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2-01:とある恋人たちのとある週末

 これは、トーマ=サンフィールドこと日野刀馬ひの・とうまがサイネガルドに召喚される前のお話。



「杏奈、着いたよ」

「んん……」

 ある週末のこと。刀馬は自分の車に恋人の黒木杏奈くろき・あんなを乗せ、1泊2日で旅行に行っていた。関東北部にある、世界遺産や建造物をスケールを小さくして再現したテーマパークに遊びに行き、温泉旅館に泊まって、さらに周辺を観光して、と目一杯遊び倒したために、杏奈は帰りの車の助手席ですっかり眠ってしまっていたのだ。

 運転する刀馬自身も疲れており、事故を起こさないようにこまめに休息を取りながら帰ってきたため、杏奈がひとり暮らしをするマンションの前に着いたのは、日付も変わろうかという時間帯。なお、2人は恋人同士だが、お互いまだ学生同士ということもあり、同棲はしていない。

 ともかく、杏奈を部屋に帰らせて寝かせないとならないので、刀馬は杏奈の肩を揺すって起こそうとした。しかし、杏奈は助手席で幸せそうに微笑みを浮かべて眠ったまま。20年以上前の名曲とは関係ない。

「仕方ない、か」

 刀馬はこの場で起こすのを諦め、車を降りると、助手席のドアを開けて杏奈をお姫様抱っこで抱き上げた。杏奈の部屋の合鍵は持っているので、キーケースからそれを取り出すと、オートロック式のエントランスを開けて中へ入っていった。抱き上げたりしてそれなりに揺れているのに、杏奈はまだ目を覚まさない。


「んぅ……?」

 刀馬が合鍵を使って部屋に入り、杏奈をベッドに横たえてから数分後、ようやく杏奈が目を覚ました。

「起きたか?」

「う、うん……わたし、ずっと寝てたの?」

「ああ。車の中からずっとな。着いたって言って起こしても起きなかったからここまでお姫様d」

「わわわかったから、それ以上言わないでっ! 恥ずかしいよぅ!」

 刀馬がどうやって自分をここまで連れてきたのかを言おうとした瞬間、一気に杏奈の脳が覚醒し刀馬の言葉を遮る。その顔は真っ赤に染まっていた。

「じゃあ、落ち着いたところで俺はそろそろ帰るな。杏奈、明日は大学何限からだっけ?」

 ひとしきり杏奈の反応をからかった刀馬は、明けて月曜日の予定を訊ねた。2人は同じ大学に通っているので、時間が合えば一緒に行く腹積もりだった。

「んーと、明日は3限と4限ね。いつもは2限もあるけど、明日は休講になってるから」

「わかった。俺は4限と5限だから、少し早めに出て一緒に行くか。明日の昼ごろ、迎えに来る」

 刀馬は大学で駐車場を借りて車で通学しているため、時間が合えば杏奈を一緒に乗せていくのだ。

「うん、わかった。じゃあ、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。ずっと寝てたからって、寝坊するなよ?」

「もうっ! 刀馬君のいじわるっ!」

 最後に余計な一言を残して去っていく刀馬に怒ったような声をぶつける杏奈だったが、玄関のドアはすでに閉まっており、刀馬にその声は届かなかった。


(疲れてるし、シャワーは明日の朝でいいや……)

 刀馬を見送ると、杏奈はやはり疲れているのだろう、そのままベッドに倒れこみ、眠ってしまった。

お読みいただき、ありがとうございます。

次回……2-02 勇者アンナ、異世界の大地に立つ

1章で行っていた、詳細な時間予告は辞めることにします。

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