表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の傭兵、人狼となりて異世界を征く  作者: 観音崎睡蓮
一章 異端の皇女、奴隷となりて傭兵と歩む
5/20

5話 『冒険者ギルド』

ブクマくださった方、ありがとうございます。

今回、漢数字とアラビア数字が混在しております。基本的に値段についてはアラビア数字で統一しようと思っていますが、見にくければ修正いたしますのでよろしくお願いいたします。

 草原の中の道を街に向けてしばらく走ると、目の前に人だかりが見えてきた。

 どうやらシュウヤ達と同じく街に入ろうとする人々のようで、一人ずつ街の城門の前に立つ衛兵たちによって検問を受けているようだ。


「なあ、俺は身分証明書とか持ってないんだが大丈夫か?」


「ああ、商人の護衛だって言っとけば問題ねえよ。あいつらだっていちいち身分証明書の確認なんてしてねえしな」


 トーマスの言葉を聞いて、街の入り口の管理がそんなにいい加減でいいのかと思うシュウヤだったが、今回に関してはそのおかげで街に入れるようなので、文句は口に出さないでおく。


 シュウヤが乗る馬車が、他の馬車と同じように検問を待つ列に並んで、しばらく。

 特に閊えることもなく、無事に衛兵たちの前へと進むことができた。


「次の者! 名前と目的を言え!」


 チェーンメイルに身を包んだ屈強な衛兵がトーマスに向かって叫んだ。

 その迫力に臆することなく、トーマスはいつもの口調で、


「へえ、俺はトーマスです。しがない行商人でさあ。この街にはいつも通り商売でやってきました」


「そうか。隣の者は?」


「こいつは馬車の護衛です。なかなか腕が立つもんで、雇ったんです」


「その者。行商人トーマスの言葉に偽りはないか?」


「ああ、そいつの言うとおりだ」


「わかった。入城を許可する! 通れ!」


 ……見事なまでにザル警備だったようだ。衛兵を前にした時の緊張が馬鹿らしい。

 シュウヤは肩の力を抜いて、軽く衛兵に会釈し、前に向き直った。

 ようやくこの世界初めての人里である。



   ~~~



 ジュノーの街の人口は二万人ほどであるらしい。

 広大な盆地の中の平原のほぼ中央に位置するジュノーの街は周囲を取り囲む畑を見ればわかるように、農業を主な産業としており、街はその交易の場として栄えている。

 そのため、年がら年中、農作物を運び出す馬車と外からの商品を売りに来る馬車とで、往来は途絶えることがない。人口規模以上に経済活動が行われる商業の街としての側面もあるようだ。

 街は、行政府である領主の館を中心に商業区と居住区が円形に並んでいる。街に入る門は東西南北に四つで、その門から中央の領主の館に伸びる道がもっとも店が多く栄えているという。

 

 ……というのはトーマスによる説明で、そんな街についての情報と蘊蓄を語りながら、シュウヤを乗せて人々でにぎわう雑踏を進んでいた。


「まるで祭りみたいだな……」


 荷馬車とすれ違って行く商人や住民を眺めながら、シュウヤはそんな感想を漏らした。

 その言葉にトーマスが笑う。


「旦那、こんなもんで尻ごみしてたら皇都に行った日には心臓が止まっちまうぞ! 皇都はこの何十倍もでかいからな!」


 そんなもんか、とシュウヤは独り言つ。

 トーマスはというと、人でごった返す往来の中、器用に馬車を操っている。やがて、目的の場所に着いたのか、馬車一台分がやっとという路地に入ると、馬車を停めた。


「さあ、着いたぜ。旦那とはここまでだな」


「ここがお前の家かなにかか?」


「いや、ちょっと間借りしてる倉庫みたいなもんさ。しばらくはここに滞在するつもりなんでね」


「そうなのか。わざわざ街まで送ってくれて助かったよ。感謝する」


「よしてくれや! こんなもんで恩が返せたとは思ってねえんだからよ!」


 シュウヤは照れながら謙遜するトーマスに、今一度頭を下げ、馬車から下りた。

 ほんの数時間だったはずだが、足元の感じる土の感触が懐かしく思える。

 改めてトーマスに向き直り、


「それじゃあ、俺はもう行くよ」


「おう、何度も言うが街まで送ったくらいで恩が返せたとは思ってねえからな。もし、困ったことがあったらいつでも来てくれよ。……そうだ、こいつは餞別だ!」


 トーマスが御者席から何かを取り出し、投げて寄こした。

 飛んできた何かを空中でつかみ取り、見てみると……どうやら地図のようだ。


「この街の地図だ。俺の倉庫は印を付けといたからな。あと冒険者ギルドの場所とか店の位置とかも書いてあるから役立つと思うぜ」


 確かに、地図には赤くこの場所がチェックされていて、そのほかにも色々な施設の名前が書かれている。これがあれば、迷わずに済むだろう。


「いや、すまない。本当に何から何まで……」


 シュウヤとしてはトーマスを助けたのには打算があったのだから、ここまで好意全開でお礼をされると申し訳なくなってくる。

 かといって断るのも失礼なので、丁重に礼を述べ、地図はポーチにしまう。


「気にすんなよ、旦那! そんじゃまた会おうぜ!」


 最後まで快活で好印象だったトーマスと別れ、シュウヤは冒険者ギルドへと向かうことにした。



   ~~~



