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普通の飯屋じゃなかったけど、次の店も普通じゃないのかな

アクセスありがとうございます。


「カイ、ここだよ〜」


 街の賑やかな通りに面した飯屋なのに、店内に入った俺の視界には客が数えるほどしかいないことに違和感でいっぱいだった。


 そんな俺の気持ちも知る由もないシマチは店員に聞かずそのまま勝手に空いている席に座り手招きをするため、俺もそのまま流れに任せシマチの隣りに座るとスミハが俺の隣りに座り、対面にはフェンリル娘とエルフ娘が並んで座ったところでシマチは1人席を立ち調理場があるだろうカウンターへと向かった。


「マスター! いつものやつを5人分お願いね!」


「・・・・あいよ」


 かなりの時間差があって微かに聞こえた年配の男の声にシマチは笑顔で頷き、そのまま俺の隣りの席に座る。


「シマチ、いつものって何を頼んだの?」


「それは〜できてからのお楽しみだよ? それにお店のメニューは、あそこの壁に貼ってあるだけだしね」


 シマチが指差す方向に視線を向けると、たしかにメニューが書かれた紙が貼ってあり目を凝らし読んでみると全てが肉料理だった。


「・・この店、肉料理しかねーじゃないか!?」


「んにゃ?」


 何か問題でも?みたいな反応するシマチを俺はジト目で見いていると、店の隅っこにいたはずの女給仕がいつの間にかテーブル横に立っていたことに遅れて気付き顔を向けると、悲しそうな表情で俺を見つめていたことに反射的に俺は謝った。


「ご、ごめんなさい・・」


「・・いいのよ。うちのお店は、お肉しかないから」


「はぃ・・ほんと、ごめんなさい」


「ふふっ・・素直な子は好きよ。溺れるほど、食べてってね」


「はい・・」


 顔面蒼白で今にでも倒れそうな細身の女給仕の静かな圧に瞬殺されかけた俺は、考える前に言葉が口から吐き出されたのを後から自覚し、ゆっくりとした足取りで再び店内の隅へと戻る彼女のフラつく姿を見届け、椅子に座り視線が重なった時に見せた笑顔に会釈することしかできなかった。


「カイ、あの人はマスターの奥さんだよ」


「そうなんだ・・」


「うん。シマチも最初はいつもお話ししていたけど、常連になったら何故か話してくれないんだよ」


「へぇ・・変わった人だね」


 マスターの奥さんだと聞いた俺は、視線を隣りに座るシマチの横顔に向けたわずかな時間だったはずなのに、不意に声が聞こえる。


「・・昔からよ」


「・・・・」


 1秒も満たない時間であの距離を移動する奥さんが怖くなり、無言のまま見つめていると俺に向けていた顔をゆっくりと背後にある調理場に向け口を開いた。


「ネコちゃん、お楽しみの料理ができたみたいよ」


「やった!」


 シマチは勢いよく立ち上がり調理場のカウンターへと向かうと、スミハ達は少し遅れて立ち上がりカウンターへと向かったため俺とマスターの奥さんだけが取り残された形となり少し気まずい。


「ねぇ・・ボクの名前は?」


「・・えっと、カイです」


「そう・・ボクは貴族の子でしょ?」


「ど、どうして?」


「ふふっ・・ボクの瞳を見たら・・ね?」


「そうですか・・カイ=フィフスアンガーです」


「ありがとう。わたし、カトレア・・素直な子は好きよ? お姉さんは・・・・」


 カトレアさんは笑顔で微かに聞き取れる声量で呟きそのまま隅に置いてある椅子へと戻って行くと、入れ違うようにシマチが戻って来た。


「カイ、お待たせ」


 4人がそれぞれ大皿に高く盛られた肉料理を持ちテーブルに置くと、小皿も置けない程の状況になり全部食べ切れるのか心配する俺をよそに4人娘がキラキラした瞳で俺を見ている。


「「「「 ・・・・ 」」」」


「ん? 食べないのか?」


「いいのかにゃ?」


「お、おう」


 俺の言葉を皮切りに4人娘は夢中に高く積み上げられた焼き立ての肉を手に取り食べ始める。


「すげぇ・・な」


 分厚い肉を俺が1枚食べ終わる時にシマチ達は2枚目を食べ終えるペースで3枚目の肉へと手を伸ばしていた。そんな目の前の肉に夢中になっているシマチ達の目を盗み、俺は食べきれない分の肉を皆の皿へと移し食べれる分だけ確保した。


「ふふっ・・追い肉よ」


 ガチャガチャと食器が擦れる音が近付いているなと思いながらも、あえて視線を向けず食事を続けていた俺は耐えれず視線を音の方へと向けると、細い両腕をプルプル小刻みに震わせながらカトレアさんが汗ばみ笑顔でガシャンとテーブルに置いてある皿の上に置いた。


「だ、大丈夫ですか? カトレアさん」


「はぁ・・はぁ・・平気よ、カイちゃん」


 カトレアさんは相変わらずとても小さな声量で呟いた後にゆっくりと席から離れていく背中を見送り、満腹だったけどせっかく運んで来てくれた肉の1枚を取り、なんとかゆっくり完食したところで山盛りだった大量の肉は4人娘の腹に収まりテーブルから姿を消していたのだった。


「・・・・次は、あの店に行く」


 満たされ過ぎた腹を落ち着かせるため静かに過ごしていると、正面に座る銀髪銀目のフェンリル娘は口の周りを肉のタレで汚れたまま立ち上がり呟く。


「あの店って?」


「知りたければ、我について来い人間・・・・行くぞ、3人とも」


「な、なんだよそれ? って、ちょっと待てよ」


 店を出ようとするフェンリル娘にシマチ達が同行することに、慌てて俺はカトレアさんに金貨2枚を支払い店を出て追いかける。


「カイちゃん、またきてね〜」


「はい、また来ますねカトレアさん」


 店先で手を振り見送るカトレアさんと別れ通りを歩く4人娘を追いかけると、店先に簡易な木箱に座り酒を飲む冒険者達で賑わっている酒場へと躊躇うことなくフェンリル娘を先頭に入って行き、それに続くように俺も入ると賑わう店内の空いているテーブル席に座らずなぜか店の奥へと歩くフェンリル娘達だった・・・・。

次回は、酒場でのシマチ達の酒乱?の回になるかならないかです。


評価&感想ありがとうございます。


また、そのうち更新しまーす。


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