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1-03:生活基盤を整えよう[キャラクターステータス付]

 次は宿だな。銀盆亭と竜頭亭、どっちにするか。まず武具屋の隣にある銀盆亭を見てみよう。

 銀盆亭は5階建てとこの街の建物の中でもかなりの高さを誇っている。うーん、なんかしっくりこない。とりあえず保留にして、竜頭亭へ行ってみよう。

 銀盆亭から少し先へ進むと、街の西門が見えた。西門と東門をつなぐ、通称東西通りを歩いていくと、中央大通り(俺が入ってきた北門から延びる、めちゃくちゃ道幅の広い通り)との交差点付近に竜頭亭はあるらしい。

 前方に中央大通りが見えてきた。そのすぐ手前に、竜頭亭はあった。建物は4階建て。街の中心に近い、賑やかな場所だが、とても落ち着いた雰囲気だ。気に入った、ここにしよう。あ、でも部屋あるかな?

「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」

 暖簾をくぐると、中年のオッサンがカウンターで何やら書き物をしていた。オッサンはすぐに俺に気づくと、笑顔で迎えてくれた。

「ああ、部屋は空いているか?」

「はい、空いておりますよ。1泊、朝食付きで2400ゴルドになります。また、宿泊代金に含まれない昼食と夕食につきましても、宿泊者の方は1食あたり200ゴルドにて提供させていただいております」

 聞いてみると、宿泊者以外でも食堂は利用できるそうだが、その場合は1食あたり400ゴルドかかるそうだ。そう考えると、かなり得なんじゃないだろうか。銀盆亭の1泊2食つき3000ゴルドよりもトータルで安くなる。朝食は朝6時の「1の鐘」から朝9時の「2の鐘」まで、昼食は正午の「3の鐘」から午後3時の「4の鐘」まで、夕食は夕方6時の「5の鐘」から夜9時の「6の鐘」まで、となっているようだ。俺はメニュー機能の時計で分単位まで時間を知ることができるが、一般的には朝6時から3時間おきに鳴らされる鐘の音と、おそらくは陽時計で時刻を知るのだろう。

「とりあえず、10日分頼む」

「10日分ですね、かしこまりました。では、少々割り引かせていただいて、2万2000ゴルドになります」

 ふむ、長期だと割引されるんだな。得したな。

「2万2000ゴルドだな、じゃあこれで」

 銀貨2枚と、銅貨20枚を支払う。

「はい、ちょうどですね」

 ふむ、1泊で2400ゴルドってことは、だ。だいたい1ゴルドは1円相当ってところかな。安宿1泊2400円。そういう風に考えておこう。

「では、身分証明書の提示と、こちらの宿帳への記入をお願いします」

 言われたとおりにギルドカードを提示し、記帳を済ませると、部屋に案内された。

 部屋は3階。4階建ての建物のうち、1階は受付と食堂。2階と3階は個室部屋。4階には相部屋があるらしいが、使う日は来るのだろうか?

 俺があてがわれたこの部屋の広さはおよそ4畳ってところか。ベッドと、小さなテーブルがあるので、それほど広いわけではない。まあ、ワンルームマンションに入った、みたいな感覚だ。俺はまだ20歳で、大学生だ。向こうにいたときはワンルームを借りてひとり暮らししてたからな。

 さて、落ち着いたところで、ステータスを見てみるか。


【名前】トーマ=サンフィールド

【Lv.】4 

【SP】21

【HP】138(92) 【MP】270

【STR】81(54) 【VIT】69(46)

【AGI】60(40) 【DEX】25

【MAG】135 【LUK】22

【スキル】剣術2 格闘1 水魔法1 風魔法1 回復魔法1 身体強化1 料理1

【補足】HP・STR・VIT・AGI 各50%上昇


 おや、いつの間にかレベルが4に上がってる。あの戦闘テストのおかげか。スキルポイントも21ポイントあるし、スキルを強化しておこう。何がいいだろうか。

 いろいろなスキルをバランスよく伸ばしていくべきだと思うから、まずは格闘を2に上げておこう。それと、各種魔法も伸ばそう。火魔法を一気に2まで取得し、水と風もそれぞれ2に上げる。土魔法もやはり一気に2まで取っておく。これで残りは9ポイント。無属性魔法ってのも取っておくか。これはレベル1でも2ポイント必要になるから、魔法スキルの中でも中級ないしは上級のスキルなのかもしれないな。あと、魔力強化のスキルも1取っておこう。これもレベル1で2ポイント注ぎ込み、残りは5ポイント。よし、ちょうどいいから観察眼を取得しよう。


 さて、改めてステータス確認。


【名前】トーマ=サンフィールド

【Lv.】4 

【SP】0

【HP】138(92) 【MP】405(270)

【STR】81(54) 【VIT】69(46)

【AGI】60(40) 【DEX】50(25)

