001話 回想
この作品を選んで、お読み頂きありがとう御座います。
誤字脱字があると思いますが、出来れば誤字報告して頂ければ幸いです。
この物語はフェイクションです。
物語中の世界観は独自の世界観で書いておりますので、法律、慣習、習慣、常識等に異質な部分が多々ありますが、其れを含めて楽しんで読んで頂きたいと思います。
都心も日が暮れ赤くオフィスビルが染まる頃、岬美玲は今日も何事もなく1日の業務を終えてパソコンの電源を落とし、フゥとひと息入れ眉間を揉む。
榊商事株式会社に入社し3週間の研修を終え、マーケティング企画部に配属されて早1ヶ月が経つのかと思い返す。
そんな事を想いながら肩を回してコリを解くと、大学時代からの親友でもある隣の席に座る同期の佐々木玲から誘いを受ける。
「お疲れ、美玲これから何時もの居酒屋にでも行かない」
「うん、そうね、祖母に連絡してみる」
美玲は玲からの誘いに乗るつもりでスマフォを手に取り祖母に連絡を入れる。
「もしもし、お婆ちゃん、これから玲と食事に行くから晩御飯は要らないわ」
「そうかい、でも、余り遅くならない様にね」
「うん、分かった」
美玲は祖母に用件を伝え通話を切る。
美玲はスマフォをバッグに入れて、玲と2人でマーケティング企画部のオフィスから出てエレベーターホールへ向かう。
友人の佐々木玲は榊商事株式会社の社長である佐々木敬の娘で立派な社長令嬢でもあり、美玲が榊商事株式会社に入社できたのも玲の推薦が合ったからでもある。
社内では佐々木玲は社長令嬢ではなくマーケティング企画部の切れ者の二つ名を持つ岩崎里美部長が激愛する姪として、内気で可愛い玲に悪い虫がつかない様に社内の若い男性社員達から保護しているが仕事面では厳しく接している。
佐々木玲は見た目は美女というよりは可愛い感じの童顔でありスタイルも良く、周りからも好かれ男性からもモテるタイプではあるが、極端な人見知りで他人付合いが苦手であり、気が許せる友人と言えるのは美玲だけである。
美玲と玲の出会いは早稲田大学に同じ経済学部に入学し同じ教室で偶々隣の席に座り、講義が終ると直ぐに玲が前の席に座る男子学生からナンパをされ困っていた時に割って入り追い払って上げた時からの付合いである。
美玲はその時から黒縁の伊逹眼鏡を掛け化粧もせず前髪を伸ばし地味な格好をしており、気が強く責任感も強く困った人を見ると放っておけない性分で、つい隣で男子学生にナンパされて困っていた玲を助けた。
玲は美玲にナンパ学生から助けて貰ってからは美玲の明るく実直な性格に惹かれて依存してしまい、大学に居る間は常に美玲と一緒に行動をする様になる。
美玲と行動する様になってからは少しずつではあるけど極度の他人見知りだったのが改善する様になり、話し相手の目を見て会話する事が出来なかったのが、大学を卒業する頃には相手の目を見て会話が出来るようになっていた。
榊商事株式会社のオフィスビルを出ると真っ直ぐ2人で榊商事株式会社の社員達が良くお洒落な居酒屋に行き、店内に入ると個室に入り先ずはビールをジョッキーで2杯を先に持って来るように伝えてから御摘みを注文する。
店員が先に2杯のビールジョッキーとサービスのお浸しを持って来ると、美玲と玲は声を揃えて『今日も1日お疲れ様、乾杯』と言ってジョッキーを軽くカーンと鳴らしてから一口飲む。
「う~んん、あ~、仕事終わりの一杯は格別ね」
美玲はビールジョッキーの中身を半分程一気に飲み干し感激する。
「うふふ、相変わらず好い飲みぷっりね、ところで美玲、敬兄さんから最近連絡とかあるの」
「ううん、無いわ、忙しいでしょ、ニューヨークに行ってるみたいだし」
「はぁ~、全く気にしてないみたいね、一応二人は法律上の歴とした夫婦でしょう」
「うん、そうみたいね、でも3年契約の別居結婚だもん、別に気にしても仕方がないわ、期限が来たら婚姻関係は解消されるもの」
「美玲、ごめんね、私があのパーティーに誘ったばかりに、まさか敬兄さんのお見合いパーティーだとは知らなくて、ただ敬兄さんから美玲をまた連れて来てくれと頼まれただけだったから」
「ううん、私も何時も玲にパーティーとかに誘われて、美味しいご馳走をタダで頂いてたから、あの時はまさか敬の罠だとは思わなかったけど、でもそのお陰で母の葬儀も出来たし、大学も無事に卒業できたから」
美玲は榊敬のお見合いパーティーに参加し、当時は生活苦であったが為に5千万円の契約金で3年間の契約結婚を結ぶことになり、契約期間満了まで残り1年半程である。
