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2-02:勇者アンナ、異世界の大地に立つ[キャラクターステータス付]

「寒っ……?」

 身体を襲う冷たい風に、わたしは目を覚まし、すぐに異変に気づいた。

「ここ、どこ……?」

 自分が暮らす見知ったマンションの一室ではないどころか、外だ。しかも広大な草原。方角はわからないけれど、遠くには何か壁のようなものが見える。

(誘拐? いえ、オートロックになってるうちのマンションのエントランスをすり抜けることはできたとしても、わたしの部屋の玄関の鍵はどうやって突破したのかわからない。っていうかそもそもここはどこなの? 誘拐だとしたらその犯人が近くにいそうなものだけど、見渡す限り草原が広がってるだけで、人っ子ひとり見当たらない……本当にここは日本?)

『それは私から説明しよう』

 えっ、いきなり頭の中に声が聞こえてきた? 何これどうなってるの?

『まず、ここはそなたの暮らしていた世界ではない。そなたの感覚で言うところの異世界、サイネガルドだ。そして私はこの世界の創造神、ハジュである』

 い、異世界? わたしの彼氏、刀馬君がそういう小説とか漫画とか大好きだから、彼なら喜んで踊りだすのかもしれないけど……なんでわたし?

『そなたをこの世界に呼んだのは、そなたに勇者の素質があることもそうだが、他にももちろん理由がある。――今、この世界は危機に陥ろうとしているのだ。南西の高山地帯にある魔族の国、デビルロード帝国がこの大陸を統一するため、兵を動かそうとしている』

「はい質問。その、わたしが勇者の素質を持ってるだとか、魔族が攻めてくるっていうのはとりあえずいいとして、国があるくらいなんだから当然兵士さんとかもいるはずよね? それがどうして他の世界から勇者を召喚する、なんてことになってるの?」

『うむ、良い質問だ。魔族は、この世界のほかの種族に対し絶対的な有利性を持っている。具体的には、高い身体能力と、身体的接触によって際限なく体力や魔法力を奪い取ることができるのだ。だが、その能力はあくまでこの世界の生命体にのみ有効であり、そなたのような異世界の生命体はそれを無効化できる。それゆえに、最前線で戦う役目を頼みたいのだ』

 なんか、ホント刀馬君が好きそうな話だわ……でも、刀馬君はここにはいない。わたしがひとりでやらないといけないのかな。

「じゃあ、次の質問。わたしは、どうすればいいの? 何をすれば、あなたの目的を達したことになるの? 目的を達した後は……か、帰れるの?」

 わたしが子供の頃に流行ったバラエティでは、番組の偉い人があまり売れていない(って言ったら失礼かもしれないけど)芸人さんやアーティストさんを突然拉致して無茶振りに近い企画を<やりますか? やりませんか?>って言いながら投げかけてたけど、今のわたしもそういう状況に近いよね。まあ、あの番組ではせいぜい海外で済んでたけど、今のわたしは異世界。信じられないけど、少なくともこんな風景は日本には無い。世界は広いから探せばこういう風景はあるのかもしれないけど、それでも、こんな風に頭の中に直接声を響かせるような存在なんてのはまずありえないし、もうきっと後には退けない。それなら、無駄に足掻くよりクリア条件を聞いてそれを達成するために動くほうが建設的だよね。でも、帰れなかったら意味無いけどさ。

『魔族の野望を止められるなら、手段は問わない。彼らを大人しくさせ、侵攻する意思を摘み取れば良い。その目的を達した後は、望むなら元の生活に戻すことを約束しよう』

「わかったわ。どうせもう後には退けないんでしょうし、やるしかなさそうね」

『感謝する。では、具体的な話に入ろう。“メニュー”と念じてみてくれ』

 メニュー? なんか、ゲームみたいだと思った瞬間、目の前に半透明の画面みたいなのが浮かび上がった。現在の時刻、現在地、付近のマップと世界地図、ステータスに持ち物(インベントリ)、スキルやオプション。本当に、ゲームみたい。刀馬君のようにどハマりしているわけじゃないけれど、わたしもそれなりにゲームは嗜むから、戸惑う中にもほんの少し心躍るものがあるわ。

 えっと、名前はアンナ=ブラックウッド。って、なにこの名前は。黒木を英訳して、ブラックウッド? どうしよう、早くもやる気失くしそう……

 現在の時刻は創暦1763年1月30日、午前8時8分。暦とかはどうなってるのかしら。現在の日付時刻を見た感じでは大きな違いは無いように見えるけど……?

