくれる人は覚えてるんだよね、この子。賢い。如月くんが「すごいすごい」と褒めて撫でてくれているのを横目に、僕は中を確認して、っと。

「【ライト】。あ、こっちはそんなに広くな……い、けどちょっと僕一人の判断ではいかんともしがたい! イオくん! 頼れるイオくんはいますかー!」

「居るけど何が……」

 イオくんは崩れた壁の向こうを確認して、言葉を切った。それから僕の背中をぽんと叩く。

「お前の<グッドラック>、仕事し過ぎ」

「言われましても!」

「シスイ! ちょっと手伝ってくれ! 箱の中に人がいる」

「は!?」


 シスイさんが困惑の声をあげた気持ちもよく分かるんだけど、箱の中に人がいるという表現は本当に見たままその通りなのである。正しく言うならば、なんか透明の魔法でできたらしき長方形の箱に、子供が2人だけ眠るように入っているんだよ。触れてみた感じ、箱の中には何らかの魔法が満ちているように思える。

 えーと、こういうときは<鑑定>で……。

「この箱は空間魔法でできた保存の箱で、外から察知されないように隠匿されている。で、その中にいる子どもたちは時間停止状態、だって」

「うわ、とんでもないな。ナツくん、ちょっと外にいて欲しい。運び出すよ」

「お願いします!」

 力自慢のイオくんとシスイさんが子供の入った箱を運び出してくれる。ちょっと如月くんからの呆れを含んだ視線が痛い。僕じゃなくて<グッドラック>さんがすごいんです!

「この箱壊せるのかしら。停止状態なら多分中の子どもたちは生きているわよね?」

 美月さんが困ったように腕を組んだ。中に人がいるなら力技で叩き壊すわけにもいかないからね。


「テト、これ壊せる?」

 んー。

 空間魔法なら、テトがどうにかできるかも? と思って話を振ってみると、テトは魔法の箱の匂いをくんくんと嗅いで、こてりと首をかしげた。

 むりかもー。

「無理なのかあ」

 これつくったひと、たぶんすごいまほうつかいなのー。

 なんかとても高度な魔法だよって感じのことをテトが説明してくれたんだけど、ふわふわしたテトの言葉ではなんかふわっとした説明にしかならなくて、具体的なことはよくわからなかった。


「えーと、とにかくとてもすごい魔法使いの人が、この子どもたちを助けるために時間停止の魔法をかけて、魔物に見つからないように気配を遮断する箱を作った、ってことでいい?」

 それー。

「うーん、でも空間魔法を持っているテトがこの箱を壊せないとなると、じゃあ何なら壊せるのかな。箱のままサンガに持っていくのは無理だし」

 箱の中で眠っている子どもたちは、1人がドワーフの女の子で、もう1人は多分ヒューマンの男の子だと思う。10歳前後の子どもたちだから、この砦にどうしていたのかまではよくわかんないんだけど……もしかしたら管理人さんの家族だったとか? それか、子供ですら戦っていたのかもしれない。

「箱さえ壊せれば、僕が両手に抱えて行けるよ。このまま運ぼうとすると複数人必要だし、そうすると帰り道が不安だね」

 シスイさんもそう言って難しい顔をした。確かにシスイさんは、一番体が大きいから、子供2人くらいは余裕で運べそうだけど……。

 問題はこの箱なんだよねー。これがあるせいでどう頑張っても1人では運べないし、中身が人だからインベントリにもアイテムボックスにも入らない。テトに犬ぞりのように引いてもらうってのも考えたけど、流石に現実的じゃないんだよなあ。


 今日のメンバーの中で、純魔法職は僕だけ。ということは、僕がどうにかしないと。

 うーん、でもテトが言うようなすごい魔法使いが作った魔法なら、そう簡単に崩れないよね。なにか使えそうなスキルあったっけ? 箱、箱……使うとしたら……<アンロック>とか<解体>みたいなの……無いよねー! あるとしてもたぶんシーフ系のスキルだろうから、僕の取得可能スキル一覧には出てこないと思う。

