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Live Forever  作者: 二駆付アルケミスト
第一章漂流篇

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9/9

第八話「Eye to Eye」

昔に見た、実家のアルバムに数枚残っていた父さんと思われる写真は、

どれもピントがぼやけていて、輪郭さえはっきりしないものばかりだった。


俺が生まれる前に、亡くなっていた父さん。

残された数枚の写真と、

母さんから聞かされた「昔、音楽をやっていたのよ」という情報だけ。

俺が知る『父親』は、

いつも少しピントのズレた、遠い過去の幻のような存在だった。

だから俺は物心ついた時から、

自分の父親がどんな顔をして笑うのか、

どんな話し方なのか、

どんな人で、どんな暮らしをしていたのか、本当の意味では知らなかった。


1995年の京都。

六畳一間のアパートに差し込む、朝日。

生まれて初めて、美琴さん……若い頃の母さんと、

父さんと、俺の三人でご飯を食べた、その翌朝だった。


目を覚ますと、

横の布団で寿が、無防備な寝顔で静かに息を立てていた。


ぼやけてなんかいない。

若くハリのある肌、少し伸びた前髪、短く整った眉の形、

そして息を吸い込むたびに上下する胸。

幻なんかじゃなかった。

確かにこの時代で生きて、存在している。

初めて通じたんだ。言葉でなく、心で、父さんを理解できた。


ちゃぶ台の上には、一枚のメモ用紙が置かれていた。

母さんの、少し丸っこい手書きの文字。


『朝ごはんを用意しておいたわ。

私は帰るから、二人でちゃんと食べて授業に出なさいよ!』


目をこすりながら起きてきた父さんは、

あぐらをかいてその手紙を見つめた。

その横で俺は寿の横顔を静かに見ていた。

嬉しかったのだろうか。

それとも照れ隠しだろうか。

ぶっきらぼうに手紙を二つ折りにしてポケットに突っ込んだその瞬間、

父さんの横顔が少しだけ、優しく綻んでいた。


——ああ、こんな風に笑うんだ。


視界が不意に滲んだ。

胸の奥から込み上げてくる熱い塊を、俺は必死に喉の奥に飲み込んだ。

二人で並んで、冷めかけの味噌汁と焼き魚を食べる。

2026年になっても絶対に忘れることのないであろう、

人生で一番贅沢な朝食の味だった。


箸を進めながら、ふと、俺の心の中である疑問がよぎった。


(なんで、父さんは俺が生まれる前に死ななきゃいけなかったんだ……?)


こんなに笑って、怒って、ベースを弾いて、

必死に生きているこの人が。

どんな運命が、父さんを死に追いやったのか。

病気なのか、事故なのか、それとも——


(俺は絶対に、その原因を突き止める。そして、絶対にそれを止めてやる)


未来からやってきた俺にしかできないこと。

そのためには、ただの居候で終わるわけにはいかない。

父さんのことをもっと知るためにも、

父さんが何よりも大切にしている音楽のそばにいたい。

そう、俺は決意した。

ここにやってきた『意味』を見つけるために。


夕方になり、俺と、寿たちはライブハウスに一緒に行った。

寿たちは新曲作りとその合わせ、

オーディションに向けての練習をするらしい。

入り口のドアの前に立つと、

何やらセッションしている音が聞こえてきた。


「ん?誰やろオレらより先に練習してんの」

「スケジュール表には載ってなかったけどね」


寿と泰示がスケジュール表を見ながら会話をしていた。

今日は、誰かが演奏しているらしい。


けど、そんなことよりも、

俺は今日、豪さんに頼みたいことがあったから、

バイトのシフトより少し早めに来たんだ!


