第一章 転生して、また悪役令嬢と出会った
目が覚めた瞬間、僕は高い天井にぶら下がるシャンデリアを見上げた。
白い天井、重厚な家具、そしてベッドサイドに置かれた銀製のティーカップ。
ここは間違いなく、貴族の寝室だ。
前世、僕はこの国の平民エリック・ラーヴェンとして産まれ、イザベラ姫に恋をし、悪役令嬢と名高いテオドラ・マリスカ・ヴァストルに邪魔をしたと見なされ、彼女の魔法によって凍りつき、凍死した。
──そして今、またこの世界にいる。
違うのは、今度はテオドラの婚約者として貴族の身分を与えられていること。
僕は溜息を吐きながらベッドから起き上がり、鏡に映る自分の姿を見つめた。
黒髪に青い瞳。
立派な紋章付きの寝間着。
前世とは比べものにならないほど洗練された容姿。
だが、心は冷めていた。
前世の記憶がある。
この物語の展開もすべて知っている。
テオドラは傲慢で残忍な悪役令嬢。
イザベラを陥れ、王太子を奪い、最終的に反乱を起こして処刑される。
だが──
「本当に、彼女は悪人なのか?」
僕は眉をひそめた。
殺める前に、泣いたのは何故?
前世での最後の記憶。
殺される直前、僕はテオドラの目を見た。
その瞳には一杯の涙が浮かび、悲しみと諦めがあった。
まるで、自分が演じている役に疲れ果てているかのように。
そして今、僕はテオドラの婚約者。
このまま僕がイザベラ姫に恋をせず、物語の通り進めばテオドラは破滅し、僕は生き延びる。
──だが、僕はその結末を迎える気にはなれなかった。
「この運命、変えられるなら……」
僕は決意した。




