第十一章〜逃亡
ようやく新章を書き始められました。皆様方、どうか宜しく尾根が申し上げます。お読みになっていただけましたら幸いです。、誤字脱字修正済であります。
夏美の身体を操る欄馬は、夏美の手を引くようにして走り出した。
逃亡だ。敵う相手であるような気はしなかった。負けるが勝ち、逃げるが勝ちという言葉もある━━。
伊勢丹の前の交差点を右に折れ、甲州街道へと入った。欄馬はこの辺りの地理には詳しくなかったが、とにかく逃げやすそうな方向に向かって走るしかなかった。何となくこちらの方向に向かう歩行者が少なくて、走りやすそうな気がしたのだ。
一瞬振り返って見ると、巨漢男が焦った様子もなく、余裕たっぷりに追っかけてくるのが見えた。
「ヤバいかなあ?」
夏美の身体の欄馬が息も絶え絶え呟くように声を出した。
「どうしたの?」
欄馬の身体の夏美が訊き返した。
「靴だよ靴。君の履いてきたお洒落な靴。ハイヒールというのか?」
「うん。ピンヒールだけどね。どうしたの?」
「とてもじゃないけど、あの靴で喧嘩に挑むことは出来なさそうだったし、走るのも無理そうだった」
夏美は言わずそも先を読んだ。
「ああ。脱ぎ捨ててきた、ってことだね。いいよ。靴ならいくらでも買える」
「ゴメンよ。本当は大切な靴なんだろう?」
謝ったと同時だった。二人は足を止めた。何らかの施設らしい入場ゲートの前で。
「新宿御苑よ。中に入ってしばらく身を隠そうよ」
欄馬の身体の夏美が小声で言った。夏美は目を丸くしている。この中に身を隠せるような場所があるのだろうか、と疑ってしまうのだ。
「早く」
夏美は、後ろをまた振り返ってから欄馬の手を引いた。そして財布を取り出している。
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