入ってすぐ、俺は豪さんの所に行ってこう言った。


「豪さん!俺に、ライブハウスのPA(音響)を勉強させてください!」

「……PAぇ?」

「はい。将来、ライブの音を作る仕事に興味があって。

できれば、ここで勉強させてもらえないかと思いまして。」


豪さんは少し驚いたような顔をした。


「経験は?」

「ありません」

「機材の名前は分かる?」

「……少しだけ」

「ミキサーは触ったことある?」

「ないです」

「なるほどねえ」


豪さんは腕を組んだ。

まずい。

完全に勢いだけで来たことがばれている。


「響くん」

「はい」

「音響って、ただ音を大きくする仕事じゃないのよ」


豪さんはステージを指さした。


「歌もギターもベースもドラムも、それぞれがちゃんと聞こえるようにする。

演奏する人が気持ちよく音を出せて、

お客さんにもいい音が届くようにする。それが仕事」


「……はい」

「だから、覚えることは山ほどあるわよ」


俺はうなずいた。


「それでも、やりたいです」


豪さんはしばらく黙っていた。

そして、ふっと笑った。


「いいわ、響クン、いい目してるし、仕事の合間に教えてあげるわ」

「ありがとうございます!」

「ちょうど、練習している人たちがいるから、

これからあたしがすることを見ておいてね」

「はい!」


その時だった。


——ギュアアアンッ!


