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86.俺と、お前(前編) 〇★

83話「お前と、俺(前編)」のイズミール視点

 暗く、深い水の底にいる。


 目を閉じていても、ここが水底だってことは分かる。


 だって、俺は水で、その水がそのまま俺だから。


 でも、この水は少し違う。


 もっと深くて、もっと広い。

 俺が広がってるのか、薄まってるのかも分からないまま、意識だけが溶けていく。


 だから、もう何も考えない方が楽だった。


 俺は何も見ない。何も聞かない。何も考えない。


 そう決めてから、どれくらい経ったのかも分からない。


 分からなくていいや、と思っていた。


 ぼっちの方が楽だ。

 そういうことにしておけば済む。

 だから、誰とも関わらないで済むなら、その方がいい。


 ゆっくり、どこかへ沈んでいく。


 このままこうしている間に、全部片付いていればいいのに。

 それで、ふと気がついたら元の日常が戻ってるんだ。


 瞼の裏に滲む朝日。

 布団の重みとシーツの感触。

 エアコンの風。

 遠くを走る車の音。

 部屋干しのワイシャツの、生乾きの匂い。


 ああ、でも寝る前に何か観て、積んだままの何かも一つくらい開けなきゃ――


 ……何だっけ。


 匂いって、どんなだっけ。

 何をやり残してたんだったっけ。


 もう、どうだっていいか――


 そんなふうに思い始めていた、その時だった。


 どくん、と、何かが鳴った。


 無視する。


(うるさいな。ほっといてくれ)


 もう一度、鳴る。

 どくん。どくん。どくん。


(しつこい)


 心臓みたいな音だ。俺にそんなもんがあるのかは知らないけど、とにかくうるさい。


 その音に混じって、どこか遠くで水が揺れた。

 柔らかいような、けれど強引な感触が、沈んだままの意識を撫でる。


(もういい! もうたくさんだ!)


 わざわざ引っ張り出そうとすんな。

 今さら俺が出ていって何になる。

 どうせまた、ロクなことにならないんだろ。


 でも、その揺れは消えなかった。


 鼓動みたいな音が、ずっと響いている。


 それを聞いていると、次第に意識がはっきりしてくる。


 嫌だ。嫌だ。起きたくない。


 起きたら、どうせまた――


※※※※※


 気がつくと、顔に自分の掌の感触があった。

 熱くも冷たくもない、ほっそりした女の手。

 指の節の細さまで、自分で形を決めた覚えがある。だから分かる。


 本当の俺じゃない。

 けど、今ここで動いているのは、間違いなく俺の身体だ。


挿絵(By みてみん)


 指の隙間から白い光が見える。

 眩しいってほどじゃないけど、霧みたいにぼやけてもいない。


 そして、背中越しに声が聞こえる。

 切羽詰まった、必死な感じがした。


「イズミール!」


 呼ばれると同時に肩を掴まれた。


 大きくて硬くて、熱い手だ。

 力強い指が肌に食い込んで、そのまま身体ごと振り向かされる。


 怖い、とか、やめろ、とか、思う暇もなかった。

 顔を覆った手は剥がれ、バランスを取ろうと足を半歩、一歩、踏み出し、踏みとどまる。


 たたらを踏んで顔を上げると、すぐ目の前にあいつがいた。


 辺り一面が白い。

 空も地面も分からない。上も下も曖昧で、ただ白い。

 そのくせ足元だけは、水を張ったみたいに頼りなく揺れている。

 何だよここ。


 でも、白いだけじゃない。

 金色の髪、青い瞳、黒っぽい地味な服に水色のタスキ。


 ……そう、いた。


 俺以外の奴が、普通にいた。


 いや待て。死んだらこんな幻覚見んの? 何でお前がいるんだよ。


「な、なんで、ここに木こり野郎が!?」


挿絵(By みてみん)