 そうなると、もう出来ることはこれしか無いな。

「えーと、イオくん。ここは仕方ないと思うので見逃して欲しいです」

「ん? ああ、使うのか。まあ、信頼出来るならいいんじゃないか」

 イオくんは美月さんとシスイさんは無害と判断したらしい。ここでなんか引っかかることがあった場合、イオくんは断固反対してくるはずなので。僕としてもこの2人なら内緒にしといてねってお願いすれば大丈夫かなーと思うから、やりましょう、<原初の呪文>を。


 えーと。魔力でできた箱なわけだから、【解体】だとなんか違うかな。【分解】……は、中身もバラバラに成っちゃいそうで怖いし。箱だけを無効化するには……あくまで魔法なわけだから……効果をなくせば良い。うん!

「じゃあ、やってみるね。【解除】」

 一番シンプルだけど、魔法の効果を消滅させるって言うならやっぱりこれでしょう! 僕のイメージだと魔法は解除するもの! この透明なはこから魔力が解除されてしゅーっと消えていく感じ……水が蒸発するようなイメージで……。

 僕がユーグくんを箱に向けると、ちゃんとイメージできていたみたいで、箱からなにかきらきらしたものが抜けて行くのがわかった。そのまま端っこのほうから空気に溶けるように、箱の形が消えていく。

「成功!」

「すごいじゃん。なんでもありだな<原初の呪文>」

 ヒュウと口笛を吹いたイオくんと、うわーって顔している如月くんはいいとして。

「えっ、何今の!?」

「魔法スキル? 何が起きたんだい?」

 と驚いた美月さんとシスイさんには、簡単に説明をしなければ。


「あー、えっと、伝承スキルっていうのがありまして……」

 説明は苦手なんだけど、なんとか<原初の呪文>について説明してみると、2人とも「へーすごいね」って感じで落ち着いた。2人とも魔法スキル使わないからそのくらいの感想になるよね。

「掲示板に書けない話題だから、あんまり広めないでもらえると助かります」

 とお願いしておく。あんまり無作為に広まって、住人さんたちに迷惑がかかっても困るからねえ。

「そうなのね。私はソロでのんびりやるつもりだし、誰にも言わないと思うわ」

「うーん、僕のパーティーにいる魔法士には、ちょっと言わないほうが良さそうかな。悪いやつではないんだけど、無差別に住人に声をかけて師匠を探したりしそうで……」

 胸を張る美月さんと、肩を竦めるシスイさんだ。

 特にシスイさんの判断にはお礼を言っておこう。手段を選ばない人はいるからね……。


「じゃあ、そのスキルで時間停止もなんとかできるかな?」

「あー、それはサンガに戻ってから、最終手段で良いかと思って。もしかしてサンガの住人さんが、正しい解除の仕方を知ってるかもしれないので」

 というのも、テトがすごい魔法使いがこれをやった、って言ってたからなんだよね。すごい魔法使いさんならきっと有名だっただろうから、サンガに知ってる人がいるはず。もしかして、正当な弟子とかがいたらその人が正しい解除方法を知っている可能性もある。

 僕のイメージ次第で効果が変わる<原初の呪文>じゃ、やっぱり人に向けて使うのは不安なんだよね。なにか間違いが起こったら怖いじゃん。

「この子たち、10年もの間眠っていたってことなのよね……」

「目覚めて僕たちが目の前にいても、上手く説明出来る気がしないんですよねー。エーミルさんとかどうかなイオくん。あの人、北門付近の子どもたちの初恋泥棒やってたって聞いたし、知ってるかも」

「職業みたいに言うのはやめてやれ。……だがいいかもな。エルフやフェアリーは長生きだと聞く。子どもたちの身内も知っているかもしれない」


 うむ、大体の目処はたったかな?

 それじゃあ、急いでサンガに戻ろうか!

明日は更新スキップします。

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