115:娯楽都市
俺とベラは格納庫1から出て会議室Aに入る。
「ここは何をするところですか?」
「ここは会議室だね」
中央にある大きなテーブルは魔道具が仕組まれておりタッチすれば立体映像が出てくる。
「このホログラムは前に見たことがある、未来都市でしたか」
「うん、前に見た時と同じやつだね」
列車を見せた時にこの現代都市のホログラムはベラとグリーテンに見せたことがある。
「まさか、もうお作りになられるおつもりですか?」
「うん。お父さんにも言って本格的に作ろうかなって思ってる」
ベラにはランスロット領地で余っている場所にこれを作りたいとは言っていた。
「それでね、この都市を舞台に漫画をかこうとおもっているんだ」
「ここを舞台に。……質問よろしいでしょうか?」
「うん、いいよ」
「先ほどの飛行車の話から繋がっているのでしょうか? それとも別件ですか?」
あぁ、そこを説明していなかった。この世界だと聖地巡礼とかがあまり主流ではないのか。
叛逆の英雄では聖地というものがないからそういう文化もないのか。
「繋がってるよ。叛逆の英雄で考えれば分かると思うんだけどさ」
「はい」
「叛逆の英雄を舞台にしている場所があったら、ベラはどうする?」
「行きます」
「そういうことだよね。漫画で知名度が上がればそこを舞台にしている場所に行ってみたいって思う人がいて、その移動手段として飛行車を使えれば最高じゃない?」
「なるほど……」
「それにアニメを見せるのもこの都市でやってもいいよね」
「それはもう誰もが行きます。私もアーサーさまと共に行きます」
俺も行くんだからベラも付いてきて当然か。でも叛逆の英雄がかなりヒットしているから盛り上がるのは当然の流れになる。
でもあれだな。現代都市を舞台にしてもこちらの人にはウケない可能性があるのか。
前世ではファンタジーな世界はまあウケていた。それはその世界にない設定でありカッコいいから、設定が面白いからというのが理由だろう。
でもファンタジーな世界の人々が前世の世界を見て、面白いと思うのかは謎だな。文明は便利だとは思うけど面白いと思うのは俺の価値観では分からない。
「ベラやグリーテンにその現代都市を舞台にした漫画がかけたら判断してもらった方がいいか」
「はい。楽しみにしています。それよりもアニメが見れる場所はこの都市のどこにあるのですか?」
もうベラの興味はそれにしか行っていない。それはそれでいつもとは違うベラが見れて楽しいんだけど。
「テレビ放送か、映画館。もしくはスマホでのサブスクのどれかになるけど、映画館が一番初めかな」
「テレビ、映画館、サブスク。……アーサーさまの造語技術はすごいですね」
「そ、そうかな?」
まあ五歳児がこんなことを言っていたらおかしいよな。でも五歳児だからこそ適当で変な言葉を言っていると思われた方がいいか。
とりあえず映画館の場所を拡大させて映画館をベラに見せる。
「こういうところだね」
「……不思議なところですね。色々な見慣れないものがあります」
「入ってみる?」
「入れるのですか?」
「今はできないけどすぐに改造できるよ」
「是非お願いします」
すぐに返事をしたベラに頷いて魔道具を即座に改造した。
「はい、ホログラムに手をかざせば行けるようになったよ。今から行こうか」
「さすがアーサーさま。参りましょう」
こうやって魔道具をすぐに改造できる人はどれくらいいるんだろうな。魔道具を作れる人はマリアさんしか会ったことがないし作ったところは見たことがない。ま、俺に敵う奴はそうはいないだろう。
俺とベラは映画館が表示されているホログラムに手をかざせばホログラムの中に入り込んだ。
「……ここが」
ショッピングモールの近くにある映画館の入り口に転移しており、俺とベラは映画館に入る。
これから何の映画があるという上のパネルには何も表示されていないしカウンターにも誰にもいないがレジやらの物はすべて再現されている。
「こっちだよ」
「はい」
まあはぐれることはないがベラの手を引いてスクリーンに向かう。
