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酒の席であの子と思わぬ急接近をして危うくその先に行くところでした

アクセスありがとうございます。


 酔っ払い冒険者が占拠している酒場の狭いテーブル間隔を縫うようにフェンリル娘が店の奥へと進み突き当たりを曲がった先に個室があり、4人は当たり前のように座り俺を見る。


「・・ここの席は、使っていいのか?」


「ふんっ・・なんの問題もない」


「そ、そうか・・」


 俺の質問に答えるフェンリル娘は、そのまま視線をテーブルに置いてある店のメニュー表を見て何にするか迷っているようだ。


 そんな彼女の口の周りには、乾き始めた肉のタレがついていて気になっているのかたまにペロッと舐めて味の余韻に浸っているようだけど、せっかくの美人が台無しだと思い遅れてきた店員がテーブルに置いていった濡れタオルで口の周りを綺麗に拭き取る。


 俺の行動にビックリしたフェンリル娘は、濡れタオルを口に当てた時にビクつきジロッと睨むもスッと視線をメニュー表へと戻し素直に口を拭かれ大人しくなると、いつの間にか目を瞑りされるがままになっていたことに俺が逆に驚いた。


「・・拭き終わったよ」


「・・・・うむ。もう終わりか」


 なぜか口を拭き終えたことに機嫌が少し悪くなったような素振りを見せるフェンリル娘だけど、きっと肉のタレの味が楽しめなくなったことが原因だろうと思い、ここは素直に謝ることにした。


「ごめん・・」


「そ、そうではない・・が」


 謝ったけどフェンリル娘は不服そうに俺を見るも、いつもの冷淡な銀色の瞳でなかったことに俺は気付かず話題を変えた。


「えっと、とりあえず何を注文するか決まった?」


「「「「 タル!!!! 」」」」


「えっ? タル? なに・・それ?」


 タルという謎のメニューがあるのか知らないけど、メニュー表を見ていたフェンリル娘達がそういうならと思い俺は店員を呼びタルを注文した。


「タル・・ですね」


「タル・・です」


 タルを注文された店員は、俺達を見渡し何か探っているようだけど注文を受け付けてくれる。


「わ、わかりました。その、前払いで金貨1枚をお願いします」


「たかっ! いい値段するね」


「はい、タルなので」


「あぁ、タルだからか」


「はい・・」


 俺よりは年上だろう男店員に金貨1枚を手渡し、そのタルという高級な食べ物を待つこと数分後に廊下からゴロゴロと何かを転がす音と男達の会話が聞こえてきた。


「おい、大事な商品だ・・壁にぶつけるなよ? そうだ・・女のように優しく扱え」


「はい、はい・・センパイ。き、緊張して手が・・」


「お、落ち着け・・お前ならできる」


「が、頑張り・・ます」


 ゴンッ・・


「ば、馬鹿野郎! そこは右手で優しく・・」


「あっ・・はい、センパイ・・さすがです」


 

 いったい彼らは何を運んでいるのだろうかと、気になり我慢できなくなった俺は席から上半身を廊下へと出すと、男2人が大きな酒樽を転がしている姿だった。


「・・・・えっ? えぇ!? タルって、まさか酒樽? ウソだろ?」


 汗だくの男2人が転がして来た酒樽は俺達が座る個室の前に止まり、テーブル横にタルを置く専用置き台が位置決めされると男2人は腕の筋肉を震わせ声を漏らしながら持ち上げ大きな酒樽を置き台に置いてロープで固定する。


「ふぅ・・お客さん、待たせたね!? 当店自慢のタルだ!」


 一仕事を終えた職人のように爽やかに立ち去って行く店員の大きな背中を見送った後に、すでに満腹の俺の目の前には酒場の裏の倉庫に積み上げられ保管されている物と同じ酒樽は、決して5人で飲む量ではない。


