いつかに見た君との旅立ち
小説初挑戦の秋風心彩です。
少し気分転換に携帯のメモなどに書いてたというのが事の始まりでした。
劣る所ばかりでしょうが、優しいお心持で呼んでくれると幸いです。
夢を見た。あの日、僕の村で起こった災害の。
「あ、起きたのか。随分と早いお目覚めだねぇ。」
少し強張った声。部屋を見回して窓の前。オレンジ色の髪を一つに束ねたお顔立ちの良い30代前半(には見えない)の女性が僕を見ていた。
「タオ、お腹空いた…。」
起きてすぐからお腹がグーグー鳴っているのに気づいた。うーむ、目覚めは最悪だな。
「あぁ、準備はしてあるよ。腹ごしらえが終わったら町まで薬品を調達してきておくれ。」
「分かった。」とは言いつつ少々面倒くさいと思う。
ちゃっちゃと食事を終わらせ町に出掛ける準備。
黒のパーカーに走りやすいズボン(こういうのを何と呼ぶかは忘れた)を身にまとって、愛用の短剣を装備。
「行ってくる。」それだけ言って小さな家を出る。
「《vitesse》」
魔法を小さく呟くと足が軽くなって走るスピードが上がる。
こんな簡単な魔法しか使えない僕は本当に弱いなぁ。
他の国に行けばもっと上位魔法が使える人達に会えるのだろうな。会ってみたい。
そして、僕もそれだけの魔法が使えるようになって強くなる。
そうすればもうあの時のようなことは起きなくなる。
僕はそう信じて今まさに魔女の家に居候しているのだ。
と、森を抜けて川を跨いですぐの町に到着した。
ここは、この国で二番目に人々が賑わう町、《インデット》。
町っていうくらいだから小さいんだろうなと思っていた僕は、最初に来たときは驚いたもんだ。
だがもう慣れた。ここでの知り合いは結構できた。親切な人ばかりいるとても素敵な町。
この町で薬品を扱う店は《マジック・ブロー》ここ一つしかない。
「ナジンさん、こんにちは。いつもの薬品を頂きに来ました。」
「あら、いらっしゃい。はい、いつものね。」
「ありがとうございます。また来ますね。」
ナジンさんに10G渡して店を後にする。
「‐おい聞いたか?広場で魔法使いと剣士が戦ってるってよ!」
「‐行ってみよう!」
店を出てすぐ、そんな男二人の会話が聞こえた。
この町で戦闘は珍しい、それに魔法使いか…気になる。ちょっとくらいなら見に行ってもいいよな。
広場の真ん中には、金髪で赤と青の瞳の綺麗な女性魔法使いと赤髪の顔の整った男性剣士が何やら険悪な様子で睨み合っていた。
睨み合いの末、先に動いたのは剣士の方だ。
剣士は大きな剣を大きく上に持ち上げ、雷魔法の《tonnerre》を放つ。
あれは確か、5位魔法だったはず。
魔法は大きく分けて10段階に分けられ、数が大きいほど位は上がる。
そして5位魔法からは上位の魔法使いしか使えない。
あの剣士も魔法が使えるのか。
女性魔法使いはその魔法を素早く避け、《flamme》を剣士に向かって放つ。
剣士もそれを避け、魔法使いに駆け寄っていく。
魔法使いの方は種族はエルフっぽいな。剣士の方は魔法を使える普通の人間か。
僕はその戦いに見入っていた。
すると、エルフが戦い中に僕の方をじっと見てきて言葉を放つ。
「そこの少年!お前…魔法使いか?」
「えっと…」
赤髪の剣士もそのエルフの言葉で僕をじっと見つめてきた。
「ふっ…珍しい。剣士、この戦いはまた後日だ!」
エルフがそう言うと剣士は納得して瞬時に消えてしまう。《Teleport》だ。
いつの間にか周りにいた大勢の町の人たちは散り、広場には子供とその親、そして僕とエルフだけが残った。
「少年、名は?私はコーネア・シュリーン。」
「え、ハルト・ミハヤ、です。」
シュリーンは僕に近寄ってきて、顔をじっと見つめられる。
あれ…?さっきまで距離があって気づかなかったけど、この人どこかで見たことがあるような…。でも、名前とか覚えがないから気のせいだろうか。
「そうか、ではミハヤもう一度聞く、お前魔法使いだな?」
「あ、はい…簡単な魔法しか使えませんけど。」
「ふん、お前そんなにアブノーマが憎いか。」
シュリーンの言葉から出された一言で少し怒りが沸いた。
というか、なんで僕が憎んでるなんて分かったんだ?
そういえば、魔法に相手の記憶を辿るものがあったな。その魔法か。
「私もアブノーマが憎いわ。仲間を殺した奴だ。」
シュリーンはそんな事を淡々と吐き捨てた。
この人も同じ。大切な人を殺されたのか。
「手を組まないか?お互いそいつを憎んでるんだ。私と手を組めば魔法を教えてあげるわ。」
魔法を、教えてもらえる…。こんないい話はそうそうないが、これが罠だとしたら?何か企んでいて僕を利用するつもりなんじゃないか?
この人、結構悪役っぽい顔つきしてるもんな…。
なんて、冗談だ。この人は多分信じられると思う。
僕の感は当てにはならないけど、今回は自分の感を信じてみようと思う。
「いいですけど…でも僕には家族がいます。」
「その家族も魔法使いか。んー、しょうがない、その人に合わせてほしい。」
「分かりました。」
帰りも《vitesse》を使う。
「タオただいま、お客さんいらした。」
「はぁー?誰だい…ってエルフじゃないか、しかもシュリーン様じゃないか!」
タオは急いで持っていた薪を置いてシュリーンの前に跪いた。
「た、タオ…?」
「ミハヤ!失礼だ!この方はこの国の姫様なんだよ!」
ん…?姫様…?
…え。
「えっ!?あっ、す、すみません!」
「まぁ、そう固くなるでない。私はそういうのが嫌いなんだ。」
そうシュリーンに言われ僕とタオは頭を上げる。
にしてもまさか姫様だったとは…。
まぁ、そうだよな。じゃなかったらあんな《flamme》なんて6位魔法使えないもんな。
シュリーンが町での出来事を簡潔にタオに話す。
するとタオは大喜びするように飛び跳ねだした。
「ミハヤ!シュリーン様と行ってきな!私はここで待ってるから。」
「え…タオは行かないの…?」
「あぁ、私は色々と仕事があるからね。」
「だったら僕…っ」
「ダメだ。あんたはあいつらやあいつらを生み出した奴が憎いんだろう?それを他の奴に倒されてもいいのかい?仇を打つんだろう?」
タオは少しも悲しそうな顔はしない。寧ろ嬉しそうだった。
こんなに自分の事のように言ってくれるんだ。そうだよな、僕は仇を打たなきゃいけない。自分勝手な使命感だけれど大切な人を何人も殺されたんだ。
「うん…僕、行きます!シュリーンと手を組みます!」
「よし、なら明日出発だ。今日は疲れているだろうからな。また来る。」
そう言ってシュリーンはここを後にした。
ここから僕の冒険は始まるんだ。
きっと、辛かったり苦しむこともあるだろうけど乗り越えてやる。
死んでしまった村の人たちの為に。大好きな町の人、タオの為に。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今後も一話一話短く区切らせて頂くと思われますので何卒よろしくお願いしまする。
誤字、脱字等あった場合、又は感想などコメント頂けると幸いです。




