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15日目:探索のお誘いに乗る

いつも誤字報告ありがとうございます、助かってます。

 猫って、本当にシャーッ! ってやるんだなあ……。


 僕の行きつけの猫カフェでは懐っこい子が多くて、誰も人間を警戒しないんだよね。僕の家の近所に野良猫は見たこと無いし、動画とかで威嚇するという情報は知ってはいたけど、見たのは初めて。ちなみにイオくんがそばにいると臆病な猫はみんな脱兎のごとく逃げ出すので、ますます機会がない。

 テトって最初から僕たちにフレンドリーだったしなあ。

 で、本日。

 如月くんから、「前回隠し砦を見つけた皆さん、もう一つ砦を見に行ってほしいという依頼を受けたので、よかったらご一緒しませんか」というメッセージが来ていたので、二つ返事で了承した朝8時。そこから待ち合わせが1時間後の午前9時にギルドのフリースペース。

 朝市に行かない日だったからのんびり起床して、フリースペースでゆっくり朝ご飯を食べて、やることリストを洗い出していたらすぐに時間になった。

 巨大猫テトを連れて待ち合わせ場所に向かった僕たちを、すでに居た如月くん、鬼人の美月さんの2人が迎えてくれた。美月さんはテトと初対面だったので紹介したところ、その美月さんがテトの地雷を踏んだのである。

「まあ、なんてかわいいもふもふの猫さん……! うちの子にならない?」

 

 普通に考えたら社交辞令というか、本気にする人いないよねーって感じの言葉なんだけど、テトにとってはそうではなかったらしい。ものすごい勢いで僕の後ろにびゃっ! と隠れ……隠れられてないけどね大きいから……、イオくんと僕の間から警戒するように顔をだし、美月さんに向けてシャー! と威嚇が出たのである。


 やだもん、テトはナツのおうちのこだもん、ほかにいかないもん! ナツとイオといっしょにたびするんだもん! おいしいものたべてしあわせーってなるんだもんー!


 ……はい、副音声若干早口。

「テト落ち着いて。テトは家の子だよ、どこにもあげないよー」

 ほんとにー?

「ほんとほんと。テトは賢くて良い子だもんねー。もし無理やり連れて行かれそうになったら、イオくんが守ってくれるから安心だよー」

 あんしんー。

「美月さんも本気じゃないよ。もう言わないから許してあげようねー」

 ……ほんとにー?

 テトの警戒レベルがマックスで、じとーっと美月さんを見据えている。美月さんもここまで拒否されるとは思っていなかったらしく戸惑いとショックの表情だ。


「あ、あの、ごめんねテトちゃん。本気じゃないわ。他の人の契約獣を奪うなんてひどいことしないわよ」

「ほら、冗談だって」

 むー。とってもいやだったのー。もういわないでねー。

「美月さん、もう言わないでねって」

「わかったわ!」

 じゃあ、ゆるすー。

 うにゃん。と少しだけ不本意そうに一声鳴いたテト、イオくんの背中に頭をぐりぐりこすりつけて仲良しアピールをしている。イオくんは満足そうだ……あのー、テトさん? 僕にはそれやらないの? あ、はい、テトに本気でぐりぐりやられたら僕は転げますね、はい理解。

 気遣いのできる家の猫、天才かな?

「召喚士以外は、1匹しか契約獣とは契約できないから、こういう冗談を本気にとられると思わなかったのよ。ほんとにごめんねテトちゃん。その、よかったら家のメグと仲良くしてくれるかしら」

 メグー?

「私の契約獣よ。おいでメグ」

 美月さんが呼ぶと、赤色のペンダントからぴょんっと一匹のうさぎが飛び出してきた。


「フラワーラビットのメグよ」

 ちょっぴり自慢げに美月さんが紹介するだけあって、その子はとてつもなく可愛いウサギさんだった。小柄でほんのり黄色くて、尻尾のところと耳のところにお花が咲いている。ちょっとだけナルを思い出すね。

「わー、かわいい! 撫でても良い?」

「どうかしら、メグ? ……ナツさんはいいよって言ってるわ」

「やったー!」

 ではお言葉に甘えて。……うむ、テトとはまた違う肌触り。テトはしっとりツヤツヤ系で、こっちの子はふんわりぽわぽわ系だ。毛並みはみんな違ってみんな良いのである。よしよし、良い子だねー。

「テト、メグっていうんだって! 仲良く出来る?」

 メグよろしくー。テトだよー。ナツのおうちのこなのー。

 にゃーんとご挨拶するテトに、メグは鼻を寄せて挨拶。ウサギって鳴き声どんなだったっけ? と思って耳を澄ませてみたけど、どうやらメグは鳴き声をあげないらしい。無口な子なのかと思えばそうでもなくて、テトが「そうなんだー」とか「あのねー、モンブランっていうのがすごくすごくおいしいのー」とか会話は聞こえてくるんだよね。

 メグは鳴き声以外のところでなんらかの言葉を発しているってことか。まあ契約獣は不思議な生き物だからなあ。


「ところで美月さん、僕はいいよって、イオくんは?」

「イオさんは怖いからちょっと、って」

「あー」

 まあイオくんは威圧レベルMAX持ちだからそれは仕方ないね。能天気なテトでさえも最初は怯んでいたわけだし。その話を聞いたイオくんはほんの少し眉間にシワを寄せたけど、何も言わなかった。