前世では独特だなと思ったスクリーンに続く扉を開ければそこはもう映画館だった。
暗い雰囲気に大きなスクリーン、座席が規則的に並んでいる場所。ここだけを見れば俺は現代にいるのかと思ってしまう。
でもこちらの世界というか貴族なら劇場が同じような感じだから物珍しさはないか。
でもベラは入り口からスクリーンまで興味深く見渡していた。
「ここに座って、ここからアニメを見る感じになるね。実際は明かりを落とすんだけど」
「……すごく、没入感がありそうですね」
前後を分ける大きな通路のすぐそばにある後ろの席の一番前に座って何も映っていないスクリーンを眺める。
「これで叛逆の英雄のアニメが見れれば最高です」
「それはそうだろうね。でもそれは後のお楽しみだよ」
「はい、本当に楽しみにしています」
俺の命の次に大事だと言いかねないな。それだけ好きが大きいのはいいことだ。こちら側が生殺与奪の権を握っている感じがする。
「それじゃあ出ようか」
「はい」
俺とベラは魔道具の中から飛び出し、入る時と同じ立ち位置で戻って来た。
「私のためにありがとうございます」
「全然大丈夫だよ。ベラの視点は大事だからね」
まだこちら側に染まっていない俺の価値観では測れない部分があるから、そこをベラや姉さんたちが教えてくれるから本当に大事だ。
「アニメはどこまで話が進んでいるのですか?」
「うーん、まだ話は進んでないんだよね。娯楽ギルドに入る人を集めてるけど、まだそこの段階」
メルシエさんが作ってくれた娯楽ギルド。でもその活動拠点もそうだがどうクリエーターを育てるかもまだ決まっていない。
やることが多くて困る。まあ充実しているということだろう。
「その人たちはこの都市に住むのですか?」
「……それいいかもね」
ベラの何気ない一言はこれからのことを示す道標のようだった。
「さすが僕のメイドだね!」
「……よく分かりませんがアーサーさまにそう言っていただきとても嬉しいです」
「この都市を娯楽ギルドの拠点にして、ここでアニメを作ればいいんだ」
現代都市を再現することばかりを考えていてここに住む人たちがどう働くかとか考えていなかった。
でもここを娯楽ギルドの拠点にして、ここから世界に向けて娯楽を発信する場所にすれば、それだけでこの都市は価値がある。
そうとなれば娯楽ギルドの拠点に相応しいように現代都市を変えよう。
まあここに住みたい人も出てくるだろうから住む場所も必要だし娯楽都市として遊園地など遊ぶ場所も必要で、この都市だけで生活できるようにも作らないといけない。
ハハッ、楽しくなってきたな!
「アーサーさま、少し休憩なさった方がいいかと」
「……いつの間に紅茶を出したの?」
ベラがテーブルの上に紅茶を出してきた。でもさっきまで俺と一緒にいたはずでそんな時間はないはずだが。
「アーサーさまが集中なさっていて時間はそれなりに経っています」
「……ホントだ」
時間をスマホで確認すれば確かに時間はあれから過ぎていた。かなり楽しくなって集中してしまったようだ。
「私が見ていた時よりも変わっていますね、未来都市」
「未来都市じゃないよ、娯楽都市って名前にしたから」
「いいお名前です。とても楽しそうですね」
「きっとここから世界は娯楽に溢れるよ」
ここからスマホやらを広めれるのなら広めたい。でもそれは色々と問題がありそうだからなぁ。
まだ綱渡り状態な停戦が続いているからいつそれが落っこちるか分からない。その状態で凄まじい機能を持ったスマホを広めていいのかって話だ。
まあ俺の全能があれば味方だけ使えるようにできるし、何なら相手がスマホを持っていればそこから情報を収集することもできる。
でもそれをお父上様に言えるわけがないしスマホを広めることはまだ許されないだろう。
娯楽都市の中でしか使えない、みたいならワンチャン……?
「ん? お父さんからだ」
珍しくお父上様からメッセージが来ていてスマホを見て確認する。
『秘密の部屋とは何だい?』
『飛行車はどこに作られているのかな?』
……あ、そうだよな。分かるよな。