鋭いギターの音が、店内を切り裂いた。

思わずよろけた。

ステージの上には、4人の男女がいた。

ギターを持った男性が2人、ベースを抱えた女性が1人。

そして、ドラムセットの向こうに座る男性が1人。

まだ本格的な演奏は始まっていないらしい。

ギターの1人がアンプを調整しながら、もう一人に何か話しかけていた。


「旭春(あきはる)! お前ぇ、また音でかくしたじゃろ!」

「兄さん、まだ確認しとるだけじゃ」

「確認でそんな音出すなや!」

「大丈夫。ちゃんと合わせるけえ」

「お前の『大丈夫』は信用できんのんよ!」


ドラムの男が腹を抱えて笑った。


「ハハハ! また始まったな!」


ベースの女性は、肩にかけたヘッドホンを揺らしながら、

呆れたように2人を見ている。


「おーい、浩康(ひろやす)!」


寿がステージへ向かって手を振った。

ギターを抱えた男が顔を上げる。


「おっ、寿やん!」


男はニヤリと笑った。


「なんや、Lanternの天才ベーシスト様が、わざわざ俺らの偵察に来たんか?」

「誰が天才や。お前らがまた好き勝手やって、豪さんに怒られてへんか見に来たんや」

「うるさいわ。俺らはちゃんとやっとるで」

「へえ。旭春がおるのに?」


寿がそう言った瞬間、ステージの奥でギターを調整していた男が顔を上げた。


「……寿さん。それ、どういう意味ですか?」

「そのまんまの意味や。お前、こないだのライブでもソロ長すぎたやろ」

「あれは曲の流れを考えて弾いてたんです」

「流れっていうか、完全にお前の気分やろ」

「でも、盛り上がってましたよね?」


旭春は涼しい顔で言い返した。


「ほれみい!」


浩康がすかさず口を挟んだ。


「こいつ、いつもこうなんよ! 俺が歌い出そうとしとるのに、全然ソロ終わらん!」

「兄さんが入ってくればよかったが」

「入れるか! お前、気持ちよさそうな顔しながら弾いとったが!」

「そんな顔しとらん」

「しとったわ!」


ドラムセットの向こうから、豪快な笑い声が上がった。


「ハハハ! あれは俺も終わんないと思ったよ!」

「元信(もとのぶ)! お前も止(と)めぇ!」

「いやー、面白かったから!」


どうやら、これが彼らの日常らしい。

寿は呆れたように笑っていたが、すぐに浩康へ視線を戻した。


「まあ、お前らのライブが盛り上がるのは認めるけど。たまには曲どおりにやったら?」

「お前に言われたくねえよ」


浩康が即座に言い返した。


「Lanternって、演奏はめちゃくちゃええけど、難しいことばっかやっとるやん」

「は?」

「いや、曲はええで。そこは認める。でも、お前ら六人で気持ちよくなりすぎや」

「なんや、それ」

「こないだのライブ、途中から客がポカーンとしとったで、あとお前、途中ミスったやろ」

「なんで知ってん、ってかお前ら見てたんか」

「当たり前や。お前らのライブやぞ」


浩康は何でもないことのように答えた。

その言葉に、寿は一瞬だけ黙った。

しかし、すぐに口元を緩める。


「じゃあ、お前らも人のこと言えへんな」

「何が?」


「盛り上げりゃいいってもんちゃうやろ。こないだなんか、

旭春のギターが走りすぎて、元信が必死に合わせてたやん」

「おいおい、あれは俺が合わせてやってたんだぞ!」


元信が笑いながら反論した。


「はいはい。そういうことにしといてやるよ」

「ハハハ! 適当に返しすぎだよ!」


寿の返しに元信が反応したその時だった。


「……相変わらず騒がしいな。おかげさまで目が覚めたわ、お前ら」


隣にいた結弦が、あくびをしながら呆れたように口を開いた。

浩康はそこで初めて、寿の後ろに並ぶLanternの面々へ目を向けた。


「おっ、なんや! 今日は全員集合か!」

「最初からおったでー」


日向が苦笑する。


「寿とお前らがうるさすぎて、入る隙なかっただけや」

「そうや。こっちはずっと聞いてたで?」


健司が肩をすくめた。


「すまんな!」


浩康は笑いながら謝った。


「ちょうどええわ。さっき、寿にお前らのライブの話しとったで」

「どうせろくなこと言ってないんやろ」


結弦がジャケットのポケットに手を突っ込みながら言う。


「失礼やな。褒めてたんやで?」

「ふうん。何て?」

「演奏は上手いけど、上手すぎて客が着いてこれてへんって」

「……それ、皮肉っていうんや。日本語学び直せ」


結弦の眠そうな顔がガラリと変わった。

浩康は悪びれもせず笑った。


「いやいや、曲はほんまにええよ。

特にお前の歌詞。こないだの新曲、なんやっけ?あれはよかったで」

「『Soyuz』や……そりゃどうも」

「でもなあ、もうちょい客を煽った方がええんちゃう?」

「お前らみたいに、曲の途中で叫びまくればええんか?」

「盛り上がったやん!」

「盛り上がればええもんちゃうやろ、

途中で息切れしてたし、タバコ吸ってるからそうなるんちゃうん?」


浩康の笑顔がピタッと止まった。


「……それは今、関係ないやろ」

「関係大ありや。歌うんやったらやめるか、減らせや」

「うっさいな! ちゃんと歌っとるわ!」

「そう?まあ好きにすればええで」


結弦は涼しい顔で言った。


(……なんだろう。この2人、喧嘩してるように見えるけど、

互いにアドバイスしてるように見える。)