 トーマスと別れたシュウヤはまっすぐ冒険者ギルドを目指す……予定だったのだが。


「大通りには誘惑が多すぎるな……」


 地図によると、冒険者ギルドはジュノーの街中央にある領主の館のすぐそばにあるらしい。

 そのため、一番の最短経路は大通りをまっすぐに進むことだったのだが……シュウヤは朝から何も口にしていない。大通り沿いの露店から漂う美味しそうな食べ物の匂いにシュウヤの胃袋は白旗を掲げていた。


「そういえばパンがあったんだな」


 女神がくれたポーチを確認してみると、薄く切られたパンが数切れ入っていた。

 パンだけで食べるのは味気ない。これはもう、何かパンに合う食べ物を買うしかないだろう。

 女神曰く、しばらくは生活に困らないだけの金額を持たせてくれたらしい。無駄遣いは厳禁とのことだが……露店で食べ物を買うくらいは大丈夫だろう。


「いらっしゃい! 美味しいベヒボアのベーコンだよ! パンとの相性ピッタリさ!」


「……」


 ピンポイントでシュウヤの欲求を抉ってくる売り文句が聞こえた気がした。

 声の方に目を向けると赤い布屋根の露店が見えた。簡易なバーベキューコンロが並び、網の上では脂身たっぷりの美味しそうな肉のスライスが香ばしい匂いを漂わせている。


「これだな」


 決まれば行動は早い方がいい。

 「人狼の呪い」を使用していないにも関わらず、恐るべき速度で露店まで近づくと、そばでじっくりと観察してみる。

 

「いらっしゃい! どうだいあんた! 味は保証するよ」


 恰幅のいい妙齢の女性がここぞとばかりにシュウヤに勧めてくる。

 目の前には食ってくれとばかりに脂身を弾けさせる肉の塊。

 もう選択肢は一つしかない。


「……その肉を三枚頼む」


「あいよ! 毎度あり! 持って帰るかい?」


「えーと、パンがあるからその上に乗せたいんだが……」


 即座に購入を決定し、パンを店員の女性に差し出すシュウヤ。

 店員は戸惑うことなく、パンを受け取り、その上に焼きたての肉を乗せてくれた。


「三枚でお会計が150メルクだよ!」


「ああ、これで頼む」


 シュウヤはポーチに入っている二十枚の金貨のうちの一枚を手渡した。


「はいよ、10000メルクだね。それじゃお釣りが9850メルクだよ。ちょっと多いけど大丈夫かい?」


「ああ、問題ない」


 店員が金貨を受け取り、後ろの箱からお釣りを取り出してくる。

 大きな銀貨が一枚、小さな銀貨が四枚、大きな銅貨が八枚、小さな銅貨が五枚だ。

 シュウヤはこの世界の貨幣価値を知らなかったが、一連のやり取りから察するにシュウヤが持っている金貨は10000メルクに相当し、店員がお釣りで渡してきてくれた大銀貨が5000メルク、小銀貨が1000メルク、大銅貨が100メルク、小銅貨が10メルクに相当するようだ。