 木こり野郎が、こっちを見ていた。


 いつもの金髪碧眼、整いすぎた顔。

 なんか真面目くさくて、こっちがどれだけ取り繕っても見逃してくれなさそうな目つき。


 何でだよ。何でよりによってお前なんだよ。

 一番面倒くさいやつが、わざわざ出て来んなよ。


「は? いや、待てよ。待て待て。なんだ……これ、俺、何がどうなってる……?」


 肩を掴む手から力が抜けているのに気付いて、後退る。追いかけてはこない。

 言葉にしながら、自分の中身がしっちゃかめっちゃかになってるのが分かった。


 記憶みたいなものはある。

 でも最後の方がぐちゃぐちゃだ。


 ――ちび。水溜まり。

 ――木こり野郎。血。

 ――人間ども。矢。乱戦。

 ――俺の中のイカれ女ども。最悪。


 駄目だ。


 嫌だ。


 考えたくない。


 思い出したくない。


 木こり野郎がしきりに「落ち着け」とか「夢じゃない」とか話しかけてくる。


 しかも無駄に落ち着いた声でだ。そういうところが腹立つ。

 こっちは混乱してんのに、妙に落ち着いてやがる。

 言い聞かせるみたいな態度も言葉も癇に障る。


 ムカつくって気持ちだけに集中して、わっと襲ってくる嫌な記憶を追い出す。


「いやいやいや、待てって。

 だって、お前……、確か、矢とか、刺さってたはずじゃん」


 そうだよ、だって、目の前の木こり野郎には矢なんか刺さってない。


 ――だから、これは夢だ。


 あれもこれもみんな夢なんだ――誰が何と言おうとも。


「無いってことは、これが夢か、あれも夢だったか……。

 夢だったんなら……まぁ、その方が良いよな、うん……だって、ちびも……」


挿絵(By みてみん)


「ま、まぁ、良いけどさ、なんでお前が出てくるんだ。どんな悪夢だよ、ハハ」


 そこで、ようやく自分の身体が目に入った。


 黒い。


 髪が、服が、みんな黒い。


「……って、なんか俺、黒くなってんじゃん。うお、衣装もだ!? なんだこのカラバリ……」


 黒い髪を掴んで持ち上げる。

 さらり、と落ちる。

 見慣れないはずなのに、妙にしっくり来た。


 あの黒いのは、見ただけでぞわっとする。

 でも、黒そのものは俺にとって別に嫌な色じゃない。

 元の世界じゃ、黒髪なんて普通だった。俺自身の髪も、たぶんこんなだった。


 それでつい、ぼそっと漏らす。


「日本人的に黒髪ロングは正義なんだけど、泉の精霊的なコンセプトだとなぁ……」


 そうだ、黒髪ロングの美少女は正義。王道だ。

 でも泉っぽくはない。夜の海って感じだ。これはこれで悪くないが。


 自分で言ってて、何を冷静に品評してんだ俺は、と思う。

 でも、そうでもしないと、この夢が何か嫌な方向へ進んでいく気がした。


 だって、何故か木こり野郎がいる。

 真っ直ぐすぎる目。そんなにガン見すんな。

 こっちは陰キャなんだぞ。やたらとぐいぐい詰めてくんな。


 なら、せめてこっちが主導で動いてやる。


 夢くらい俺の思い通りになれよ。


 だから、つい、おどけたように言ってみた。


「おい、木こり野郎。折角いるんだから、なんか言え。俺の造形はどうよ、褒めろ」


 せっかく造ったんだ。どう見えるかくらい、聞いてみたくもなる。

 いや、でも貶されたら普通に凹む。

 こいつなら、たぶんそういう雑なことは言わない。


 だから、褒めろ。

 俺をいい気分にさせろ。


 ――俺に都合の良い夢だって思わせてくれ。


 すると木こり野郎は、少しだけ間を置いてから言った。


「……似合っている」


 心臓(?)が鳴った。いや、さっきから鳴ってるのか。

 とにかく何かがどこかで、どくんと跳ねた。


 だからさぁ、そういうのはやめろって言ったよな?

