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超高難易度調理食材 婚約破棄

私は英語が苦手ですが、アメリカ人が好きです。

大きなステーキ(ブリスケット)を柔らかく作るという魔法を使える魔法使いだからです。

ですが日本にも冷凍したままステーキを焼いて内部を予熱で加熱する事でミディアムレアステーキを作る魔法があります。

そう、私も魔法使いなのです。

いつか日米魔法大会が開かれれば、日本代表の魔法使いの誰かがこの魔法でアメリカに挑む姿を見る事ができるかもしれません。



ところで日本の魔法カルチャーに関する常識として童貞のまま30歳を迎えると魔法使いになれるという事実があるのはご存知ですか?

世界的な魔法学園の映画では変身魔法の効果が弱り、シリーズ後半ではだんだん役者の顔が本来の年齢に近づいている事でこの説は証明することができますね。

日本では女性は年齢に関係なく魔法使いになれることは毎週日曜日に証明されていますので、イギリスの魔法学園に通う彼女達は見た目通りの年齢です。安心してください。


さて、日本のweb小説では「婚約破棄」が一つのテンプレとして知られています。


今日はこの超高難易度調理食材について紹介していきましょう。


「婚約破棄」というテンプレとは何なのか?


このテンプレは次の順番で構成されています。


1.舞台は基本的に異世界ファンタジーである。

2.主な登場人物は、王族や貴族のような高い地位を持つ男性、その男性の婚約者(主人公)、そして男性の浮気相手、主人公の新しいパートナーの4人で構成されます。

3.主人公の女性は婚約者に対して献身的であるが、婚約者の男性はそれに理解を示さず、浮気相手に夢中になります。

4.婚約者が高い地位にあるため、その相手である主人公もふさわしい地位にあります。

5.男性は自分の社会的地位を守るため、学校の卒業パーティーなどの大勢の前で主人公の罪(多くは冤罪)を公表し、大声で婚約破棄を告げます。場合によってはそのまま主人公に国外追放まで宣言します。

  その行為が社会的地位を守る事に繋がると考えているのは、王子とその浮気相手だけであること。あるいは王子の友人たちも含む場合があります。

6.主人公である女性は失意、または婚約者に対して失望し、その場を去ります。

7.主人公は新たな出会いで新しい男性と出会います。その男性は昔から主人公の事が好きな場合が多いです。

8.今まで主人公の見えない支援によりその地位を守られてきた王子は、主人公の加護を失い不幸になるか、かつての栄光を取り戻そうと主人公に戻ってこいという場合があります。

9.主人公は元婚約者にこう答えます。「もう遅い」と。



前回のパーティー追放に近いロジックがあることが見て取れますね。

そして課題も見つかったと思います。

このテンプレの課題もまた、パーティー追放と同じです。つまりは低IQです。


パーティー追放よりも難しいのは、絶対にどこかに低IQが居る事です。

何故なら「社会的地位のある人間が大勢の前で婚約者を侮辱し、婚約破棄を宣言する」というこのロジックそのものが低IQだからです。


この事実から目をそらせば、このテンプレを利用したweb小説は悲惨な最後を迎えるでしょう。

ストーリーではなく、読者の評価という意味で。


私の人生におけるテーマの一つは「都合の悪い事実を認める」ことです。無視しないことです。

そうすることで、正しく問題を認識し、解決策を考えることができるのです。

もちろんこの場における「都合の悪い事実」は「どこかで低IQが必ず発生すること」になります。


「誰が、あるいはどこが低IQなのか」「それを読者が認め構成にするか、あるいは気付かれないようにするか」。


そして、小説の目的が低IQ回避のみになっていないか、です。



テンプレの低IQをもう一度見てみましょう。

当然王子は低IQですが、浮気相手も相当に低IQなことがわかります。

婚約者のいる王子に近づき、時には主人公の罪を捏造し、破談させてしまうのです。


日本のお菓子には「ハッピーパウダー」と呼ばれる合法の麻薬が混入されていることは日本人全員が知っています。

きっと彼女は毎日の食事にハッピーパウダーをフリカケかスパイスのように塗して食べているのでしょう。


先にこの浮気相手の低IQを動かしてみましょう。


彼女が低IQではない場合、この浮気行為は目的があって行っている合理的な行為である必要があります。

彼女は優秀であり、他者からの好悪のコントロールが上手で、かつ王子やその護衛から好意を得られ、後の社交界で批判されても構わない存在。


つまり魅了魔法を使える敵国のスパイか結婚詐欺師ですね。


この手法は珍しいものではなく、むしろメジャーなものです。

よく見かけます。


日本ではゴキブリを1匹みたら100匹いると思え。という言葉があります。


婚約破棄を宣言する王子が100人居たら、その浮気相手のうち10人くらいは敵国のスパイです。

異世界にはFBIもCIAもいません。ご安心ください。アメリカには居ます。イギリスにはMI6が居ますし、ロシアにもKGBが居ます。

日本にはニンジャが居ます。フランスとイタリアが心配です。ですがフランスにはFA-MASがあるしイタリアにはベレッタがあるから大丈夫です、多分。

私はM-93Rは最も素晴らしい作品だと信じています。


この浮気相手=敵国のスパイ(またはテロリスト)の作品ははっきり言って実際にかなり多いです。

多いので、多少一貫性や合理性があっても飽きられてしまいます。

007は1人だからかっこいいスパイなのです。978番目の男までが活躍する映画は面白いでしょうか?