 思わぬところで貨幣価値を知ることができたのは幸運だったと言える。


 店員にお礼を言って、店から立ち去ってからシュウヤは肉汁したたるこんがりスライス肉が乗ったパンにかぶりつく。


「これは美味いな……脂が乗ってて柔らかいし……絶品だ」


 ベヒボアといったか、この肉は。

 こんなに美味しいのなら、今度時間が空いたときに正体を調べておくとしよう。


 異世界食材最初の発見に成功したことに少し機嫌をよくしながら、シュウヤは冒険者ギルドに向かうことにした。



   ~~~



 大通りを街の中央へ向けてしばらく歩くと、木造りで三階建ての立派な建物が見えてきた。

 入り口の上にはでかでかと看板が掲げられていて、「冒険者ギルドジュノー支部」の文字がある。地図も確認してみるが、ここで間違いないようだ。

 

「よし」


 両開きの重たそうなドアを開けると、人の汗と建材の独特な臭いが鼻を突いた。


「以外と広いんだな」


 冒険者ギルドはまるで旅館のような広々としたエントランスをロビーとしていくつかのテーブルやソファーが置いてあった。その向こうには受付があり、横には依頼が張り出してある掲示板が備えてある。受付や掲示板の前は冒険者と思わしき粗野な人々で賑わっている。

 一歩踏み出して見上げてみると、どうやらエントランスは三階まで吹き抜けになっているようだ。

 初めて見る冒険者ギルドというものに見惚れていると、


「いらっしゃいませ、ご要件はなんでしょうか?」


 ギルドのスタッフらしい少女が声をかけてきた。

 栗色のおさげの髪に、黄色いエプロンドレスを身に付けた可愛らしい子だ。

 きょろきょろしているシュウヤを気にかけて声をかけてくれたのかもしれない。


「ああ、今日は冒険者登録がここでできると聞いてきたんだが……どうすればいいのかがわからなくて……」


「ああ、なるほど! 冒険者登録ですね! ということは冒険者ギルドは初めて?」


「そうなるな」


「かしこまりました! 新規登録の方は5番カウンターです! 今はちょうど空いているので手続きはすぐに終わりますよ! ご不明な点はありますか?」


「いや、とりあえずは大丈夫だ。教えてくれてありがとう。助かったよ」


 親切にどこのカウンターに行けばいいかを教えてくれたスタッフの少女にお礼を言うと、少女はにこやかに一礼して立ち去って行った。

 あれが営業スマイルなのはみれば分かるが、中にはそれだけで惚れてしまうような初心な男もいるのではないだろうか。


 変に自分の顔が緩んでいないかを確かめ、シュウヤは教えられたとおり五番カウンターに向かうと、先ほどの少女と同じ営業スマイルを浮かべた受付嬢の前に立った。


「すまない、冒険者の新規登録はこのカウンターでと言われたんだが、間違っていないか?」


「いらっしゃいませ。こちらは新規登録のカウンターでお間違いないですよ。新規の冒険者登録ですか?」


「ああ。どういった手続きが必要なのか分からないもんで……」


 正直に、自分の知識不足を打ち明けるシュウヤ。


「わかりました。それではまずご確認ですが、今回登録されるのはあなただけでしょうか? 今ならパーティ割といって、パーティでまとめて新規登録されると登録料が半額になりますが……」


 笑顔で恐らく何度も繰り返してきたであろう説明を詰まることなく喋る受付嬢。

 話を聞く限りだとパーティ、恐らく冒険者同士のチームのようなものを指すのだろうが、そのパーティ全員で登録すると、冒険者としての登録するための費用が半額になるらしい。


「更にパーティを組んでいる場合だと当ギルドから冒険者の皆様へ提供しているサービスの方も割引しております。具体的には、当ギルド運営の宿でしたり、お金の融資や物品のレンタルなど様々なサービスがございます」


 どうやら登録料だけでなく、様々な支援もしてもらえるようだ。話を聞く限りだと一人でも問題ないようだが、二人以上でパーティを組んでいればより安くサービスが利用できるとのこと。

 金銭面での不安は今のところないが、出費を浮かせられるのならそれに越したことはない。

 それにこの世界の人間と行動をともにすれば、知識不足から生じる可能性のある問題を回避できるかもしれない。

 そう考えると、パーティメンバー……つまり仲間は欲しいところだ。

 どうしたものだろうか……。少し思案してからシュウヤは受付嬢に尋ねた。


「パーティっていうのはどうやって組むものなんだ?」


「そうですね……もちろんパーティメンバーの集め方は人それぞれですが……当ギルドが行っているのはメンバー募集の掲示板を用意して、そこでギルドの仲介のもとパーティ結成を支援しています。というのも、初心者を狙ったパーティぐるみの詐欺などもあるので……。不安がある初心者の方のために、このようなパーティ支援をギルドでは行っております」


 ただ、と受付嬢は少し言葉を濁らせた。


「ただいま、メンバーの募集を行っているパーティがございません。なので、そちらを利用するのは難しいですね」


 シュウヤは受付嬢の言葉を聞いて、その掲示板に視線を向けた。

 なるほど、確かに一枚も紙が貼られていない。となると、パーティを組むには地道に他の冒険者に声をかけていくしかないということだろうか。

 しかし、先ほどの受付嬢の説明にもあったように、シュウヤがまったくの素人だということがわかれば、なにか良からぬことをたくらむ可能性のある輩に一杯食わされる可能性がある。

 できることならそれは避けたい。


「そうだな……他に信頼できる人間を探す方法はないか? できるだけ早い方がいいんだが……」


「そうですね……これはあまりオススメできる方法ではないのですが……ある程度のお金さえあれば絶対に裏切らないメンバーを獲得する方法がありますけど……」


「ほう……」


 ダメ元で聞いてみたのだが、どうやらあるにはあるらしい。

 幸いなことにシュウヤの手元にはある程度まとまったお金がある。無駄遣いをするつもりは毛頭ないが、仲間を作る初期投資であると考えれば、惜しむ必要はない。


 回答を渋るかのように笑顔を曇らせる受付嬢にシュウヤは更に尋ねた。


「で、その方法ってのはなんだ?」


「それはですね……奴隷の購入です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