榊家は財界の名門一族であり、次期当主になるには28歳までに伴侶を娶り、婚姻後3年間で当主が認める実績を上げなければならない仕来りがあった。
敬は次期当主に成る為に28歳になるギリギリで美玲と契約結婚を結んだ翌日には当主である祖父の廉造の命を受けてニューヨークへ飛び発った。
当時の美玲は裕福な家庭ではなく唯一の働き手であった母の美鈴が子宮頸癌で入院してしまい、当時大学3年生で就職も今の会社に内定したばかりの冬で、生活もかなり苦しくなり大学を中退する事まで考えていた。
「でも、どうなるのかしら契約期間が満了したからと言って、すんなりと離婚が出来るか如何か分からないわよ、美玲は如何したいの」
「如何したいのと言われても、なる様にしかならないわよ、それに私に選択肢があるとは思えないわ」
美玲は名門財閥の榊家に逆らう事は出来ず、先の事は敬が如何するのか一任するしかなかった。
「う~ん、何だか美玲って達観してるわね。でもお爺様のお気に入りなのよ、それで急で申し訳ないけど明日なんだけど、私と一緒に連れて来いと言われたの、如何する行く」
玲は敬兄さんが美玲と本当の夫婦になることを願っており、ただ美玲が敬兄さんに対し達観している事に内心不安を抱いている。
「如何するって、お爺様に呼ばれたら行くしかないでしょ。はぁ~、何で私みたいのがお爺様にお気に召したのか謎よね、ましてや敬とは契約結婚なのよ」
美玲としては榊家とは住む世界が違い過ぎるので、出来れば榊家とは穏便に縁が切れる事を願い、それ以上の事は微塵も考えていなかった。
「うふふ、それは多分だけど美玲が物事に対して達観してるからよ、何と言うか欲がないからじゃないの」
「何それ、私にだって欲はあるわよ、それなりには良い生活がしたいし幸せに暮らしたいし、ただ身の丈以上の事は望まないだけよ」
「ふ~ん、そうなのかな、まぁ、良いわ、何時もの所で10時に待ち合わせね、アッ、服装はワンピースでお願いね」
玲はチョッと膨れた美玲を見ながら待ち合わせの時間を伝えて、微笑み唐揚げを一口食べてからビールを飲む。
玲は美玲と約束を交わしてから社内の先輩方の悪口や仕事の不満等を2人で愚痴ってストレスを解消しながら、2時間程過ごしてから居酒屋を後にして帰宅する。
美玲は玲と別れてから地下鉄の駅まで歩き、それから地下鉄に立って乗ってから明日の6度目の榊家本邸への訪問となってしまい憂鬱になる。
地下鉄の車窓から外を眺めながら、今年の新年の挨拶に行って以来となるお爺様に会っても何事もない事をただ祈るだけであった。
敬と知り合ったのは大学2年生の時に玲の誘いで行った財閥系の令息令嬢達の懇親会パーティーに参加した時である。
玲はそういう集りが苦手だから一人で行くが憂鬱だからと同行し、そこで敬と初めて会い挨拶を交わしたが切っ掛けである。
玲は従兄でもある敬には親しくて甘える様に会話を楽しみ、敬も又玲を妹の様に思っているのか優しくエスコートしていた。
そのお陰で美玲は玲の相手をする必要が無くなり暇になったので、ただひたすらテーブルの上に並べられた普段で食べられない美味しい料理をひたすら食べていた。
その時に食べた美味しい料理に釣られ、美玲は玲の誘いがあった時は又美味しい料理が食べられると思い、玲からパーティーの誘がある時には応じていた。
敬ともパーティーで2度3度と会い挨拶を交わし、その後は直ぐにビュッフェ料理に舌鼓を打つのが恒例となっていた。
しかし、大学3年生に上がった4月に母が子宮頸癌で入院してしまい生活も苦しくなり、大学を辞める事を悩んでいる時に玲から誘われ最後の為るかもと思いパーティーに参加した。
その時に4度目となる主催者の敬と会って挨拶をしてから、直ぐにビュッフェの料理を玲と2人で無我夢中で食べ始めた。
暫らくしてから敬が傍まで来て手を繋がれてメインステージに連れて行かれ、その場で敬と2人で婚姻届にサインする事になった。
玲が嬉しそうに祝福するので断る雰囲気では無くなり、敬から契約結婚に応じれば契約金が5千万円だよと耳元で囁かれた。
美玲は当時生活苦であったので思わず3年間の契約結婚の契約書と婚姻届にサインをしてしまい、翌日には口座に5千万円が振り込まれていた。
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