el mariachi 3
男は今、自宅の台所に縛り付けられている。表情は怯えきっていて、歯がカチカチと音を立てている。男の右手の人差し指は、通常とは逆の方向に捻れ、紫色に腫れあがっている。車から出る時、隙を見て反撃しようと銃を取り出そうとし、瞬間的にそれを察知した乙鬼に圧し折られたのだった。
乙鬼はコートのポケットから注射器と三つのアンプルを取り出し、テーブルに置いた。アンプルには左から、英語で、「Sodium Thiopental」、「Pancronium」、「Potassium Chrolide」とプリントが施されている。
乙鬼は男の方を向いた。男の前にしゃがみ込み、ナイフを男の喉下に向けた。
そしてゆっくり口を開く。
「¿Te vendieron armas a la gente?」(お前、人に銃を売ったんだろ?)刺すような声で乙鬼は尋ねた。
「lo que .... quién eres?」(な・・・お前・・誰だ?)痛みと恐怖に怯えながら、震えるような声で途切れ途切れに呟いた。男の頭は今、色んな質問と疑問がめちゃくちゃに渦巻いていた。自分を今、殺そうとしている人物、いや少年はいったい誰なのか?どうしてこのことを知っているのか?銃はどこにいった?取られたのか?俺は本当に殺されるのか?そういった感情が男の脳味噌をぐちゃぐちゃにかき回し、思考、判断すら出来なくなっていた。
「Su bien, sé que lo hizo...」(まぁいいや、売ったのは分かってるし)
乙鬼は立ち上がり、部屋の周りを歩き回った。
「el i lo desea oír de usted es el paradero de su controlador.
usted podría hacer eso, ¿no?」(僕が聞きたいのは、お前の雇い主の居場所。それを僕に教えてくれればいい。それくらい、出来るだろ?)
そして、素早く男の目の前に戻ってきた。「no quiero morir con dolor .... no?」(辛い死に方は・・・・嫌だろ?)
―「死に方」―、その言葉を前に男は絶望の表情を見せた。そして、泣き始めた。
「おい・・・・・」
「うぐっ・・・・・うッ・・・・ふぐっ」
「なぁ・・・・・・・・・」
「うっ・・うっ・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」乙鬼の表情に苛立ちが見えた。
乙鬼は下のほうを向いた、男の右足が見える。乙鬼はナイフを持ち替え男の足の小指を切断した。
・・・・・・・・・・・・ザクッ。
鮮血とともに指が中を舞う。「ッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!」
激痛に男は金鳴声をあげた。無様に体を捻じらせ、泣き喚く男を目の前に乙鬼は更なる苛立ちを覚えた。
ザクッ・・・・・。次は親指を切り落とした。蛇口のように血が噴き出し、床を深紅に染める。
地獄のような痛みに男は更に激しく悲鳴を上げる。そして更に暴れまわった為、ひっくり返ってしまった。
鮮血が、乙鬼の顔、服、手に飛び散る。乙鬼は勢いよく男の髪をふん掴み、乱暴に座らせた。
「duele ¿no?」(どうだ、痛いだろ?)顔中から体液を垂れ流しながら、男は泣いている。
「Ahora, dime, ¿dónde está?」(さぁ教えてくれ、彼は何処にいる?)
男はただ一向に泣きじゃくるだけで、乙鬼の質問には答えなかった。
「・・・・チッ・・・ふざけるなよ・・・」そう呟くと乙鬼はナイフを勢いよく振り落とした。
ダァン!! 男の左足の指2本が斬り飛んだ。
「アガァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」乙鬼は血溜りの中で暴れる男の首を掴んみ、壁に撃ちつけた。
「escuchar, pendejo!!」(聞け!糞野郎!!)首元を掴み、乙鬼が怒鳴る。
「i cortó 4 de sus dedos. ¿Quieres perder más? Es eso lo que quieres?」(僕は今、お前の指を4本切断した。これ以上何も喋らないなら、全部斬るよ。それでもいいんだな?)
男は目の前の少年がまるで悪魔のように見えた。いや、むしろこの男にとって、彼は正真正銘の悪魔なのだろう。透き通るような眼光、残酷という言葉をそのまま絵にしたような目。それは男の意識の中に突き刺さった。
12秒ほどの静寂が流れる。
「・・・・・・Está en la Bahía de Chiba.que tiene su garaje propio barco no」(あいつは・・・・千葉湾運倉庫に潜伏している。そこに彼はボート用の大型ガレージを所有している。」
鼻をすすりながら、男はようやく白状した。
「ok, gracias」(わかった、ありがとう。)
乙鬼は男を放した。男は糸の切れた操り人形のように床に倒れた。血がどんどん流れて行く。もう、泣くことも出来なかった。ただ頭がボーとしている。不思議と痛みは感じなくなった。どんどん考えることが出来なくなっていった。少年は目の前にいない。だがもう、そんな事どうでも良くなっていた。瞼がひどく重くなった。もう、目は開けられなかった。
男の意識はどんどん暗闇に堕ちていった。
乙鬼は「Sodium Thiopental」の入っていた注射器を男の手首から抜いた。次は「Pancronium」を注射した。男は動かなくなった。最後に「Potassium Chloride」を注射する。数分後、男の心臓が停止した。
乙鬼は部屋から出て行った。顔中血まみれだったが気にしなかった。
駐車場に降りて行き、男のサーブ9-5に乗り込み、エンジンをかける。
キュキュキュキュッッ、ヴァオオォォォン
ターボが吼えた。 ギアをDに入れ、サーブは発進した。
・・・なんか鬼畜にしすぎたような気が・・・。まぁいいやそれより、
解説コーナー:
注射器のアンプルは薬殺刑に使われる成分です。
1.)Sodium Theopental:日本名、チオペンタールナトリウム。全身麻酔剤。
2.)Pancronium:日本名、臭化パンクロニウム。呼吸を止め、脳死状態にするために使用される。
3.)Potassium Chrolide: 日本名、塩化カリウム。通常、人体にも存在する成分だが、血液内に多量の塩化カリウムが入ると心臓発作を起こし、最悪死に到る。