「・・・・フェンリル娘さん、コレ本気なの?」


「うむ、我にとっては嗜む量だ」


「な、中身を知ってて?」


「人族はたしか、エールと呼んでおる酒だ・・なかなかの美味である」


「・・・・」


 ペロッと唇を舐める仕草を見せるフェンリル娘さんは、もう待ちきれない様子でテーブルに置かれたジョッキを手にして自ら5人分のエールを樽のコックを開き器用に注ぐ。


「では、今夜は久しぶりに宴を始めよう」


 ジョッキを軽くぶつけ合う音が個室で綺麗に響き、4人娘は無言で息継ぎも無く1杯目のエールを飲み干した後に熟練冒険者のオッサンが吐き出すような低い声を漏らし、天井を黙って見つめ動かなくなったと思いきや思い出したかのように酒樽に群がり休むことなくエールだけを飲み続け、大きな声でバカ話をして楽しそうに盛り上がっている光景を俺は黙って見守っていると気絶するように急に4人娘はテーブルに顔を叩きつけ動かなくなった。


「お・・おい。寝たのか? まだ今夜の宿を決めてないんだけど・・」


 4人に絡まれることなくマイペースでエールを飲んでいた俺は、途中に水を飲みながらいたため3杯目だけど思ったほど酔いはまわっていない。


 しばらく放置して4人が起きるのを待っていると、注文を聞いてきたあの店員が申し訳なさそうに席に来て視線が重なる。


「あの・・そろそろ閉店時間なので・・」


「あっそうか・・もうそんな時間?」


「はい・・」


「今、叩き起こすから」


「はい、お代は先にもらっていますので失礼します」


 用件だけ告げて店員は他の席へと去って行ったところで俺は、4人の肩を揺らす。


「おい、もう帰るから起きてくれ・・」


 顔を少し紅く染めている4人は気持ち良さそうに寝息をたてているため、無理矢理起こすのは可哀想だと一瞬だけ頭を過ぎるも、ここは酒場だから帰らない訳にはいかないため強引に俺は4人を起こそうと最初にフェンリル娘へと近づく。


「おい、もう閉店時間だから帰るぞ? 宿も決めてないし」


「んあ・・我の住処になんぬぁ?」


「ちょっ・・酔ってんじゃ・・イタタタ」


 飲む前に嗜む量だと言っていたフェンリル娘は、どう見ても泥酔に近い状態で奇跡的に目を覚ますと俺の首に腕をまわしそのまま引き寄せ、壁際に俺を倒し上に覆い被さってきて間近で銀色の瞳に見つめられる。


「お主の瞳は赤いな・・我の瞳は、んぬぁ・・・・」


 途中から呂律が回らず何言ってるのかわからなくなり、しばらく黙り込んだフェンリル娘が急に暑いと言い出しモゾモゾとシャツを脱ぎ始め、白くきめ細かな肌を見せつけ双丘の下側が見えかけたところで俺は動かせるようになった両腕で彼女の腕を掴み止める。


「ま、待て・・このままだと見えるから」


「んぬぁ? 我は暑いのだ・・邪魔するなら、お主が我を冷やせ・・」


 彼女の腕力に勝てずシャツをスポッと脱いで上半身裸になってしまったフェンリル娘は、今まで見たことのない笑顔で俺を見下ろしそのまま身を委ねるかのように覆い被さってきた。


「んむっ・・」


 倒れ込んできたフェンリル娘と頭突きする格好となると思い反射的に目を瞑った直後に、ヒンヤリと冷たくて柔らかい感触に包まれると同時に口で柔らかいものを咥えてしまった。