響がそう考えてた横で、また別の2人が話していた。


「そういえば、日向さん」


今度は旭春が口を開いた。


「こないだのライブ、見ましたよ」

「ん? ああ、どうやった?」

「ギター、よかったです。特に二曲目のカッティング、あの曲なんですか?」

「『Sonne(ゾンネ)』っていう曲やな。分かってるやん」


日向が少し嬉しそうに笑う。

しかし、旭春は続けた。


「ただ、もう少しアドリブ入れてもよくないですか?」


「……ん?」


「せっかく弾けるのに。もっと自由に弾いても良いと思います」


「いや、あそこは曲の流れを崩したくなかったし」


「でも、ライブってアドリブがある方が面白くないですか?」


「そらそうやけど、でもお前のは、

アドリブというより好き勝手弾いてるだけっぽいで」


「好き勝手じゃないです。ちゃんと曲に合わせてます」


「へぇ?その割には、浩康が歌い出せなくなってたらしいけど?」


「ギクリ」


「図星やな。ハハ!やっぱそうやん!」


「……それは兄さんが入るタイミングを逃しただけです」


「おい旭春! 何で俺のせいにしとんじゃ!」


浩康がすかさず叫んだ。


「だって兄さん、こっち見てなかったが」

「お前が見てなかっただけじゃ!」

「やっぱり」


日向が笑った。


「そういうとこやな」

「……日向さんまで」


旭春は四面楚歌になって少しだけ悔しそうだった。

その横で、元信が駿を見つけた。


「おおっ! 駿じゃないか!」

「……よお」

「久しぶり! 最近どうだ!」

「いつも通りや」

「相変わらずだなあ!」


元信は豪快に笑った。


「こないだのライブ見たぞ! お前のドラム、やっぱりすごいな!」


「……そりゃどうも」


「特にあの細かいフィル! あんなに正確に叩けるの、俺には無理だな!」


「謙遜しちゃって、出来るくせによ」


「いやいや、俺はああいうの苦手なんだよ!」


元信は笑いながら、自分の腕を叩いた。


「でもさ、駿。もっとパワー出してもいいんじゃないか?」


「……は?」


駿の表情が変わった。


「いや、こう、ドカーン! って感じで!」


「……脳筋が、音量だけがドラムちゃうで」


「それもそうだが! 迫力も大事だろ?」


「迫力って、お前はほんまに『力こそ正義』としか思ってなさそうやな」


「おっ、言うじゃないか!その通りだ!」


「え、ほんまにそう思ってたん?」


駿は困惑し、元信は嬉しそうに笑った。


「じゃあ今度、一緒に筋トレしようじゃないか!」

「……なんでそうなんねん」

「もっとパワーが出るぞ!」

「いらん」

「ハハ!即答だな!」


駿はため息をついた。


「お前のドラム、嫌いやないで。でも、

あんなに叩いたら曲の細かいとこが聞こえなくなんで」


「えー? でも客は盛り上がるぞ?」


「盛り上がれば何でもいいわけちゃうで、お前らほんとそれしか思ってないな」


「お前、ほんと細かいな!」


「お前が大ざっぱすぎんねん」


2人は顔を見合わせた。

一瞬、空気が張り詰めた。

……と思ったら、元信がまた笑い出した。


「ハハハ! やっぱり駿と話すと面白いな!」

「……こっちは疲れるわ」


そう言いながら、駿も少しだけ笑っていた。


「まあ、元信のドラムは確かに迫力あるよ」


泰示が口を挟んだ。


「おっ、泰示! 分かってくれるか!」

「ただ、あの音圧だと鍵盤の音が埋もれそうやけどね」

「えっ、そうか?」

「ボクやったらちょっと困るかな」


すると、旭春が振り返った。


「でも泰示さん、Lanternのキーボードも結構前に出てますよね」

「そう?」

「この前の曲、イントロからずいぶん複雑でしたし」

「そうかな?ボクはそんなつもりはなかったんやけど」

「良いと思いますけど、最初から音が多すぎないですか?」


泰示は笑顔のままだったが、少し悲しそうな面持ちをしていた。


「……そっか」

「もう少し引き算してもいいと思います」

「旭春くん。君のギターソロにも同じこと言えるんやない?」

「僕は必要な音しか弾いてませんよ」

「……必要な音、ね」


空気がどんどん悪くなってくる。

巻き込まれたくないから、

赤の他人になりきろうと考えていると、


「ちょっと待てえい!」


突然、健司が声を上げた。


「お前ら、ギターだのドラムだのキーボードだのって、

DJの話は?俺のことも少しは思い出せやい!」


浩康が振り返った。


「ああ、お前もおったんか」

「最初からおるわ!目ん玉かっぽじるぞ!」

「わりわり!」

「心のこもってない謝罪はいりまへん!」


健司はフンと腕を組んだ。

そしてすぐ、健司は自分のことを聞いた。


「俺のスクラッチ、こないだのライブで結構いい感じやったと思うけど?」

「はい、よかったと思いますよ」


旭春が答えた。


「ただ、入れるところがちょっと意外でしたね」


「意外って?」


「いや、あそこで入るとは思わなかったので」


「それが狙いなんや!」


「なるほど」


「その『なるほど』はなんや!知性出してますって感じ出すな!」


「べ、別に出してるわけじゃないです!」


浩康が腹を抱えて笑った。


「ははっ! お前ら、相変わらずやな!」

「なにわろてんねん!」

「そうじゃ!兄さんが口出すとこちゃうわ!」


健司と旭春が即座に言い返す。


「ていうか、浩康。

お前らの曲にもDJ入れたらもっと面白くなると思うで?」


「いや、俺ら4人で十分やな」


「……は?」


「いや、別にDJがおえんって言うてへんで?

