この寺は裏切りの匂いがするぜ
下京に出来たばかりの能舞台があると言う。今日はそこで演し物があるので見に行く。なんでも、パパンと在富のお友達が出るんだって。
ガラガラ、皆んなで牛車に乗ってお出掛け。大宮大路から三条大路に入り、油小路で南に下る。そこにあるお寺さんに能舞台があるらしい。ガラガラ、車のまま、お邪魔しまーす。ガラガラ。
ワイン作りの時みたいに、車の中から観覧するスタイル。
能舞台ってのは観客から見て左に渡り廊下があって、右に舞台がある。既に楽隊は舞台の端に揃っているな。
普通と違うのは舞台の中央に仏像の台座みたいなのが置かれている事だ。オレも詳しくはないけど、能や狂言て大道具使うっけ?
オレが首を傾げていると楽隊の調律が出来た様だ。いよいよ始まるぞ。
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一瞬の静寂の後、舞台の端にあった大筒がドカン!と鳴ると、舞台中央の台座に一人の男が立っていた。
サングラス(⁉︎)に、坊主頭。短く切り揃えたヒゲ。大きな数珠を肩にかけ、大きく胸を肌蹴ている。腰には虎の毛皮。手足にも数珠が絡み付いている。ブレスレットやアンクレット代わりかな?もちろん、指輪もジャラジャラ付けてる。ワルの匂いがプンプンするぜって感じ。エ?エ?
「イェー!みんな来てくれてありがとう!」
「ジョーキィ!バサラ衣装最高ー!」
「ありがとうな!お前も最高だぜ!」
男臭いバリトンボイス。ウチの侍女達もメロメロになってる。
「ヘーイヘーイ、ヘーイ、ヘーイ!ミンナも最高だぜぇ!」
男が客を煽っている間に、渡り廊下から尼さんや小坊主が駆けてくる。コーラスやバックダンサーだな。
「行くぜ!『オレの名前!光室承亀!』」
おい、コレやらかしたの忠冬だろ?今は戦国時代なんじゃないのか?と、オレが睨みつけるとアッチアッチと指差している。え?在富なの?
「オレは六角!近江の生まれ!佐々木六角!源の朝臣!」
♪ ダンダンダンダン、ダン!
「オレの名前は?」「「ジョーキィィ!」」
「コーシツ?」「「ジョーキィィ!」」
男は広場の侍たちとコールアンドレスポンスを繰り返してる。この一体感は一回や二回練習したぐらいじゃ出ないぞ。長年慣れ親しんでないとこうはならない。
〽︎ いつだぁぁって〜、みんなと、あゆぅんできぃたぁ〜
ついに歌い出しちゃったよ!
「オレら生まれは、近淡海」
「琵琶湖の辺りぃ、地元の誇りぃ」
「オレは霜台!ダン!ジョゥ!ダイ!」
「オレは霜台!ダン!ジョゥ!ダイ!」
♪ ダンダンダンダン、ダン!
「それが六角!」「「ジョーキィィ!」」
「オレが六角!」「「ジョーキィィ!」」
「高く天に届け!オレらの、乱風!イェー!」
ぐぅ!こうなったら、ハイハイ三連星で対抗だ!行くぞ!
「ダァダァダァ!」
「「ダァダァダァ!」」
「ダァダァー!ダ!ダァダァ!」
「「ダァダァー!ダ!ダァダァ!」」
「ダァダァダァ!」
「「ダァダァダァ!」」
「ダァダァ!ダ!ダァダ!ダァダァダァ!」
「「ダァダァ!ダ!ダァダ!ダァダァダァ!」」
「さすが鷹司のワカ!いいバイブスが伝わってくるぜ!」
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