 言ってなかったか? わかんないけど、やめろ。 


 なのに、続けてくる。


「君のその色が、黒禍ではないなら……美しい、と思う」


 うっわ。

 何それ。

 目ばっか見てくんな。身体を見ろ。……いや、やっぱ見んな。

 なんだこれ。ヤバい。ほんとにダメだ。


 頭のどこかが真っ白になって、口が勝手に動く。


「うっわ、真顔で言うな! こっちがどう反応すりゃいいか分かんなくなるだろ!

 ……っていうか、コクカって何だよ。褒めてんのか微妙に分かんねぇ」


「褒めている」


 真正面から来るな。

 だからそういうとこなんだよ。


「大体さ、もっとこう……あるだろ、他にも言い方が。

 エロいとか、綺麗とか――……いや、無い。やっぱ無いわ。

 なんで、俺、こいつに褒められたがってんだ? やめやめ! 今の無し!」


 必死に打ち消しながら、自分で自分に引いた。

 褒めろって言ったの俺じゃん。

 なのに、本当に褒められたら焦るとか何だそれ、馬鹿か。


 違う。俺は造形を褒めろって言っただけだ。

 なのに、あいつの言い方は、まるでこの姿だけじゃなくて、俺を見ているみたいで――


 勘違いすんな、褒められたのは造形だ。フィギュアだ。俺じゃない。

 俺には褒められるような部分なんか何にもない。無しだ、無し。


 でも、馬鹿げたやり取りをしていたせいか、少しだけ肩の力が抜けた。


 会話なんて久しぶりすぎて、何をどんな順番で話せばいいか分からない。

 だけど、こんな拙いやり取りでも、会話が成立するってだけのことが、やけに胸に引っかかった。

 嬉しい、に近い何かだった。

 そう思ってしまったこと自体が、腹立たしかった。


 そのせいだ。


 そのせいで、次の言葉が来た時、流しきれなかった。


「イズミール、私は君に会いにここに来た」


 名前を呼ばれた瞬間、喉の奥が引っかかった。


 やめろ。


 その名前を、そんな当たり前みたいに使うな。

 会いに来た、とか言うな。


「逃げたまま終わらせないために、ここまで来た」


 そこで、ああ、だめだ、と思った。


 その言い方はだめだ。

 それを言われたら、夢じゃなくなる。


 ちびが地面に染み込んだことも、木こり野郎が血を流したことも。

 あの全部が、本当にあったことになってしまう。


 だから、焦って取り繕う。


「……ちょ、待て待て、待った」


 喉が乾く感覚はないはずなのに、喉だけが妙にひりついた。


「え? マジで? なぁ、あれ……マジで起こったことなのか?」


 木こり野郎は答えなかった。

 答えなくても分かった。


 ああ、やっぱり夢じゃないんだ。あれ全部。


「じゃあ、ちびが……死んで、お前が撃たれたのも……」


 そこで頭の中が一気にぐちゃぐちゃになった。


 いきなり喋り出して、勝手に動いて、勝手に懐いてきたあのちび。

 お子様そのもので、名前を付けてやるって言ったら妙にはしゃいで。

 助けを求めながら、地面に染み込んで、消えた――死んだ。


 木こり野郎が女の子を庇って撃たれた。

 肩と背中? 他にも刺さってなかったか? 大丈夫なのか?

 矢が刺さって大丈夫な場所なんかあるか。死ぬかもしれないっていうか死ぬ。


 死んだ。


 死ぬ。


 知ってるやつらが、俺の目の前で。


 そんなこと、普通はありえないだろ……あっちゃいけないんだ。

 そういう、ゆるい"普通"しか俺は知らないし、知りたくない。


 だから、何でか知らないけど、最初に出たのはこれだった。


「俺、死んだ!?」


 違うだろ馬鹿。


 ……でも本当に違うか?