『うむ、1日はそなたの世界と同じ24時間、1時間は60分だが、暦は少し異なっている。具体的には、1年は360日。すべての月が30日ずつ、12ヶ月で1年だ』

 へえ、似ているようで違う部分もあるのね。頑張って順応するところから始めないとダメかしら。それにしても、神さま、わたしの名前の酷さに対する心中の苦情を完全にスルーしてるわね。これは確信犯かも。諦めるしかないかな。


 いまわたしがいるのは、大陸の北東部に位置するノーランド王国のイェスラという街の近くね。方角的に、あそこにそびえ立つ壁がイェスラかな。問題のデビルロード帝国は大陸中央部の高山地帯にあるのね。

 次に見るべきはステータスかな?

 えーと、今のわたしのステータスは、っと。


【名前】アンナ=ブラックウッド

【Lv.】1

【SP】10

【HP】42   【MP】218

【STR】18  【VIT】21

【AGI】32  【DEX】28

【MAG】109 【LUK】20

【スキル】料理3 家事3


 え、ちょっとMPの数値が高すぎない? レベル1のステータスとは思えないんだけど。そういう部分が、勇者の素質を持っている、ということになるのかしら。

『一応、それぞれのステータスの意味を説明しておこう。どうやらある程度はそなたにも馴染みがあるようだが、Lv.(レベル)は総合的な強さを示す数値だ。SPはスキルポイント。魔法や武器の扱いはほとんど全てスキルによって習得できる。スキルポイントを消費すれば、思いのままだ。レベルが上がればポイントを獲得できるので、新しいスキルを覚えたいのならば、レベルを上げれば良い。ただし、一度確定したスキルは二度とポイントに戻すことはできないから、スキルのレベルを上げるときや、新しいスキルを習得する際はよく考えてからにしたほうが良いだろう。次に、HPは生命力。0になれば死んでしまうから、最も気を配るべき数値だ。MPは魔法力。主に魔法を発動することで減り、足りないと魔法は不発に終わる。そなたがもし魔法を主体に戦うのならばHPと同等以上に気を配る必要があるな』

「ええ、わかったわ。他のステータスも大体はわかるから大丈夫よ」

『うむ。では、そなたが最初から習得しているスキルは、元の世界でのそなたを反映したもの、とだけ付け加えておこう』

 料理と家事のスキルが最初から3。武器などの戦いに関するものは一切無い。まあ、魔物も魔法も無い世界で生きてきたのだから、これが普通よね。

『次はインベントリの説明なのだが、その前に、そなたに授ける武器の種別を決めたい。剣、槍、ハンマー、斧、鞭、弓矢の中から、そなたが使いたい武器を選んでくれ』

 武器、かぁ。剣は接近戦になるからちょっと怖いよね。ハンマーや斧も同様の理由で没。弓矢は矢を撃ち尽くしちゃったら、と思うと怖いし、鞭は鞭で熟練しないとまともに戦えなさそう。そうなると、消去法で槍ね。槍だったら剣とかよりは距離を取って戦えそうだし、そうしましょう。

「じゃあ、槍でお願いします」

『槍だな、承知した。では、インベントリの説明に入ろう。そなたがこの世界で生きていくために必要な物資をインベントリの中にある程度用意しておいた。確認してみたまえ』

 そう言われて持ち物を確認してみると、槍が一本、冒険セット、数日分はありそうな保存食と水、そしていくらかの硬貨が納められていた。うーん、もしも他の種類の武器を選んでたら、その武器が入ってたんだろうな。

『インベントリの中には生き物以外のあらゆる道具を際限なく保管しておける。ひとつ辺りの大きさや重さ、保管しておける個数の制限など一切ない。一般人の中にもこの系統の能力を持つ者は稀にいるが、その収納能力には制限が付く。そなたには神の名において、無制限のインベントリを付与するから、上手く活用したまえ』

 これは便利ね。荷物が増えても重さを感じない、っていうのはいいわ。

 次に、硬貨の入った皮袋をインベントリから出し、その種類と枚数を確認しておく。銀貨が20枚、銅貨が50枚入っているわね。持ち物一覧に表示される所持金は全部で20万5000ゴルド、となっているので、おそらく銀貨は1枚1万ゴルド、銅貨は1枚100ゴルドなのでしょうね。そうでないと計算が合わないから、まず間違いはないでしょう。

