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Chapter1-32 伝承の影にいた者


 スクリーンに映し出された星系図と大小ささまざまないくつかの光点。

 それは遺跡に残っていた端末を解析して得られた、当時あの場所で行われた外部との通信の痕跡を基に割り出した、他の拠点の座標であった。


 「ウィータンの中でも同様の遺跡を見つけることはできるでしょうけど、次に探すのならこの星の外を目指すべきね。

  そうすれば毒素も関係ないし、当時そのままの状態で遺物が見つかるかもしれないわ」


 スクリーンの方を向いていたクロラが参加者達を振り返って言う。

 

 「さっそく調査隊を手配しよう」


 エイジャックスはクロラの言葉を聞くやいなやすぐに頷いた。

 それから彼は立ち上がり、提示された座標を確認すべくスクリーンに歩み寄る。

 彼は星系図の中央に置かれたウィータンを基準に、その周囲を取り囲むように散りばめられた光点を順に眺めていった。


 「思ったよりも数が多いな」


 スクリーンを見上げながらエイジャックスは言う。


 「全部で四十二箇所よ」

 「そんなにあるのか!?」


 エイジャックスはクロラの言葉に思わず眉を顰める。


 「クロラ、この光の大きさの違いは?」

 「それは通信した回数の違いよ。

  基地と通信が交わされたポジションに光点を打っているの。

  光が大きいほど、やり取りを多く行っている痕跡があった場所というわけね」

 「なら、大きな点がある場所ほど当時の要所であった可能性が高いというわけか?」

 「ええ。そう解釈してもらって構わないわ」


 クロラは頷いて言った。

 エイジャックスは小さく唸り、自分の顎のあたりを軽く撫でた。


 「ふむ……しかし、どこから手をつける?

  ざっと見ただけでも人手が足らんぜ」


 「そうね……。

  なら、光が大きくなっている場所に向かうのがいいと思うわ。

  例えば、このあたりね」


 ウィータンにほど近い小惑星帯に重なるように位置する光点を指してクロラは言った。

 エイジャックスは彼女の指先に顔を向け、納得したように頷いた。


 「これは…、トレヴァースを見つけた場所のすぐ近くじゃないか。

  いくつか調査記録があるから、他の場所を調べるよりも効率はいいかもしれないな」


 エイジャックスはそう言って自分の座っていた席へ戻り、そこで調査隊の手配を進め始めた。


 報告会も山場を過ぎ、クロラはこれまで出た情報に付随する細かな分析結果を述べていった。


 遺跡の正体は旧ウィータン人によって築かれた軍事拠点であり、そして施設の歴史の末期において、内部では旧ウィータン人とコスモリアン、それに地球人をも加わった戦闘が起こっていた。

 発見された遺骨から得られる情報は大きい物であった。

 しかし地球人が当時からウィータンに存在したという事実の背景はまだわからぬことが多く、それについては今後の調査に持ち越されることとなった。


 この時から既にウィータン人が祖先より伝え聞いていた伝承は揺らぎ始めていた。

 コスモリアンによる支配下にあった旧ウィータン人の抵抗と解放の歴史は、二種族で完結していた話ではなく、そこにもう一種の勢力として地球人が存在したことが明らかになったのである。

 彼らの存在は祖先にどのような影響を与えていたのか、そして何故その存在が欠片としても伝わっていなかったのだろうか。


 ウィータン人、コスモリアン、地球人。

 失われた歴史の登場人物を把握したこの日こそが、ウィータン航空宇宙局の本当の歴史調査の幕開けであった。


いつも足を運んでくださりありがとうございます。

次回更新は4月9日午前2時ごろの予定です。


何か刺さる部分がありましたら、感想や評価などいただけると嬉しいです。

Twitterで更新情報など出してますので、よかったらどうぞ!

/脳内企画@demiplannner

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