「んぁ・・」


 耳元に熱い吐息を感じつつもフェンリル娘の体をなんとか押し上げつつ口に含んでしまったものをゆっくり出し、その正体を知った俺は衝撃のあまり開いた口が塞がらなかった。


「・・・・」


「・・お主よ、我の胸を・・しかも先っぽを咥えたな?」


「は、はい・・・・でも、これは不可抗力でひて・・」


 銀色の瞳に見つめれれる俺は否定しようにも彼女の双丘の先っちょと俺の口には、細く長い透明な糸で繋がっているのを互いに見てしまっている。


「言い残すのは、それだけか?」


「えっと・・ほんのり甘かったです」


「・・・・ふふっ合格だ。お主を我の主人と迎えよう」


「はい?」


「だ・か・ら、お主を我の主人だと言っておるのだ。恥ずかしいから二度も言わぬ」


「あっ・・・・はい」


 フェンリル娘は再び俺の首に腕を回すとゆっくりと引き寄せ俺を抱きしめる。


「うむ・・まさか、こんな形で認めてしまうとは夢にも思わなかった」


「ん?」


 フェンリル娘が呟いていることに理解できない俺はとりあえず黙ったまま聞いていると、双丘の触れていない方を彼女の方から咥えるよう無言で誘導されパクッとしてしまう。


「んぅ・・どんな味だ?」


「・・こっちも甘いよ」


「よしよし・・間違いない」


 グイグイと身体を寄せてくるフェンリル娘にされるがままになっていた俺は、よくわからないうちに甘い時間を過ごしていたようで、まだ寝ているシマチを俺が背負いエルフ娘とスミハをフェンリル娘が背負って酒場を出て夜の通りを歩き宿屋を探す。


「宿・・空いてるかな」


 この時間から宿屋を探すのは手遅れではと不安を吐露し、酒場の店員に可能性がありそうな宿屋を教えてもらい辿り着いた。


「あの、5人なんですけど・・」


「もう満室だよ、悪いね」


「ですよね〜」


 1軒目は予想通り断られ、2軒目は1部屋しか空いてないと断られ今は5軒目の宿屋に入ったところだ。


「すいません、今夜は部屋空いてますか?」


「・・・・」


 俺達を無言のまま見定めるように見る宿主の男は、しばらくしてコクリと頷いてくれた。


「よかった・・5人でお願いします」


「・・・・」


 受付の後ろの壁から部屋の鍵を1個取りカウンターに置くも、無言のまま指先をカウンターにある張り紙に指差し書いてある内容を俺は理解し口にする。


「1人銀貨3枚。5人で15枚で、飯は朝のみ・・わかりました」


 マッジクポーチから銀貨15枚を取りカウンターに置くも、無言のまま宿主の男はサッと回収しニヤリと笑いカウンターを指先で軽く叩き、自然と指先に視線がいってしまう。


 トントン・・トン


 どうやら宿屋の間取り図で部屋の場所を教えてくれたようだ。言葉で伝えたらわかるのにと思いながらも礼は伝える。


「ど、どうも・・そこが泊まる部屋ですね」


「・・」


 俺の問いにコクリと頷き右手でシッシッと追い払われるような態度を取られた俺は、そのまま受付から離れ部屋に入った後にあの男がニヤリとした理由がわかってしまった。


(・・なんだ横の部屋は。半分以上がベッドに占領されているじゃねーかよ)


「お主よ、早く入らぬか」


 廊下で待つフェンリル娘に背中を押され部屋に入ると、2人を担いでいたフェンリル娘は大きなベッドにエルフ娘とスミハを放り投げたため俺も真似してシマチをベッドに投げると、数回バウンドしてからクルッと身体を丸めて猫のようになっていた。


「俺たちも寝るか」


 ふと呟いた俺の言葉に、フェンリル娘は反応し身体を寄せてくる。


「お主よ・・」


「な、なに? ってか、瞳が光ってないか?」


 フェンリル娘が持つ銀色の瞳は、幼き頃に見たことがある月夜に照らされた雪のように白銀に光っていたのだ。


「ふむ・・我は銀狼族でありフェンリルの末裔でもある。それゆえ、夜の暗い部屋でもお主の表情がよく見えるぞ?」


「そうか・・俺は、綺麗な瞳しか見えないけどな」


 パチパチと数回瞬きをするフェンリル娘が何か囁いていたけど、聞き取れなかった俺は何か会話をしたような感覚のままいつの間にか意識を手放していた・・・・。

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