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32話 撲殺の女!

「カレンちゃん!!」


 ミズナはありったけの力で叫んだ!


 光の中に消えていくカレンを目撃してしまった。


 ミズナの中に眠っている何かが弾け出そうとしてる。


 エミリは異変を感じ取り、ミズナの元へ向かった。


 ギルドマスターや他の冒険者も得体のしれないものを感じた。


「なんだ……この異様な感じは……」


「俺、なんだかすげー寒気がする」

「お前もか?」

「私も凄く嫌な感じがするわ」

 他の冒険者も似たような気配を感じていた。


「ミズナさん!大丈夫?」


 エミリが駆け寄ったが、ミズナは放心状態になっていた。


「……わ」


「わ?」


「私の可愛いカレンちゃんに何をしたああああああ!!!」


「うわ!」

 

 ミズナの体からどす黒いオーラがあふれ出して、エミリはびっくりして尻もちを着いた。


「こわ!ミズナさん怖いよ!」


 目が怪しく光り、


 口から変なオーラがあふれ出していた。

 

 ——あの美人なお姉さんの姿はここにはない。


 ミズナさんは一歩、また一歩とサイクロプス目指して歩き始めた。


 その歩みにより、地面が歪んでいく。


 レイピアを握りしめ、天にかざす。


 怪しく、どす黒い気配の塊がレイピアに渦を巻きながら集約されていき、


 巨大なハンマーへと姿を変えた。


「撲殺です!」


 アハハハ……と叫びながら巨大なハンマーを構えて、地面を砕いて飛び上がり、


 サイクロプスへと叩きつけた。


 ズドオオオオオオオオオオンンンンン!!!!


 サイクロプスを中心に地面に亀裂が走って行く。

 

 ミズナさんの勢いは止まらず、

 

 さらに打ち付ける。


 ドゴオオオオオオオオオオンンンンン!!!!


 その光景を見ていた冒険者たちは震えあがっていた。


「あの人やべーよ……」


「なにもんだよ……」


「また変なのがこのギルドから出ちまったじゃねーか……」


 ギルドマスターが絞り出した言葉だった。


 

 サイクロプスは、もはや虫の息だった。


 ミズナさんも、体に負担があったのか、いつの間にか元の姿に戻っている。


 エミリはミズナさんの近くに駆け寄り、体を支えた。


「凄いね、さっきの」


「……なんの事でしょうか?」


 どうやら記憶が無くなっていたらしい。


 エミリはサイクロプスを見た。


「エミリ!」


 背後からマルクの声が聞こえて来た。


「マルク」


「さすがの僕もこいつは許せないよ……」


 エミリは初めて、マルクの怒りを感じていた。


 マルクが剣を操作してサイクロプスの胸の上に立った。


「僕の仲間にしたことは、絶対に許せないよ」


 拳を握りしめ、

 

「これでおしまいだ」


 剣をサイクロプスの胸に突き立て、おもいっきり吹き付けた。


 ドゴオオオオオオオンンンンン…………


 辺りに光があふれ出し、


 土煙が辺りを覆い始めた。


 

 風が吹き抜け、


 辺りを覆っていた土煙を静かに飛ばしていく。


 煙が晴れた所には、息絶えたサイクロプスの上に立つマルクがいた。


 

 うおおおおおおお!!!!

 あいつやりやがたああああ!!!!

 英雄だあああああ!!!

 鬼もいるぞおおおお!!!


 冒険者たちは喜びあっていた。

 ギルドマスターも僕たちを見ながら力強く頷いていた。

 ・

 ・

 ・



 サイクロプスを倒した冒険者たちから離れた場所で——。


 カタ カタ カタ バタ……

 

 何かが近づき倒れる音が、私の意識を取り戻させた。

 

(なんだ? どうなったんだ私は)

(体が痛い……目は開くのか?)


 痛む体を無視して体の向きを変えた。


 重たい瞼を、頑張って開いてみると、


 目の前に、何やら燃えているのが見えた。


(何が燃えているんだ?)


