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八月‐二日① 少女の小屋

八月二日



 かなり器用に作られた木造の掘っ立て小屋。壁にはめ込まれた窓から太陽の光が差し込んできたのを見て、俺はいつの間にか朝になったことに気が付いた。

 俺は手に持っていた本を置き、思いっきり伸びをする。骨がパキパキとなるのが少し痛く、気持ちいい。

 凝り固まっていた全身をほぐしながら、ベットの方を見た。昨日の少女はまだ眠っているようだが、顔色は昨日よりもよく見える。


「――おはよ」

「わふ」


 犬の方も、すっかり元気なようだ。白い毛のところどころ血で汚れているが、昨日の疲労は微塵も残っていないように思える。これが野生の治癒力だろうか。

 とりあえずは放っておいても大丈夫なようなので、朝食を作ることにする。簡易的ではあるが調理器具もあるので、少し凝った料理を作ることもできそうだ。


  ◆


 俺と犬とで朝食を作った後、犬に少女の側にいてもらい、俺は夜通し読んでいた本たちに再び向き合っていた。

 この掘っ立て小屋の大半を埋め尽くす量の本。種類も様々で、この世界の歴史やら、神話やら。おとぎ話のようなものもあるなど、まさに至れり尽くせりといったような――使い方が違うか。


 それはともかく、一体何に使うんだろうと思うほどの量の本たちだが……一番多かったのは、魔術に関する物だった。

 特に、魔術と“魔素(マナ)”について。


 どうやら、この魔素=MP、と言うわけではないらしい。

 この魔素とは、空気中にも生物の体内にも存在するもの、らしい。そして魔術は、この魔素を魔力(MP) に変換して使う、と言うプロセスを持つのだとか。

 なんとなく理解できる気がしなくもないが……正直難しい。


 まあいい。別にここは理解できなくても大丈夫なところだ。

 俺が気になったのは、その次の項目。魔素によって、身体能力を上げられる、と言うところだ。

 正確には、体内の魔力に変換されていない魔素を動かして偏らせることで、その部位の能力を一時的に引き上げる、と言う物。

 たとえば腕に集中させれば腕力が強化され、脚に注ぎ込めば脚力が上がる。

 どれも一時的な物だが、覚えられればかなり強力だろう。


《魔素操作》補助技能

体内・体外の魔素を操ることが出来る

範囲はレベルに依存する


 取得にはスキルポイントを10消費、と序盤にしては少し高いが、この使い勝手や能力の高さを考えれば妥当と言えるか。レベルに依存、と言う範囲がどの程度なのかが分からないが、それは追々確かめるとしよう。

 俺が驚いたのはそれではなく、このスキルがβの時は全く知られていなかったことだ。


 とすれば、可能性は二つ。


 一つ目は、βの時に見つけられなかった場合。俺も前にここを通ったときは素直に街道を通って行ったし、この森の探索はかなり早々に打ち切られた。この可能性は十分高いと思う。


 二つ目は、この本サービスから導入された、完全新規のスキルの場合だ。地形やら何やら、だいぶβの時とは変更されているため、こちらも十分可能性があると思う。


 とは言えどちらにせよ確定的なのは、このスキルが隠し技能だということだ。

 こういう情報は、むやみに人目に晒していいものじゃない。今のような情勢ならなおさらだ……。太刀にリボン、自分の兄の事に加え、また一つ人に言えないことが増えてしまった。本当に命のかかっているデスゲームじゃなくて助かった、と言ったところか。恨み妬みで殺されちゃかなわん。


 ふむ、しかしこんな森の奥で暮らし、こんな本を持っているこの少女、一体何者なのだろうか。

 俺はまだ起きない少女の顔を見ながら、魔素操作を続けていた。


  ◆


 魔術の練習に比べ、魔素操作の練習は比較的楽だと言える。理由としては、ただ体内で魔素を“動かすだけ”だと言うことだ。

 魔術の場合は魔力(MP)を“消費”しなければいけないため、どうしても練習には限りがでる。それに対し、こちらはただ動かすだけ。少し失敗して放出してしまっても、すぐに別の魔素が体内に入り元の状態に戻す――と、ずいぶんと優しい仕様だ。


 魔素操作のレベルが上がるにしたがって、それもだいぶ簡単に出来る様になり、体外に放出、なんて失敗もほぼなくなっている。だが、いまだに空気中の魔素を動かすのはうまくイメージができない。やはり、内容を理解しないとできないのか。

 まあ、できないことは仕方ない。そう割り切って、出来る練習を積み重ねる。



 数時間後、お昼を過ぎたあたりで、やっと少女が目を覚ました。


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