でも、俺らはこの4人でやる音楽が大好きじゃけえ、これでええんよ」


「へえ。じゃあ今度、俺のスクラッチでお前らのギター食ってやんよ」


「おお、言うやんけ!」


浩康がニヤリと笑った。


「やれるもんならやってみい!」

「上等や!」


……もう、四方八方から会話があって、ごちゃごちゃしてきた。

そのときだった。


「……ねえ、寿」


女性の声が割って入ってきた。

ステージ脇でベースを抱えていた女性だ。

肩にはヘッドホン。

少し気だるそうな目つき。

彼女は噛んでいたガムを膨らませながら話していていた。


「この前の新曲、ベースのフレーズは良かったけど、

二番の入り、ちょっともたついてなかった?」

「……うっ」


寿の顔が引きつった。


「バレた?」


「そりゃ、音楽やってたら分かるでしょ」


「いや、あれはちょっと考えすぎたっていうか……」


「考える前に弾けば?感じなよ」


「簡単に言うなや、依織(いおり)」


「簡単じゃないから練習するんでしょ」


「そうやな」


容赦がない。

しかし、その言葉には嫌味がなかった。

寿も怒らず、真摯に受け止めていた。


「じゃあ次は完璧に弾いてやるよ」

「期待してる」

「けど、依織もこの前、スラップで張り切りすぎてなかった?」


依織の眉が動いた。


「……そう?」


「いや、上手いんやけどな、曲よりベースが目立ってたっていうか」


「あの曲はそういうものなの」


「そうなん?なら良いけど」


「……寿」


「ん?」


「次のライブ、覚悟しなさい」


「おう、望むところや」


2人は笑った。

表では笑っているのだが、

その裏では火花が散っているように見えた。


「お前ら、ほんま仲ええなあ!」


浩康が笑った。


「どこがや!」


寿が即座に言い返す。


「だって、そんな細かいとこまで互いの演奏覚えとるんやろ?」

「それは……」


寿が言葉に詰まった。

依織も、少しだけ視線を逸らした。


「……別に。気になるだけ」

「ほらな!」


浩康が笑う。


「結局、お前らみんな俺らのこと大好きなんやろ!」

「あんま調子乗んなよ」


結弦が即座に返した。


「こっちの台詞や!」


日向も笑う。


「ボクらのライブ、毎回見に来てるくせに」


泰示が穏やかに付け加えた。


「お前らだって見に来るやんか!」


浩康が言い返す。


「そりゃ、次に勝つためだよ」


寿がニヤリと笑った。


「……へぇ?」


浩康の目つきが変わった。


「言うたな?」

「言ったよ」

「じゃあ今度のオーディションで決着つけようや」

「望むところや」

「客を置いてくなよ、Lantern(ランタン)」

「お前らこそ、勢いだけで誤魔化すなよ、FRONT(フロント) LINE(ライン)」


……ん?今、寿があの4人のことを『FRONT LINE』って言ったか?

そんな、まさか2026年でも活動を続けている伝説のバンド

『FRONT LINE』と寿たちが知り合い?


「……嘘だろ」


思わず声が漏れた。


「ん?」


浩康がこちらを見た。


「そういや、そっちの兄ちゃん誰や?」

「ああ、こいつ響」


寿が答えた。


「今、俺んとこに泊まってんねん」

「へえ。響ね」


浩康が笑った。


「俺、門脇浩康(かどわきひろやす)。よろしく!」

「あ……鳴海響です。よろしくお願いします」

「おう!」


旭春が軽く頭を下げた。


「門脇旭春(かどわきあきはる)です。よろしくお願いします」


依織はちらりとこちらを見た。


「松本依織(まつもといおり)。よろしく」


元信はスティックを持ったまま、大きく手を振った。


「上杉元信(うえすぎもとのぶ)だ! よろしく!響!」


4人の名前。

間違いない。

本物だ。

2026年の歴史では、『FRONT LINE』は伝説になった。

けれど、『Lantern』の名前は残っていない。

未来まで鳴り続けた音楽と、未来に届かなかった音楽。

真逆なその二つが、少なくともこの時代では、

当たり前のように競い合っていた。

俺は胸の奥が熱くなるのを感じた。

そして、俺は拳をグッと握った。


——絶対に、『Lantern』をここで終わらせない。

ステージの上で、浩康がギターを鳴らした。


「よし! そろそろ始めようぜ!」


俺は、その光景から目を離せなかった。

1995年の京都で、俺は伝説になる前の『FRONT LINE』と出会った。

BACKSTAGE TALK #01

今回のゲスト:門脇浩康(FRONT LINE)


本編では語りきれない登場人物たちの素顔に迫る新企画『BACKSTAGE TALK』!


記念すべき第1回のゲストは、FRONT LINEのギター&ボーカル、門脇浩康さんです!


——

Q1. まずは自己紹介をお願いします!


