(8話) 妖精に愛された召喚士 l
僕は今日、パーティ"N"を追放された。
早朝寮のポストの中に一枚の手紙が入っていた。そこには(午前九時、俺の家に来い。)とだけ書かれていた。僕は前に気を失った事についてまた暴言吐かされて金でも要求されるのだろうと思っていた。
しかし実際は違った。
僕はパーティを追放されたのだ。理由は(お前は足でまといだ。)というもの、最初はただ落ち込んで納得したけど、「今までありがとうございました。」と言って、「おう!二度とその面見せんな!」と嬉しそうに言われ、部屋を出て、ナザールさんの宿の外に出た。
すると窓の空いてるナザールさんの部屋から声が聞こえてきた。
「ひっひっひっ...これで思う存分シーナちゃん達と遊べるなぁ!」
「ええ、そうね。今日の夜が楽しみ...」
僕はそれが聞こえた瞬間にナザールさんの部屋に駆け込んだ。そして
「シーナさんに何をするつもりですか!!」
と問い詰めに行った。喧嘩で勝てるわけもないのに。案の定ボロボロに負けて宿を追い出された。ナザールには「お前、この話をシーナちゃん達に話したらどうなるかんかってるだろうなぁ...?」
と言われたので学院に行ったあとも彼女達の顔を直接見ることは出来なかった。
僕はナザールさんたちにぶたれたり蹴られたりするのがただただ怖かった。
いつも授業中に遠い空を見つめているシーナさんの顔も、いつもなら直接チラチラ見てたけど、今日は僕の勝手な気まずさに、窓越しに反射するシーナさんを見詰めることしか出来なかった。
窓越しに映るシーナさんもとても綺麗だった。彼女の何もかも見通すようなその奥の深い輝く黄金の瞳には一体どんな景色が拡がっているのだろうか...
するとチラッとシーナさんと目が合ってしまった。僕はとても胸が苦しくなって、思わず目を背けた。そして急に今までに無かった罪悪感が胸の底から押し上げてきた。
とても苦しかった。僕は、自分の身可愛さに彼女らを売ったんだ...話しかける権利も、彼女の笑顔を見る権利も、目を合わせる権利も、一人で思いを寄せる権利も僕には無い。
『僕は本当に...男失格だ...自分が痛くなりたくないから彼女達を犠牲にしてしまうんだ...』
心の底から弱い自分に対しての絶望を感じる。
『でも、好きな人を見捨てることなんて...』
そう、僕にはそんなことできないということもわかっている。しかしこの場において自分を助けたいという気持ちとシーナさんを守りたいという気持ちは矛盾している。
『僕は...僕は何をすればいいんだ...何をすべきなんだ...』
心の底からこれじゃダメなんだと警鐘が鳴らされる気分。
『自分は何をしなければならないんだ!?』
僕はこんな事が以前にもあったことを思い出した。夜伽に誘われるシーナさん達、そして涙を流して震えるレイナさん、報復を恐れて何も出来ずにただ立ち尽くしてた僕。
『あの時シーナさんは僕になんて言った!?』
そうだ。ネチネチと後悔を引きずる男はかっこ悪いとシーナさんは言ったんだ。そしてきっと僕はこのまま助けに行かなければ後悔する。そしてまたシーナさんに呆れられてしまうんだ。それならいっそ歯を食いしばってでも助けに行くのが筋じゃないのだろうか!それが男というものなんじゃないだろうか!?
そう思ったら僕は行動せずにはいられなかった。
僕にもできることはあるはずだ。
こうやって自問自答を繰り返しているうちにリオは自分の答えを導き出した。
彼女たちは今日ナザールさん達に犯されに行く。彼女達に話せなくても、寸前まで隠れて危なくなったら僕が止めに入る。そうすればシーナさんが襲われる事は無いのでは無いか?そのためには力が必要だ。単なるパワーに勝る力。
『...でも僕にはそんな力は...』
リオは自分の手のひらを見てギュッと握りしめた。
『くそう、くそぉ...何か力があれば...僕に人を守れるための力が...』
ここまで"戦ってやる"という気持ちを決めたのに、このキメきれないもどかしさに僕は大きく震えた。
そして考えた。何度も何度も自問自答を繰り返した。
『僕は何をしたらいい僕は何をすべきだ僕は何をしなければならない僕はどうしたらシーナを助けられる僕はどうしたら力が無くても戦える。僕はどうしたらあの力と対等にわたりあえる。僕はどうやってシーナさんを救い出す。力もなしにどうやってシーナさんを助ける。ナザールさんの弱点はなんだ。どうなったら最前の手になる。僕はどのタイミングで割り込むべきなんだ。どうやってナザールさんの目を奪う。今の僕には何が足りないんだ。今から僕ができることはなんだ。今から僕が用意すべきものはなんだ。僕がしたいことはなんなんだ!僕だけにしかできないことはなんだ!?』
でも答えは思いつかなかった。
僕はシーナさんを助けるための手段は考えついても、どうしてもそれを実行するためのパワーがなかった。するとシャンが出てきてフリーズする僕の周りをキラキラと飛び始めた。
「どうしたんだいシャン。」
いつも通りシャンは僕の右肩に着地すると、僕の首にスリスリして話しかけてくれる。
『リオが悲しい顔してたから。』
「僕は大丈夫だよ。でもお友達が今危ないんだ。」
『シーナのこと?』
...シャンは、僕のことをよくわかっている。悩んでいるだけで僕がシーナのことを考えていることを当ててしまうなんて...
「うん。でも僕じゃ力不足で助けに行けないんだ...」
僕は「情けないよな。」なんて呟くとシャンは僕の方で立って耳に手を当ててコショコショと呟いた。
『私、リオの役に立ちたいなー!』
「!」
僕はシャンのそのたった一言でハッとした。ただその一言で見えていた世界が変わった。
『私達、リオのためにここにいるんだよ!もっと私達を頼って欲しいなー!』
「ぁ...」
『なんで気が付かなかったんだろう』って思った。こういう"仲間は近くにいたのに僕はひとりで抱え込んでた、なんで周りにこんなに頼もしい仲間がいたことに気が付かなかったんだろう"、なんて言うの感動は定番すぎて、こんなこと現実で起こるわけが無いと思っていた。
でもそれは身近にあったんだ。シャンはずっと僕の傍にいてくれてた。
本当に気がつけば何もかも自分一人で抱えてしまっていたんだ。
改めて一緒に戦ってくれる、頼れる仲間がいるってことを実感した。
僕は「ありがとう...シャン」と感謝を言葉にして、いつも通り頭を指で撫でてあげる。すると『どういたしまして!』とシャンが笑顔になる。
僕はそこで決心した。
今回ばかりは妖精さん達の力を借りようと思う。皆でシーナさんを救うんだ。
「いいかな?皆?」
『おっけー!』
『守るー!』
『シーナ守るー!』
『任せてー!』
『よっしゃー!』
『もちろん!』
皆シーナの事が大好きのようだ。
これで決まった。
僕が何をすべきなのか。
放課後、僕は一人でダンジョンに潜って影に潜んで妖精達の力を借りつつシーナさんに危険が及んだと分かったら乗り込む。会話は風の妖精ヒュウに、状況は光魔法のシャンに任せて突撃の際はヨドの闇魔法で影を使って転移。そしてちゃぴとメラにナザールさん達を足止めしてもらい、そのままシーナさんを連れて外に脱出。これで決定だ。
僕はシーナさんを守るんだ。
僕は大きく深呼吸して高ぶった気持ちを落ち着かせるのであった。
半日ぶりに見上げた世界はとても広かった。