978という数字に特に意味はありません。


さて、ではこんな場合はどうするのか。


1.低IQではなく、低IQになってしまった。

つまり、誰も悪くない。あるいはちょっぴり悪い。という作り方です。

古代中国では「王が女神像に愛の告白をしたところ、女神が怒って悪女を送り国を亡ぼす」という有名な話があります。封神演義というストーリーです。

これを少し借りて見ましょう。


だれかが、女神に対して罪を犯した。

内容は何でもいいです。女神の石像に婚約者がいかに素晴らしい女性であるかや、どれほど愛しているかを語ったら、実はキャリアウーマンを気取っていたら生涯独身だった女神が怒ったとかでもいいです。


そして、「自分の好きな相手が変わってしまう呪い」が複数人にかかってしまう。ベクトルの強さはそのままに、方向が変わってしまう。

呪いを受けたものは「自分の愛こそが正しい」と思っている。全ての困難は「真実の愛に対する試練」だと思ってしまう。

呪いを受けていないものは、それを見て「頭がおかしくなった」と感じる。


このままでは物語は破滅に向かい進むだけです。


ですので、王子の心の奥底には「本当の真実の愛」が残っていることにしましょう。

愛しているはずの浮気相手と一緒にいても、何かが足りない。こんなにも「ずっと昔から愛しているのに」。

自分の周りを歩き回っていた目障りな女に叫んだ罵声が、胸に痛みを与える。なぜ俺は傷ついている?あんな嫌な女に罵声を浴びせただけで。


何かがおかしい。


何かが足りない。


呪いによる偽物の愛の霧のなかで、王子は胸の奥の僅かな痛みだけを道しるべに、気づけば追放した女を追って城を出ていく。


国を離れるほど、呪いは薄まり、本来の愛を取り戻していく。

何故俺は愛する女に、あんなにひどいことを言ってしまったのか。

俺の痛みより、彼女の心の痛みのほうがずっと大きい。


探せ、探せ、探せ、愛する人を。


そうして旅路の先で、もう一度愛を証明することができたら、面白いとは思いませんか?


この物語には問題があります。


本気で作りすぎてフルコースのディナーになってしまっていることです。

このストーリーだと映画の原作みたいになってしまいます。多分主役は若い時のレオナルド・ディカプリオです。



婚約破棄というのは、ジャンクフードでなければならないのです。


テンプレとは何かを思い出してください。

テンプレとは暗黙のルールや共通認識により、素早く本題に入ることを目的とした手法です。

つまり、紙袋に入ったまま食べられることが重要なのです。ナイフとフォークを用意させてはいけません。

そしてジャンクフードは分厚い紙袋に包まれ、テープでぐるぐる巻きにされ、ケースに入っていてはいけないのです。


つまり共有された前提を使い、読者がメインストーリーに到達するまでの手順を減らすという作戦が失敗してしまってはいけません。



では次の手法はどうでしょう?


「王子の行動は全て演技だった」「誰も彼も騙すつもりだった」


彼の国は来月にも攻め込まれ、無残にも滅びるだろうと王子は気づきました。

歴史だけは長く、長い平和で腐敗した国の上層部はそのことに気付かないか、目をそらしています。


「たとえ嫌われてもいい、一緒に断頭台で死ぬのではなく、彼女だけでも異国の地で生きて欲しい」

「嫌われなければならない、彼女が別の誰かと幸せになるために」

「気づかれてはいけない、自分が戦争になる事を予見していることも、危機感を抱いていることも。婚約者一人だけを助けようとしていることも。誰にも気づかれてはいけない」


こうすると、王子は高度な判断での立ち回りを要求されるクレバーな立ち位置であり、また自らの国を見捨てるほど自国に対して絶望している姿を書くことができます。

そしてそれらの要素は「国そのものが腐敗している」という要素を使って短くまとめる事が出来ます。シーンの繋ぎ合わせにより圧縮が可能です。


周りの有人は知っていて助けてくれるのか、騙す対象なのか。それだけを書けばいい。


これは低IQの規模を逆に広げる事で、特定の個人やそれを許してしまう制度や近しい人間の低IQを防ぐことができます。

低IQの問題は「周りの人間はまともなのに、ごく一部の人間が低IQだから違和感が発生します。

逆に全員低IQにして問題をすり替えてしまえばいいのですね。


この例の問題は、「この程度であれば、既に書いている人が居る」ということです。

つまりこの手法で描かれた作品は、多くの婚約破棄のテンプレを使用した作品の中に埋没してしまうでしょう。


婚約破棄というテンプレは難しいのです。

テンプレに対して挑んだ人が沢山居る。という点もまた、この難易度の一つだからです。


あなたはこの高難易度調理食材を、どのように調理しますか?


[==> 調理チャレンジに参加する]


(次回予告/大衆Web小説食材:悪役令嬢)




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