将軍家からの秘密の相談
ガラガラ、ゴロゴロ。久しぶりに八郎も参加してのお散歩です。タロとジロも喜んでるね。
おっと、この一角はもみじだけを植えた一角。わざと落ち葉を残しているので真っ赤な絨毯みたいになっている。綺麗だねー。
「ウー!」
「あら?若さまもお気に召した様子」
「モミジュ!」
「ンモジー!」
千熊と阿子も、気に入ったみたい。阿子は目の前で紅葉を振って貰って喜んで、お手手をパチパチしているよ。
「キャイキャイ!」「ウキャー!」
庭の向こうでは、宗滴学校の生徒達がランニングしている。この間呼び出した参謀達も走っているね。
「アーウ!」
大声出して手を振ると皆んなで手を振り替えしてくれたよ。
「ン!ン!」
コッチは千熊が大喜びだ。
千熊は掴まり立ちならしっかりと立てる様になったので、膝をガクガクさせて喜ぶ。む!ならばオレもスクワットだ!
「若竹、キモし」「動きがキモし」
双子の姉ちゃん達はそう言うけど、えー、まだ動きがヘンかなぁ?
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散歩を終えたら、新右衛門さんが来てたよ。在富も一緒だ。
「シンエモンシャン!」
「シンモンシャン!」
「モーン!」
さっそく飛びつくオレ達、三連星。
「おっとっと!相変わらず、お元気ですなぁ」
新右衛門さんも、さすが武士。危なげなくオレ達をぶら下げてニコニコしている。
今日は宗滴ジイに相談があるらしい。なんでも冬の間に北陸への街道を整備したいらしいのだ。どうやら、伊勢街道の工事を見て来たらしい。
「鷹司の長櫃により運ぶ荷の効率は良くなりましたが、北陸を治めるにはまだまだ物資が足り申さぬ」
そこで、琵琶湖の北端にある塩津から敦賀に抜ける道、今浜から大垣や敦賀へ行く道、高島から小浜に抜ける道を拡張したいらしい。
「朝倉殿や六角殿も異論はござらぬ。だが、道が良うなれば攻められるのも容易くなるなど色々意見も出まして、そこで、宗滴殿のご意見をお聞きしたく、参上致しました」
なるほど、戦国の世だからね。防衛も考えないといけないんだね。
「ふむ。美濃ですな?」
「流石は宗滴殿、お分かりか?」
美濃?この間来た土岐さんが美濃の元守護だったよね?美濃は諦めて京職の勤めに専念したいって言ってたけど。
「うむ。浅井と斎藤が通じているやもとの知らせがあった。まだ確証は取れておらぬが。また、ここで大垣への道を拡張すれば、美濃が動揺しかねないのう」
「ええ、浅井だけでも厄介。これに美濃からの後詰めが有れば京はともかく近江は大荒れとなりましょう」
「かと言って、不破の関を閉ざす訳にも行かぬか」
オレ達、新右衛門さんをジャングルジムにして遊んでいるんだけど、よく良く真面目な顔して話し出来るよね。
「ふむ。蜷川殿。これは、爺いの独り言として収めて欲しいのじゃが……」
「承りましょう」
「来年の春、伊勢への街道が開く。琵琶湖でも証明された様に長櫃での運送は船でも問題ござらぬ」
「確かに、確かに」
「すると、伊勢から先の坂東へは、桑名を通らず三河に船で運ぶのが早いと思うのじゃ」
頭の中で東海道の地図を思い出している様子の新右衛門さん。
「確かに安濃津より三河に渡ればかなりの短縮となりますな」
「それでも、尾張や東山道があるので、大垣の重要性は薄れる事はあるまいがの。桑名などは大騒ぎとなるじゃろうな」
「確かに。清須や長島などにも影響が出ましょう」
「うむ。それを踏まえてじゃ。近江については、塩津から敦賀の街道だけに絞る事をお勧め致す」
「それは、また何故に御座るか?」
「目の前の湖上を大量のお宝が素通りするのじゃ。浅井も高島の小領主どもも焦るであろうのう」
「あ!桑名の如くですな!なるほど!ご教示ありがたく!」
いきなり新右衛門さんが平伏した物だから、オレ達がゴロゴロ転げ落ちちゃったよ。
「ウキャー!」「ブアッ!」「…………」
オレは咄嗟に丁髷を掴んじゃった。阿子丸は膝の上にいたので無事だった。千熊がお尻から落ちてビックリしていたよ。まあ、怪我する様な高さでもなかったからね。
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「シンエモンシャン、バイバーイ!」
「は!若竹丸様、千熊丸様、阿子丸様!バイバイで御座る!では、宗滴殿、これにて御免!」
新右衛門さんは、良い事を聞いたとホクホク顔で帰っていったよ。
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