【MAG】203(135) 【LUK】22

【スキル】剣術2 格闘2 火魔法2 水魔法2 風魔法2 土魔法2 無属性魔法1 回復魔法1 身体強化1 魔力強化1 観察眼 料理1

【補足】HP・MP・STR・VIT・AGI・MAG 各50%上昇

    DEX 100%上昇


 うわ、MPのインフレっぷりがパネェ。どうやら魔力強化はMAGとMPのステータスを50%ほど引き上げるんだな。レベル1のスキルでそれだけ跳ね上がるってことは、これはスキルレベル毎に50%ずつ上がってくのだろうか。おそらく、身体強化も同じ仕組みなんだろう。あと、DEXが倍になってる。新しく取った中で、器用さとか命中率に影響しそうなスキルは、というと観察眼くらいしか思いつかんが、たぶんこれなんだろうな。


 他の魔法については、だいたいこんな感じだ。


 火魔法は、レベル1で火弾ファイアバレット。レベル2で火矢フレイムアロー火壁ファイアウォール。火弾は弾速がかなり速い。火矢は射程距離が火弾より少し長いので攻撃性能が火弾より上だ。火壁は目くらましと水系の魔法への対抗策かな。あと、火魔法は着弾すると延焼効果もあるため、攻撃力は高めだ。


 水魔法はレベル1で水弾ウォーターバレット。レベル2になると水銃ウォーターガン雹弾ヘイルバレット。水弾は圧縮した水をぶつけるだけなので、威力の調節がしやすい。俺がハリーとの模擬戦で使ったように、対人の模擬戦に使う魔法として優秀そうだ。水銃は直線状に圧縮した水を撃ち出し、貫通力を持たせたものだ。やり方によってはかなりエグいことになるかもしれん。雹弾は細かい氷の礫をぶつける。貫通力は水銃より上だろう。これもやり方次第で敵を穴だらけ、なんていうこともあるかもしれない。


 風魔法のレベル1は圧縮した空気の弾を撃ち出す風弾ウィンドバレット。レベル2では風刃ウィンドカッター風壁ウィンドガード。風刃はいわゆるカマイタチ、見えない刃が敵を切り裂く。風壁は身体に風を纏い、主に矢などの飛び道具から身を守るようだ。


 土魔法もやはりレベル1は単体攻撃魔法の土弾クレイバレット。ギルドでの戦闘テストでライオネルが放ってきた魔法だな。他の3属性の単体攻撃魔法に比べて堅く、重い攻撃ができるので、当たり所次第では一撃で勝負を決めることもできそうだ。ライオネルも「一撃で決めさせてもらう」なんて口上とともにぶっ放してきたくらいだし。レベル2では土壁アースウォール落罠フォーリントラップ。土壁は防御用の魔法で、今の俺でも剣で数回斬ったくらいではビクともしない、堅牢な壁を生成できる。落罠は対象の足元や進む先に、ちょっとした段差程度の浅いものから、ガチでハメるための深いものまで、落とし穴を作り出すことができる。イタズラで驚かせるもよし、突進してくる魔物を穴に落として仕留めるもよし、と実に楽しそうな魔法だ。


 無属性魔法はレベル1で魔力矢マジックアローを習得した。純粋な魔力を撃ち込むだけだが、特定の属性を持たない分、汎用性が高いかもしれない。


 回復魔法はレベル1では小回復ヒールのみ。


 あ、ついでだからインベントリの中身の点検をしておくか。

 と言っても見るべきものは冒険セットくらいなもんか。リュックサックみたいなバッグで出てきたそれを開けてみると、毛布、松明たいまつ、小型のナイフ、ロープが10メートル分と、火種に使う火口箱ほぐちばこが出てきた。ネットで画像を見たことはあるが、実物を見るのは初めてだ。