浩康「どうも! FRONT LINEでギターとボーカルやっとる門脇浩康です!

作詞も担当しとるで。よろしく!」


インタビュアー「元気ですね!」


浩康「そらそうやろ! 初めてのインタビューやで? テンション上げていかな!」


インタビュアー「ちなみに、こういう取材は慣れてますか?」


浩康「いや、全然。せやけど喋るんは得意やからな!」


——

Q2. 音楽を始めたきっかけは?


浩康「最初は単純に、ギター弾けたらカッコええなって思ったんよ」


インタビュアー「意外と普通の理由ですね」


浩康「失礼やな! もっと壮大な理由を期待しとったんか?」


インタビュアー「例えば、運命的な出会いとか……」


浩康「そんなん旭春に聞いてくれ。あいつの方がそういう話好きそうやし」


インタビュアー「では、今もギターを続けている理由は?」


浩康「そら、楽しいからやろ。ステージ立って、

客が俺らの曲で盛り上がってくれたら、もう最高やん!」


——

Q3. Lanternについてどう思いますか?


浩康「めちゃくちゃええバンドやと思うで。あいつら、ほんま演奏上手いしな」


インタビュアー「特に意識しているメンバーは?」


浩康「結弦やな。同じギターボーカルやし、あいつの歌には負けたくないわ。

あと寿のベースもな。あいつ、たまにとんでもないフレーズ弾くから腹立つねん」


インタビュアー「かなり評価しているんですね」


浩康「そらそーよ。認めとらんかったらライバルなんて呼ばんやろ?」


インタビュアー「では、Lanternに負けていないところは?」


浩康「ライブの盛り上げ方やな! そこだけは絶対に負けへん!」


——

Q4. 弟の旭春さんについて一言お願いします!


浩康「あいつ? ギターの腕はほんまにすごいと思うで。

曲作る才能もあるし、バンドのこともよう考えとる」


インタビュアー「おお、素直に褒めるんですね!」


浩康「まあ、俺の弟やからな!」


インタビュアー「では、直してほしいところは?」


浩康「ギターソロが長い!」


インタビュアー「即答ですね」


浩康「あと、いちいち細かい! 俺がちょっと予定忘れただけでグチグチ言うし!」


インタビュアー「……予定を忘れる方が悪いのでは?」


浩康「そこは兄貴の威厳っちゅうもんがあるやろ!」


——

Q5. 今回が初登場でしたが、いかがでしたか?


浩康「いや、まず言わせてくれ。八話って遅ない!?」


インタビュアー「物語の構成上、仕方がないんです」


浩康「しかも初登場から弟と喧嘩しとるし! もっとカッコええ登場の仕方あったやろ!」


インタビュアー「でも、読者の皆さんには兄弟の仲の良さが伝わったと思いますよ」


浩康「どこがやねん!」


インタビュアー「ちなみに、今後も出番はありますので」


浩康「ほんまか!? それはええな!」


インタビュアー「ただし、活躍するかどうかは作者次第です」


浩康「……作者呼んでこい」


——

Q6. 最後に、弟の旭春さんから一言いただいています!


旭春「兄さん、インタビューで余計なこと喋ってないですよね?」


浩康「おっ、旭春! ちょうどええところに来たな!」


旭春「……何を話したんですか?」


浩康「お前のギターソロが長いって話」


旭春「……兄さんのMCも十分長いと思いますけど」


浩康「なんやと!?」


旭春「この前なんか、MCが長すぎて最後の曲を急いで演奏したじゃろ」


浩康「それはお前がソロ伸ばしたけぇじゃろうが!」


旭春「兄さんが喋りすぎたけぇじゃ!」


インタビュアー「……あの、お二人とも?」


浩康「なんや!」


旭春「なんですか?」


インタビュアー「そろそろ文字数が……」


浩康「文字数?」


旭春「……ああ、そういうことですか」


浩康「なんや、俺らの出番もう終わりなんか?」


インタビュアー「はい。これ以上続けると後書きが本編になってしまうので」


浩康「八話も待たせといて、もう終わりかい!!」


旭春「兄さん、次回は僕の番らしいですよ」


浩康「……は?」


旭春「じゃあ、お先に失礼します」


浩康「ちょっ、待て! 俺まだ喋り足りんのじゃけど!!」


——To Be Continued——

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