21 最終話
王都総合学院の卒業式は、晴れ渡った青空の下で行われた。
入学当初、学園生活なんて面倒だと思っていたレディアも、気がつけばここが居心地の良い場所になっていた。
講義で知り合った友人たち、図書館での静かな時間、放課後に通った研究所――。
そして何より、騒がしくて真っ直ぐなカタリナの存在が、日々を鮮やかに塗り替えていた。
◇◇◇
卒業後、レディアは予定どおり王立魔術大研究所に就職が決まった。
カタリナはといえば――
「フィリップがさ! 研究助手に来ないかって言うんだよ!」
と、いつもの調子で笑っていたが、その頬が少し赤いのをレディアは見逃さなかった。
どうやら脳筋娘は、研究所の青年と本当にいい仲になりつつあるらしい。
◇◇◇
式が終わり、皆が帰っていったあと。
レディアは学園の門の前で立ち止まり、振り返った。
春の風が吹き抜け、校舎の屋根に積もった花びらが一斉に舞い上がる。
――これで一区切り。
並行世界の夢が見せた未来は、ここではもう訪れない。
魔力を吸われ、暴走し、世界を焼く運命は断ち切られたのだ。
カタリナは門の向こうで手を振っていた。
「おーい! 早く行こうぜ! 新しい人生が待ってるぞ!」
その声に、レディアは小さく笑って頷いた。
◇◇◇
こうして二人は、それぞれの未来へと歩き出した。
学園での日々は終わったが、新しい物語がこれから始まる――。




