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plus/minus=0  作者: ISOyA
el mariachi
9/31

el mariachi 4 

初めのサーブのところは007慰めの報酬OSTの1番、Time to Get Out を聞きながら読むことをお勧めします。

通常、自動車道での平均速度は約40キロ前後だ。一般的な日本市民はそれをきちんと守り、時速30~35キロで巡航するのが定石だ。もし路面が濡れているならなおさらだ。だが、今日の千葉の自動車道には一台例外の車がいた。大量に降り注ぐ雨を物ともせず、黒のサーブ9-5はグングン加速して行く。現在、エンジンの回転数は6000rpm、スピードメーターは80キロをマークしていた。右折コーナーが差し掛かる。


乙鬼はギアをニュートラルに入れ、ハンドルを右に切ると同時に思い切りハンドブレーキを引いた。


リアタイヤがロックし、サーブはドリフト状態に入る。リアが滑り出すと、乙鬼は軽くカウンターステアを入れ、ヨーの発散スピンを抑える。70度のオーバーステアが入った時、乙鬼は素早くギアをDに戻し、ハンドブレーキを戻す。そしてアクセルを再び床まで踏んだ。ターボエンジンが勇ましく吼え、前輪に強力なトラクションが掛かる。そのままサーブはコーナーをクリアし、雨の中を加速していった。



インターカムから乙鬼は連絡を取る。「円城?」三秒間の沈黙の後、円城が電話に出る。

「・・・・その音、運転してるんですか?」やたらと嫌そうな口調だった。

「運転して何が悪い。それより、標的の居場所がわかった。千葉湾運倉庫だそうだ。」

  円城はほう、と呟いた。

「で・・・・、増援が欲しいと?」

「いや、迅速な死体処理、後はアレをやってくれ。」

「良いんですかぁ?相当人数いると思いますよぉ・・」


「大丈夫、僕は死なない。」

乙鬼は交信を切り、インターカムを耳からはずし、助手席に置いた。


時刻は午後5時20分。乙鬼はギアをマニュアルモードに入れた。


ヴォゥゥーーーーン


エンジンが軽くブリッピングし、4速に入る。


黒いサーブはそのまま雨の中へ消えていった。


「さてと、僕もそろそろ始めましょうか」

そう言うと、円城はクラウンのエンジンをかけた。ステアリングがドライバーの位置に下がり、

デジタルメーターがタコメーターとスピードメーターを映し出す。


円城はナビをセットアップした。目的地は、千葉火力発電所。

ギアセレクターをDに入れ、クラウンは静かに発進した。


50分が経過した。 時刻は5時50分。雨は一層強く吹いていた。


千葉湾運倉庫のガレージの中に10人の男達がいた。全員ヒスパニック系で、大量のダンボール箱をせっせと二台のトヨタ・ハイエースバンから降ろしていた。


10人の一人が喋り始めた。「Maldita sea, ¿dónde está Carlos!? sólo tenemos diez minutos!!」(ッたくカルロスの奴、いったいどこにいやがんだ!!後10分で客が来るんだぞ!!)男は40代ぐらいで、長い髪を後ろで一本に巻いていた。


「no se preocupe, que vendrá」(んな怒んなよ、すぐに来るって。)二十代ぐらいの男が返した。


突如、大きな衝撃音が辺りに響いた。


不自然な音に10人は動きを止めた。


全員、胸や腰のホルスターから銃を取り出し、安全装置を解除した。部屋の中の空気が一瞬で変わった。


「Manuel!」(おいマニュエル!)40代の男が吼える。

「ir a buscar fuera.」(外行って様子見て来い)


「¿Por qué yo!?」(はぁ!?何で俺が!)マニュエルと呼ばれた20代の男が講義に出る。

「Sólo tienes que ir!」(いいから行け!!)拳銃を振り回しながら男は怒鳴った。


20代の男はしぶしぶ行くことにした。ナイロン製の灰色のレインコートを被り、テーブルに置いてあったH&KG36を手に取った。透明プラスチックのマガジンを装填し、レーザーサイトのスイッチを点けた。


男が外に出た時、気温は3度まで墜ちていた。豪雨のせいで視界は最悪だった。男は人扱いが悪いだの、パシリにしやがってだのとブツブツ呟きながら歩き始めた。

突如、男の目の前に、黒い物が見えた。男はソレに向かって歩き始めた。

10メートル歩いた。 黒い物が少し大きくなった。


更に10メートル近づいた。その黒いものから煙がたっているのが見えた。


    30メートル近づいた時、初めてソレを認識することが出来た。


黒いソレは乗用車だった。スウェーデン製の、サーブ9-5エアロは、ただ静かにそこにたたずんでいた。さらに男は、フロントが激しく損傷していることに気づいた。フロントウィンドーは派手にひび割れ、外から、雨水が漏れている。ボンネットは折れ曲り、開いた隙間からもくもくと白い煙を吐いていた。おそらくウォータータンクが破損したのだろう。両方のヘッドライトは電球が割れ、電気コードだけでぶら下がっており、バンパーは無くなっていた。


ひとしきり見渡した後、男はこの車がどうやって進入したのかに気づいた。

見上げると、そこには見事に破壊された門があった。男は門に駆け寄ろうと歩き始めたその時、車の陰から何者かが飛び出した。



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