 あとはこれが向こう(日本)での通貨換算でどのくらいの価値なのかは実際に街の生活を始めないとわからないから、今は保留ね。

『硬貨はそなたに授けた銀貨と銅貨以外に、1枚で100万ゴルドになる金貨がある。そなたの生き方次第ではそれを目にする機会もあるだろう』

 ふーん、金銀銅の3種類なのね。シンプルでわかりやすいわ。

『では、これで基本的な説明は終わりにする。最後に、この世界の言葉や文字を理解する能力を付与し、持ち物に入れておいた槍を扱うために長柄武器スキルのレベル1と、生き延びるための回復魔法のスキルをレベル1で習得させてあげよう』

「半強制的に連れてこられた身だからありがとう、って言うのもおかしな話だと思うけど、簡単に死なないような配慮はしてくれるのね。ところでもうひとつ聞きたいんだけど、もし、もしもよ? 目的を達成できず、道半ばで力尽きちゃった時ってどうなるの?」

『あまりそういう後ろ向きなことは考えないでもらいたいのだが、聞かれた以上は答えない訳には行かないな。道半ばで力尽きた場合は、そなたの知る言葉で言うのであれば、ゲームオーバー、だ。復活することもできぬし、元の世界に還してやることもできぬ。その部分に関しては、勇者と言えども特例は存在しない』

 う、やっぱり死んだら終わり、か……。そうなると、最初はなるべく無理をしないようにレベルを上げて、生き延びることを最優先にしたほうがいいわね。

「わかったわ、あんまり自信は無いけど、頑張ってみる。こんな年齢でまだ死にたくはないから」

『うむ。私は他にも勇者の素質を持つ存在がどこかにいないか、探してみよう。そなたのことは可能な限り見ているようにするが、そなたのほうからも私に何か話があるときは心の中で呼びかけるといい。応じられる状態であれば、応えよう。では、達者でな』

 それを最後に、わたしの頭の中に響く声は聞こえなくなった。

 イェスラの街は目と鼻の先に見えているけど、たぶんわたしの足だと30分くらいは歩くようになるだろうから、それまでに魔物とかに襲われないとは限らないよね。うん、移動する前にスキルを習得しておこう。

 そう思ってスキルの一覧を開き、あまりの多さに絶句した。剣や斧などの各種武器をはじめ、魔法、耐性やステータスを強化する類のスキルみたいなのもあるみたいね。スキルの中には何らかの条件を満たさないと習得できないスキルがあるのか、「???」って言う表示のスキルもあるけど、どうしようかしら。

 とりあえずは、アレよね。レベルが低いうちから魔物に近づいて接近戦とか、いくらある程度距離を取って戦えそうな武器である槍をもらって、長柄武器のスキルを習得させてもらってもやりたくないわ。だから、まずは魔法を覚えましょう。魔法なら、槍よりももっと距離を取って戦えるし、わたしのMPはレベル1にして218もあるから、撃ち放題とまでは行かなくても、普通のレベル1よりは格段に多く撃てる。幸いにして、ほとんどのスキルは最大レベルが5までで、スキルのレベルと同じだけのポイントを消費することで習得できるみたい。一部、レベルの2倍、3倍のポイントを必要とするスキルもあるみたいだけどね。

 今は10ポイント持ってるから、まずは全部の属性魔法をレベル1で習得、っと。無属性魔法のスキルだけレベル1で2ポイント使う必要があるみたいだから、火水風土の4属性と無属性魔法で合計6ポイントを消費、残りは4ポイント。あとは、ステータスを強化する類のスキルがさっきあったよね。あ、あったあった。身体強化と、魔力強化。これらもレベル1で2ポイントずつ消費するスキルだけど、ちょうど4ポイントで足りるし、これに決めた!


 そんなわけで、今持ってるスキルポイントは使い切った。ステータスは……っと。


【名前】アンナ=ブラックウッド

【Lv.】1

【SP】0

【HP】63(42)   【MP】327(218)

【STR】27(18)  【VIT】32(21)

【AGI】48(32)  【DEX】28

【MAG】164(109) 【LUK】20

【スキル】長柄武器1 回復魔法1 料理3 家事3 火魔法1 水魔法1 風魔法1 土魔法1 無属性魔法1 身体強化1 魔力強化1

【補足】HP・MP・STR・VIT・AGI・MAG 各50%上昇


 なるほど、身体強化や魔力強化のスキルは対応するステータスを常時50%上昇させる効果を持っているのね。レベル1で50%なら、レベル5まで上げたら250%の上昇率になるとすると……3.5倍!?

 ま、まあそれに見合ったスキルポイントが必要になるわけだし、実際に魔物や魔族なんかと戦うことになれば、ステータスは高いほうがいいに決まっているものね。うん、頑張ろう。

 とりあえず、あの街を目指して、出発!

お読みいただき、ありがとうございます。

次回……2-03 刺客

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