 ちびが死んで、お前が撃たれて、それを見た俺がここにいる。

 だったら、俺までまとめて死んでた方がまだ話が通るだろ。


 だいたい、何だよここ。白いし、木こり野郎となんか喋れるし。

 死後の世界って言われた方がまだ納得できるだろこんなの。

 もうそれでいいじゃん。それじゃ駄目なのかよ。


「死んでいない。私も、君もだ」


 すぐ否定される。


「ミュルナも生きている」


 ミュルナって誰だよ。

 一瞬そう思ったけど、すぐ分かった。

 そうであってくれた方が救いがあるからだ。


「……ああ、ちびのことか。そっか、そっかぁ……はぁ、心配かけやがって」


 生きてる。あのちびがまだ生きてる。

 その一言だけで、膝の力が抜けた。


 そんなふうに安心してしまった自分に、少しだけ呆れる。そんなに気にしてたのかと自分に引く。

 だって、あのちびと一緒にいたのはほんの少しだけだ。

 ママとか言われても実感なんてない。まとわりついてくる子犬みたいなもんだ。


 だからって、あんな風にいなくなるなんてあんまりだ。救いがなさすぎる。

 生きてるって言われて安心くらいはする。ママだからじゃない。


 あれが現実だって飲み込むだけでも、こっちはいっぱいいっぱいだ。

 なのに、木こり野郎はさらに訳の分からないことを言い始めた。


 ここは俺の心の中だとか。

 金色の俺とか、銀色の俺とか。

 そいつらは俺から生まれたとか、話をしたとか。


 ――ちびと木こり野郎を傷つけられて、世界を沈めるとか言い出したあいつら。

 ――俺の中にいた、俺じゃない俺たち。


 違う。


 あんなのは認めちゃいけない。

 あれを認めたら、俺がとんでもないやらかしをしたことになる。


 あんなの、俺じゃない。

 俺の中から出てきたのだとしても、俺じゃない。

 そう言い張れなくなったら、もう終わりだ。


「金色の俺と銀色の俺? 知らねぇよそんなの!

 斧の話でもしてんのか? はぁ!? 沈んで、黄金に……?!」


 分からないふりをしながら、うずくまって、頭を抱えて叫ぶ。


 その時、自分から垂れた水が白い床に小さく滲んで、そこに影が映った。


 見たくないものが見えた。


 泡に包まれた舟に乗った女の子。

 その周りに、ちびが何故か三人。


 は? 増えてる。何でだよ。

 いや、そんなこと言ってる場合じゃねぇ。


「……えっ、あ、これ……えぇ……」


 森が沈む。

 人間どもが逃げ回る。

 人も、動物も、木も、地面も。

 何もかもが水に沈み、黄金になって止まる。


「こ、これ、今、起こってんのか!? 俺がやってんの!?」


 だめだろこれ。

 マジでやりやがったのか、あのイカれ女ども。

 こんなの、もう、取り返しがつかないじゃないか。


挿絵(By みてみん)


