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七日だけの島  作者: カトーSOS


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第15話 来ない

第15話 来ない


 七日目の朝が来た。


 窓の外は、昨日までと同じように明るかった。


 隣では恒一がもう起きている。


 顔を洗い、服を整え、台所で水を飲む。


「起きた?」


「起きた」


「今日、帰るんだっけ」


「ああ」


 直人はベッドから起き上がり、バッグの中身を確認した。


 着替え。


 財布。


 充電器。


「何時の船?」


「昼前のやつ」


「じゃあ、そろそろだな」


「うん」


「送ろうか?」


 直人は少し考えて、首を振った。


「いい。バスで行くし」


「そっか」


 バッグを閉じる。


「じゃ、行くわ」


「ああ」


 恒一も立ち上がった。


「気をつけてな」


「うん」


「帰ったらちゃんとゼミ出ろよ」


「うるせえな」


「卒業しろよ」


「知ってるよ」


 二人で少し笑った。


 直人はバッグを持った。


「じゃあな」


「ああ。またな」


 アパートを出た。


 朝の空気は少しひんやりしていた。


 バス停まで歩く。


 小豆島に来た日と同じ道だった。


 曲がる角を、もう知っている。


 塀の向こうに何があるのかも、少し知っている。


 バス停には誰もいなかった。


 しばらくして、年配の男が一人来た。


 バスが来る。


 直人は乗り込んだ。


 窓際の席に座る。


 店の少ない道。


 軽自動車。


 家。


 蔵。


 景色が後ろへ流れていく。


 直人はバッグの持ち手を握った。


「また明日」


 澪はそう言った。


 だから、来る。


 たぶん。


 バスを降りた。


 港は海の匂いが濃かった。


 観光客らしい人が何人かいる。


 荷物を引く音が、コンクリートに響く。


 直人は改札の少し手前で立ち止まった。


 まだ時間はある。


 人が出入りする。


 売店へ行く人。


 ベンチに座る人。


 チケット売り場へ向かう人。


 直人は入口を見る。


 違う。


 また人が来る。


 違う。


 時計を見る。


 まだ時間はある。


 風が吹いた。


 海面が揺れる。


 遠くに船が見えた。


 直人は入口を見る。


 来ない。


 船が近づいてくる。


 待っていた人たちが荷物を持ち始めた。


 直人はそのまま入口を見ていた。


 来ない。


 係の案内が流れた。


 乗船が始まる。


 人が列を作る。


 直人は動かなかった。


 もう一度、入口を見る。


 誰も来ない。


 直人は息を吐いた。


 列の後ろに並んだ。


 チケットを出す。


 フェリーに乗る。


 窓際の席に座った。


 港が見えた。


 さっきまで自分が立っていた場所も見える。


 船が動き出した。


 直人はまだ港を見ていた。


 澪は来なかった。


 港が離れていく。


 島が離れていく。


 直人は窓に肘をついた。


 六日目に誘った。


 七日目に、澪は来なかった。


 それだけだった。


 フェリーは島を離れていった。

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