「すまない、遅れた」

 と、その辺りで最後の1人が集まった。

 黒髪に赤い目で、耳が大きめの犬獣人さん。あの時砦に向かって救出を手伝ってくれたメンバーが揃ったね。


「じゃあ、俺がクエスト受けたんで、俺が仕切りますね。ほぼ全員俺のフレンドなんで、右から順番に紹介していきます」

 と如月くんが宣言して、一番右にいたイオくんを手で示す。そのイオくんのみが如月くんのフレンドではないんだけど、僕がフレンドなのでまあ間接的に如月くんともフレンドのようなものだと思おう。

「こちらはヒューマン長剣士のイオさん。基本無口です」

「どうも」

 如月くんその紹介どうなの……って思ったけど、まあ事実かなあ。今日は美月さんと犬獣人さんという、ほぼ初対面なメンバーが居るから多分いつにもまして無口だと思う。イオくん人見知りだから仕方ないね。その分はテトにがんばって愛想振りまいてもらおうかな。

「そのお隣のエルフさんが、イオさんとパーティーを組んでいる上級魔法師のナツさん。ちなみに2人の間にいる大きな猫は、ナツさんの契約獣のテトです。基本、イオさんに伝えたいことがあるときはナツさんを通すとスムーズです」

「えー、そんな事なくない? あ、ナツです、筋力5なんで後衛しかしません、よろしくお願いしまーす!」

 僕が愛想よくそう言うと、「「5!?」」と美月さんと犬獣人さんが同時に叫んだ。5だよ! そして今後数字を振る予定はありません!


「紅一点が鬼人の上級槍士の美月さん。動物大好きなのでペットの話とか振ると長いです。足元にいるウサギはメグ、美月さんの契約獣です」

「よろしく。うちのメグは戦闘後に回復してくれるから、ポーション節約できるわよ」

 お、そういう特性の種族なんだな、あのウサギさん。回復専門かー、それもなかなか惹かれるねえ。美月さんは、ハイデンさんたちを助けた時にシーニャくんを呼んできてくれた人だし、契約獣も動物も好きなんだろうなというのは、なんかよく分かる。メグに対してデレデレだし。

「最後に、獣人で上級弓士のシスイさん。この中では多分リアルも含めて一番年上ですね。前回助けた住人さんたちから他にクエストも受けたりしてるらしくて頼りにしてます」

「よろしく、本名清水のこちらではシスイだ。一番年上だろうけど、昨日上級弓士になったばかりだから一番レベルは低いと思う。戦闘では頼りにさせてもらうよ」

 背中にでっかい弓を背負っているシスイさん、パワー系弓士さんかな? 弓士は筋力特化させてとにかく一撃の重い弓を使うタイプと、魔法と両立させてスリップダメージ入れていく技工タイプ、それからクリティカルと手数を重視のタイプが居るらしい。パーティー組んでる人はパワータイプが多いって掲示板で読んだような。


「今回のクエストなんですけど、サンガには隠し砦と呼ばれる、食料と物資の保管場所が3つほどあったらしくて、そのうちの1つを見に行って欲しいって依頼です。先日住人を救出した西の砦が1つ、もう1つは東の方にあったらしいんですけど、戦争後半頃見つかって破壊されてるらしくて、残りの1つがこれから行く北の砦になります」

 如月くんは多分この中では一番年下だと思うんだけど、仕切るの上手いなーと思う。委員会の委員長とかやってそうなんだよね。

「ここは、戦後しばらくは鳥を使って手紙のやり取りが出来てたそうなんですけど、それも途絶えて久しいと。それに、食料を大量に運び出したあとで、東方面から来る魔物たちを横から叩くために20名ほどの兵士の一団が待機していたことがわかっているので、おそらく生存は絶望的だろうという話でした」

「そうなのか。……辛いね」

 しみじみと言うシスイさん。

「南方面のお墓といい、サンガ周辺はイチヤよりも生々しいわね……」

 考え込む美月さん。

 まあ、絶望的だとわかっているところに行こうというのだから、多少心構えも必要だ。僕は悲しい話とか好きじゃないけど、悲しい中にも希望があることだってあるしね。


「北の砦は、地図でいうと、えーと……この辺です」

 如月くんが地図のスクショを送ってきたので、僕はイオくんとテトに見せる。テトは見なくてもいいと思うんだけど、なになにー? って感じで僕とイオくんの間に顔を突っ込むので見せてあげた。間に挟まりたかっただけかもしれないけど。ついでにもふもふしておこう。

「ウォータースパイダーの沼地の上辺りか」

 イオくんが確認する。

「はい。ウォータースパイダーはパーティー組んでて倒すの時間かかるので、今回は無視します。ただ、北の砦って山を少し登ったところなんで、場合によっては魔物の巣になってる可能性があるみたいです」

「アクティブ居るかな?」

「多分。レベル帯的には多分平気だと思うんですけど、無理しない方向で。ポーション皆さん持ってますか?」

 如月くんの確認に、全員が問題ないと答えた。

 僕もMPポーションの在庫は十分にあるから良いとして、<原初の呪文>はなるべく使わないほうがいいかな? 臨機応変に行くけど、他のトラベラーさんたちと一緒のときはなるべく隠そう。イオくんの特殊スキルは別に言わなきゃわかんないやつだし、<グッドラック>さんは自動発動だから問題ない。


「大丈夫そうですね。じゃあ、砦の探索と、できれば遺品の回収ってことで、クエスト行きましょうか」

 如月くんがそう宣言すると同時に、僕の前にひょいと伏せる一匹のもふもふ。

 テトさん、そんなお目々キラキラさせて……え? 乗ってくかって? いや、でも今日は集団行動で……あ、ハイ。俊敏僕だけ低いんだね了解。

 乗せてもらいますぅ!

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