「うわああああ!!」


 思わず声が出た。

 だって、もう叫ぶしかない。


 やらかしたのがどいつだとしても、あの水は間違いなく俺なんだから。

 俺の水の中に、森が、建物が、生き物が沈んでいく。

 そんなの、見ないふり、知らないふりなんてし続けられるはずがない。


「やっべぇ……やば……どうすんだこれ、どうすんだよぉ……。

 おい、これ人死に出てるだろ、絶対……あああ、ついにやっちまった……」


 目を逸らしたいのに、嫌でも分かる。

 どこが人の居る場所か、どこまで水が届いているか、俺の方が知ってしまう。


 生き物を黄金にするとか、そんなことは出来ると思ってなかった。

 でも、今、間違いなくそれが起こってる。

 ということは、俺がやってしまっているんだ、これを。


 どうしてこうなる。

 どうしていっつもこうなる。


 しゃがみ込んだ俺の傍に、木こり野郎が膝をつく気配がした。

 見下ろすでもなく、逃がすでもなく、同じ高さまで降りてくる。

 そういうのが、いちいちずるい。

 でも、こっちはそれどころじゃないんだ。


「――イズミール」


 なのに、呼ばれると反応してしまう。

 音としてだけじゃなくて、身体と心、両方に響いてくる。卑怯だ。

 顔を上げると、金色の髪と青い瞳が滲んで見えた。

 畜生、違う、泣いてない。これは水だ、瞼が少し溶けただけだ。


「これを起こしているのは、確かに君だ。だが、これで終わりではない」


 人の気も知らないで、木こり野郎がもっともらしいことを言う。


 何言ってんだお前。 終わりだろ普通。

 あれ見てまだその顔できるの、どうなってんだ。


「まだ終わっていない。君がここにいる限り、止める手立てを探せる」


 嘘だろ、と思った。

 でも、その正論っぽさが逆に腹立たしかった。


 何を根拠にそんなふうに言えるんだよ。

 何も知らないくせに。

 ……いや、知らないのは俺もか。


 俺が出来っこないと思うことを、どうして、お前は出来ると思ってんだ。


「だから、目を逸らすな。私も逸らさない」


 反則だろ、そういうの。

 お前は俺のなんなんだよ。他人事だろうが。


「大丈夫だ。私がいる」


 その一言が何よりもムカついた。


挿絵(By みてみん)


「……ノープロブレムってか? アメコミのヒーローかよ、お前は。

 一番大丈夫じゃなかったやつが言う台詞じゃねぇだろ……!」


 こんなのはただの八つ当たりだ。


 こいつは俺を宥めようとしてる。それくらい分かってる。

 でも言わないとやってられなかった。


「大体、お前が怪我なんかするから、あのバカ女どもがトチ狂ってやらかしたんだからな!

 あんな撃ち合いの中に飛び込むとかアホだろ、勝手に死にかけてんな!」


「……そうだ。あれは私の落ち度だ」


 責任転嫁みたいなことも言ってみたけど、あっさり認められて言葉に詰まる。


「心配をかけて本当にすまなかった」


「いや、そこ素直に謝んな!

 こっちが言いがかりつけてる感じになっちゃうだろ!」


 その上、俺が心配してたみたいなことまで言われるから、本当にやりにくい。

 そんなんじゃない。……そんなんじゃないはずだ。


「し、心配したのも、キレたのも、俺じゃなくてあのイカれた女どもだし。

 言っとくけどな。お前に祈られて喜んでた俺とか、お前に追っかけられて嬉しいとかいう俺は、俺であって俺じゃないんだからな!?

 いいか、勘違いすんなよ、これは別にツンデレとかフリとかじゃねぇぞ!

 ちょっとイケメンだからって、頭ポンとかで簡単に靡くと思ったら大間違いだ、分かったか!」


 一息で反論を捲し立てたけど、正直、自分でも何を言ってるか分からない。

 話が通じなかった時に、こいつの悪口を言って気を紛らわせてたノリを、そのままぶつけてるだけだ。


 無茶苦茶ヤバい状況のはずなのに、こいつ相手だと、つい昔みたいな悪態が口をつく。

 その方が少しだけ楽だなんて、認めたくもない。


 俺一人じゃ抱えきれない。

 こんなの、普通は誰だって無理だ。


 なのにあいつ、何であんな当たり前みたいな顔してるんだよ。

 俺が見たくないもんを、勝手に見て、勝手に向き合うな。

 ……いや、向き合われると、逃げにくくなるから困るんだけど。


 真っ直ぐすぎる。重たい。勘違い野郎。

 こいつがいると、ひとりでいるための言い訳がどんどん使えなくなる。


 どうやら俺は、もうぼっちのままでは済ませてもらえないらしい。


 ほんと、面倒くさい奴だよ。


 お前と、俺は。

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