 燃えている物が何かわからないが、


 そいつは動き出した。


(な、なんだ……何が起きている)


 炎はゆっくりとふらつき、


 立ち上がった。


 その姿は小さいが、どことなく人の形に見える。


(火の精霊か何かか? 私は夢でも見ているのだろうか)


 炎はこちらに気が付いたのだろうか、


 ゆっくりとこちらを振り向いた。


 その顔は燃えていたが、目に赤黒い光を灯し、口が裂けて同じ光を放った。


 (ひっ!……)


 私の記憶はここで途切れた——。

 

 

 ある者は村へ報告に、


 ある者はサイクロプスへと近づく。


 村外れに避難していた人たちも、村からの報告を受けて戻っていく。


 僕らは、先ほどの戦闘で巻き添えになった女性の元へ向かうのだった。


 女性の所へ向かいながら、エミリとミズナさんにカレンの事を話した。


 「うわあああああん!! カレンちゃああああんん……」


 ミズナさんは顔を崩して泣き叫んでいた。


「マルク、本当なの? カレンが」


 エミリもま、信じられない様子だったが、


「うん……僕をかばってあいつの攻撃を防いでくれたんだけど……」


「……そっか」


 僕もエミリも黙り込んだ。

 ・

 ・

 ・

 

 倒れている女性の所まで来たとき、


 僕の肩に何かが飛び乗って来た。


 ジュ……


 …………


「あちいいいいいいいいい!!!!」


 僕は反射的に肩乗っかって来たものを勢いよく払い落とした。


「な……なんだ?」


 払い落とした物をよく見ると、赤く焼けた石人形が地面に頭から突き刺さっていた。


 石人形は地面に突き刺さった頭を抜こうと、必死にもがいている。


「マルク……この子、カレンじゃない?」


「……ん?」


 僕は火傷した肩をさすりながら、地面でもがいている人形をよく見た。


「ほんとうだ……カレンの装備だね」


「え!? カレンちゃんいるんですか!?」


 ミズナさんがカレンという言葉に反応した。


 ズボッ!


 ポテン


 人形は地面に刺さっていたのを自力で抜け出した。


 ……確かに、カレンだ。


 髪の毛や皮膚が無くなって、僕が最初に見たころの石人形に戻っていた。


「カレン、生きてたんだね」


 カレンに声をかけると、


 カレンも頷き返してきた。


「でも……その焼けた体で肩に乗ろうとするのやめてね!」


 今にも肩に飛び乗ろうとしていたカレンを止めた。


 カレンの体の熱が冷めたころ、ミズナさんも落ち着きを取り戻していた。


 僕は未だに意識を失っている女性を見ていた。


「マルクさん、お騒がせしました」


 ミズナさんが頭を下げて来た。


「いいですよ、みんな無事だったんですから」


 ミズナさんが、笑顔を向けて来た。


 意識を失っている女性の顔を見て、


「あら? こちらの女性……どこかで見た記憶が」


 ミズナさんは倒れている女性に覚えがあるようだった。


 ミズナさんは手を叩いて、

 

「思い出しました」

「彼女、アルナートの初心者ダンジョン調査に加わっていた方です。間違いありません」


「え?そうだったの?」


 エミリが、こんな人いたっけ? みたいな反応をした。


「はい、常に後方から着いてきていました」

「隠し階段を降りるとき、一度だけ顔を拝見しましたから」

「でも、どうして彼女がここに? 今回の討伐メンバーにもいませんでしたね」


 ミズナさんは少し怪しんで、彼女の持ち物を確認しだした。


「これは……」


「何かありました?」


 僕も気になったので聞いてみた。


「毒薬と……隠し針がありました」


「自殺志願者ですか? ……それとも戦えない人ですか?」


「ち……違うと思いますよ?」


 僕の見当違いの物言いに、ずっこけそうになったミズナさんだった。


「なにが目的なのか……彼女が目を覚ましたら確認するのがいいですね」


 そう言ってミズナさんは、対象をカレンに変えていた。


「と、ところでカレンちゃんはもう、戻らないんですか?」


 悲しそうにカレンを見つめるミズナさん。


「わからないけど……戻るんじゃないですかね……」


 僕とエミリは、この状態のカレンの食事シーンを思い出して身震いした。


「なんでマルクさんは震えているんですか?」


 不思議そうに僕を見るミズナさん。


「村に戻ったら食事にしようか。 ね、カレン」


 カレンに食事をしようと言ったら、激しく頷き返してきた。


「じゃあ、カレンはミズナさんの席の前でいいね」


 僕は、カレンの食事シーンを見た時のミズナさんの反応が見たくなってしまい、こんな事を言ってしまった。


 ミズナさんカレンの前で食事ができることで喜んでいた。

 

 エミリはギルドマスターに呼ばれて、サイクロプスの方へ向かった。


 ミズナさんはカレンを抱いて泣き叫びだした。


 あれ?


 カレン逃げないのか。


 それにしても、カレンの装備は燃えなかったんだ。


 さすが、ゲンさんの作った装備だね。


 僕はもう一度、女性が寝ている方へと視線を戻した——


「あれ? あの女の人がいなくなってる!」


 僕は辺りを見回したが人影は見当たらなかった。


 ミズナさんもカレンを抱きながらこちらに向かってきた。


「……怪しいですね」


 一言だけ言って、僕たちは村の方角を見るのであった。

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