 さらにメニューを少し弄って、自分のHPやMPを示すバー、時計、ミニマップとコンパスは常時表示されるようにしておいた。


 と、そのとき。

 ぐう、と腹の虫が鳴いた。

 あ、そういやギルドでの戦闘テストやらで昼飯食ってなかった。もう午後の2時か。まだ食べられるだろうか。



 食堂には女将さんがいた。どうやら宿全体は主人、食堂周りはこの女将さんが仕切っているようだ。

「済まないが、昼飯は今からでも食えるか?」

「ああ、大丈夫だよ。200ゴルドの定食と、100ゴルドの一品料理があるけど、どうする?」

「じゃあ、定食で」

「あいよ。ちょっと待ってな」

 俺は先払いになっているらしいので、200ゴルドを支払うと、料理が出てくるのを待つことにした。

 少しして出てきたのは、黒パンと野菜のスープ、それと何かの肉のソテーだった。

「ん、美味い」

 肉は少し固いが噛み千切れないほどではないし、野菜のスープも元の世界で食べていたようなのと大差ない。黒パンはやはり硬いのでスープに浸して食べるのが正しいようだ。

「ごちそうさん。ちょっとギルドに行ってくる」

「はいよ、いってらっしゃい」

 食器を片付け、女将さんにそう告げて宿を出る。


「ありがとうございましたー」

 ギルドに向かう道すがら、雑貨屋があったので、石鹸やタオルを2枚、それと着替え用のシャツを2枚買った。全部で1500ゴルド。石鹸が500ゴルドと、やや高いな。


「さて、依頼の掲示板はどんな感じなのかな、っと」

 再びギルドにやってきた俺は、入って少し奥にある、たくさんの紙が乱雑に貼り付けられた場所を眺めていた。

 今、俺のインベントリには一角ウサギ(見た目のまんまだった)の死体が4頭、イノシシっぽい魔物、イノボアの死体が2頭、そしてシカもどき、グラスディアーの死体が1頭入っている。それぞれ観察眼のスキルで見たら、そんな名前が出てきた。これらの死体を利用できる依頼があればいいんだが。

 お、これなんかいいかも。

 俺の目に止まったのは、一角ウサギを狩ってくる依頼だった。どうも、あのウサギはツノも毛皮も肉も人気の品で、捨てるところがほとんどないらしい。毛皮は元の世界だとカバンとかに使われそうだけど、肉は美味いのだろうか。ツノについては全く利用法がわからん。ま、とにかくこれを受けてみよう。お、ちょうどベラさんのカウンターが空いてるな。

「あら、トーマさん。早速何か依頼を受けるんですか?」

「ああ、これを頼む」

 登録が済んで一度引き上げた俺がまた来たのに気づき、ベラさんがそう声をかけてきたので、頷いて依頼票を差し出す。

「一角ウサギ、ですか。正直、Fランクの冒険者でも受けられるようなもので、今のトーマさんが受けるような依頼じゃないと思いますが、これでいいんですか?」

 まあ、そうだろうな。街へ着く前の俺でさえ、ちょっと気をつけていれば無傷で仕留められたような相手だし。

「ああ。とは言っても、もうすでに狩ってあるんだけどな」

 言いながら、インベントリからウサギの死体を取り出してみせる。仕留めてすぐ収納したからか、血がしたたりそうなほどにまだ温もりが残っている。ってことは、内部では時間経過が無いのか。

「あら、ストレージボックスを使えるんですか。珍しいですね。じゃあ、向こう側の依頼報告用のカウンターに出してもらえますか?」

 ベラさんはそう言って、カウンター内を移動する。俺もいったんインベントリにウサギの死体を戻してその後を追うように報告カウンターへ向かう。いや、それよりストレージボックスって言ったか?

「何にも無いところから物を取り出しましたよね? ストレージボックスじゃないんですか?」

「ああ、故郷の村で親父に教わったんだが、親父はインベントリって呼んでたからな。そっちの名前で覚えていたんだ。じゃあ、これを」

 なるほど、一般的にはインベントリとは言わずにストレージボックスって言うのか。頭の隅に留めておこう。

「はい、十分ですね。依頼は完了、報酬の5000ゴルドです」

 なるほど、これだけで5000ゴルドか。結構冒険者って稼げるのかもな。ちなみに、内訳は依頼そのものの達成報酬が1500ゴルド、討伐報酬が500ゴルド、素材としての価値が、本来は全部で2000ゴルドのところを、俺の持ち込んだウサギがかなり状態のいいものだということで、少し上乗せして3000ゴルドらしい。

「今の以外に、一角ウサギがあと3頭、イノボアが2頭、グラスディアーが1頭分、インベントリに入ってるんだが、買い取りとかはしてもらえるのか?」

「ちょっと、見せてもらってもいいですか? やはり、先ほどの一角ウサギ同様、かなり状態がいいですね。なので、一角ウサギが3頭で多少おまけをして1万ゴルド、イノボアが2頭で1万2000ゴルド、グラスディアーは8000ゴルドで買い取らせていただきますが、それでいいですか?」

「ああ、頼むよ」

 へえ、状態がいいとやっぱり買取価格も上がるんだ。日本でも中古品をリサイクルショップに持ち込むと状態いかんでかなり買い取り価格に差が出るからな。

 とにかく、これで最初のウサギと合わせて、3万5000ゴルド、銀貨3枚と銅貨50枚をゲットだ。これだけで宿に2週間は泊まれる。まあ、この辺にいる、動物に毛が生えた程度の魔物ならともかく、いずれはガチで命を懸けて戦うような魔物も出てくるだろうから、頑張って稼いで装備ももっといいのを買わないとならないかな。

「初日から快調ですね。さすがは期待の新人、と言ったところですか」

「そんなこたぁないよ。じゃ、ちょっと身体動かしに修練場行くんで、また」

お読みいただき、ありがとうございます。

次回……1-04:出会い

11/3 06:00 予約更新をセットしておきます。

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